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81.それはそれは丁重に扱われている(ルカ視点)

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(こんなに至れり尽くせりで良いのかな……)

僕は正直困惑していた。ダイヤモンド公爵様はパッと見は無表情で怖い人に見えなくもない。けれど、とても紳士的で親切な人だった。

そのため、今まで微妙な伯爵令息だったり、辺境伯領の傭兵(という名の何か謎の要因)だったことを考えるとそこは楽園とでもいうべき快適さだった。

部屋は、それこそ公爵夫人でも使うような立派なもので、側仕えの人や諸々が僕をそれはもう大切に誠心誠意もてなしてくださった。

食事もとても豪華で今まで割と粗食で生きてきたので、ちょっと胃もたれがすると言えば次の日はとても優しい献立になるし、まるでこの家のお嬢様にでもなったような優しさだ。

ちなみに、なんか来て早々、服も新調されて今、全人生で一番綺麗な恰好をしているし、毎日お肌を磨かれて艶々になっている。挙句の果てには公爵様が……。

「君はとても美しい。よかったらこれを贈ろう」

と言って、見たことない大きさのブラックダイヤモンドを贈られた。あまりに高額な贈り物に流石にもらえないと言ったが……。

「君はもうすぐ家族になる人だから、これくらいさせてほしい。私は甥っ子に何もしてあげられなかったから……」

とか言われてまるで雨の日に放置されている野良犬くらいしょげてしまったので、仕方なく受け取った。そんな感じで不思議な感覚でダイヤモンド公爵家にいたある日のこと、いつものように公爵様とポツポツ会話をしていた時だった。

「そういえば、公爵様はギル様の叔父様なのですよね??ギル様との思い出などはありますか??」

その言葉に、少し固まっていた公爵様だったが、すぐに復活してみたことのない位に甘い笑みを浮かべた。こんな笑みで令嬢が見られたイチコロではと思うほどのその表情にびっくりしたが、それはそれは嬉しそうに公爵様は話はじめた。

「ギルベルトはね、今かは想像できないけれど生まれた時は、未熟児でとてもとても小さい子だったんだ。だから私は心配でね。毎日毎日、会いにいったんだ。ある時、熱が出てしまったことがあってね、その時は「どうか、この子の命を神様でも仏様でも魔王様でもいいからお助け下さい」と必死に毎日祈祷したし、国内で一番優れた小児科医も呼んだよ。おかげで元気になったけど、しばらく心配でほぼ寝ずにギルベルトