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11.狐と蛇に睨まれたオタクもとい美少年
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連れて来られた部屋は、自分が連れて来られた部屋よりさらに広い、まさに絢爛豪華という言葉がぴったり合うような部屋であった。
その部屋の中の豪奢な椅子に腰かけているギムレット様は、優雅な所作でお茶を飲んでいた。
(……あの壺、レイの家で見たことがあるでござるな……)
公爵家であるレイの家にあるような調度品が並んでいる、その時点でこの部屋の主であるギムレット殿が相当な目利きでもあることも分かる。
そして、ほぼ間違いなく、この人は猛者であると先日恐ろしい目にあった時から察している。拙者的に今のこの状況では物凄く会いたくなかったご仁である。
「ギムレット様、連れて参りました」
「ありがとう、マティーニ。とりあえずお前もそのまま居てよ。ごきげんよう、王子様」
前回同様のアルカイックスマイルに、本能的に背筋の毛が逆立つ。さらにいつの間にかギムレット殿のすぐ脇に移動しているマティーニ殿の威圧も加わり、文字通り玉ヒュンしてしまう。
「ははは、そう縮こまらないでよ。僕はただ、ここにきて少し経ったから王子様とお話したかっただけだからさ」
そう軽口のように言っているが、拙者は入室以来椅子に座る許可さぇだされず全裸で立っている。そこには明確な上下関係があり、とてもただ話したかっただけの人間のする行動ではないことが分かる。
「……流石に、そこまで馬鹿ではないか」
拙者の表情から何かを読み取ったように、今度は吐き捨てるようにギムレット殿は言い捨てた。
「まぁ、いいや。賢かろうが、馬鹿だろうがやることはひとつだけだからさ」
そう言いながら、かの人と目が合ったその瞬間、とても気持ちが悪い感覚がした。この感覚には覚えがある。
それも何度も繰り返し行われた嫌な記憶。
(これはステータスを見られているでござるな……)
この国では、ステータスは、自分よりレベルが低い相手なら全て見ることができる。ただ、個人情報のためあからさまに覗かれることはほとんどない。
例外として、魔力の有無の判定や、なんらかの嫌疑が掛かっている場合、奴隷に関しては問答無用で見られることもある。
現在、性奴隷になり果てている拙者は、元王族と言えど当然ステータスの開示を拒否できない。体の中を覗かれているような嫌な感覚に必死に耐えている。
これで拙者のスキルについてもバレてあまりよくないことなると覚悟した時、唐突に気持ち悪さがなくなる。
「……はぁ、マティーニ。王子様を部屋に戻しといて」
吐き捨てるように言ったギムレット殿は、疲労こそ見えるが何かに勘付いたような気配もない。それにもし気付いたなら絶対に、拙者をビッチ氏のいる部屋に戻してくれるわけがない。
「わかりました」
短く返事をするとマティーニ殿が再び拙者の鎖を持って部屋を出ようとした。背後からギムレット殿に声を掛けられる。
「王子様、ひとつだけ忠告しておくけど、もし妙なことやこの娼館で面倒ごとを起こすようなことがあったら……ただではすまないことは覚えておいてね」
「……」
あまりの恐怖に漏らしそうになったが、全裸で美少年が放尿はマニアックな意味で需要がありすぎるので必死に尿道をキュっとした。
そうして、冷たい視線を尻の穴辺りに感じながら、なんとか拙者は部屋に返された。
部屋に戻り、ベットにダイブしたいくらい疲れていたが、ビッチ氏がベットでゴロゴロしているので、断念するが、まだ部屋の扉が閉まる音がしない。
不審に思い振り返るとマティーニ殿がドアを開けたまま微動だにせず佇んでいた。その姿に今度こそ漏らしかけたがなんとか色々力を入れて耐え抜いた拙者は褒めてもらっても罪にならないはずである。
「ルシオン様、ギムレット様のお言葉を常々お忘れにならないようにご注意ください」
「……」
ギムレット殿の冷たさと違う、血の通わない言葉に別の意味で怯えつつもそのままで無言でいる拙者を一瞥するとそのまま扉は閉じた。
しかし、多分、本日の監視者はマティーニ殿なのでドアの前に立っていることはたやすく想像できた。
「ルッシーおかえり♡ベットの中あたためておいたよ」
絶対、寝ていただけなのにそんなことを言うビッチ氏の言葉に張りつめた空気が解けていく。
「かたじけない」
何故か涙が出そうな気持ちになりながら、ビッチ氏と談笑してその日は眠りについた。
しかし、薄氷の上に居ながらも穏やかに過ぎる日々が終わりを告げる時が、刻一刻と近づいていたことになど、その時の拙者達は気づいていなかったのだった。
その部屋の中の豪奢な椅子に腰かけているギムレット様は、優雅な所作でお茶を飲んでいた。
(……あの壺、レイの家で見たことがあるでござるな……)
公爵家であるレイの家にあるような調度品が並んでいる、その時点でこの部屋の主であるギムレット殿が相当な目利きでもあることも分かる。
そして、ほぼ間違いなく、この人は猛者であると先日恐ろしい目にあった時から察している。拙者的に今のこの状況では物凄く会いたくなかったご仁である。
「ギムレット様、連れて参りました」
「ありがとう、マティーニ。とりあえずお前もそのまま居てよ。ごきげんよう、王子様」
前回同様のアルカイックスマイルに、本能的に背筋の毛が逆立つ。さらにいつの間にかギムレット殿のすぐ脇に移動しているマティーニ殿の威圧も加わり、文字通り玉ヒュンしてしまう。
「ははは、そう縮こまらないでよ。僕はただ、ここにきて少し経ったから王子様とお話したかっただけだからさ」
そう軽口のように言っているが、拙者は入室以来椅子に座る許可さぇだされず全裸で立っている。そこには明確な上下関係があり、とてもただ話したかっただけの人間のする行動ではないことが分かる。
「……流石に、そこまで馬鹿ではないか」
拙者の表情から何かを読み取ったように、今度は吐き捨てるようにギムレット殿は言い捨てた。
「まぁ、いいや。賢かろうが、馬鹿だろうがやることはひとつだけだからさ」
そう言いながら、かの人と目が合ったその瞬間、とても気持ちが悪い感覚がした。この感覚には覚えがある。
それも何度も繰り返し行われた嫌な記憶。
(これはステータスを見られているでござるな……)
この国では、ステータスは、自分よりレベルが低い相手なら全て見ることができる。ただ、個人情報のためあからさまに覗かれることはほとんどない。
例外として、魔力の有無の判定や、なんらかの嫌疑が掛かっている場合、奴隷に関しては問答無用で見られることもある。
現在、性奴隷になり果てている拙者は、元王族と言えど当然ステータスの開示を拒否できない。体の中を覗かれているような嫌な感覚に必死に耐えている。
これで拙者のスキルについてもバレてあまりよくないことなると覚悟した時、唐突に気持ち悪さがなくなる。
「……はぁ、マティーニ。王子様を部屋に戻しといて」
吐き捨てるように言ったギムレット殿は、疲労こそ見えるが何かに勘付いたような気配もない。それにもし気付いたなら絶対に、拙者をビッチ氏のいる部屋に戻してくれるわけがない。
「わかりました」
短く返事をするとマティーニ殿が再び拙者の鎖を持って部屋を出ようとした。背後からギムレット殿に声を掛けられる。
「王子様、ひとつだけ忠告しておくけど、もし妙なことやこの娼館で面倒ごとを起こすようなことがあったら……ただではすまないことは覚えておいてね」
「……」
あまりの恐怖に漏らしそうになったが、全裸で美少年が放尿はマニアックな意味で需要がありすぎるので必死に尿道をキュっとした。
そうして、冷たい視線を尻の穴辺りに感じながら、なんとか拙者は部屋に返された。
部屋に戻り、ベットにダイブしたいくらい疲れていたが、ビッチ氏がベットでゴロゴロしているので、断念するが、まだ部屋の扉が閉まる音がしない。
不審に思い振り返るとマティーニ殿がドアを開けたまま微動だにせず佇んでいた。その姿に今度こそ漏らしかけたがなんとか色々力を入れて耐え抜いた拙者は褒めてもらっても罪にならないはずである。
「ルシオン様、ギムレット様のお言葉を常々お忘れにならないようにご注意ください」
「……」
ギムレット殿の冷たさと違う、血の通わない言葉に別の意味で怯えつつもそのままで無言でいる拙者を一瞥するとそのまま扉は閉じた。
しかし、多分、本日の監視者はマティーニ殿なのでドアの前に立っていることはたやすく想像できた。
「ルッシーおかえり♡ベットの中あたためておいたよ」
絶対、寝ていただけなのにそんなことを言うビッチ氏の言葉に張りつめた空気が解けていく。
「かたじけない」
何故か涙が出そうな気持ちになりながら、ビッチ氏と談笑してその日は眠りについた。
しかし、薄氷の上に居ながらも穏やかに過ぎる日々が終わりを告げる時が、刻一刻と近づいていたことになど、その時の拙者達は気づいていなかったのだった。
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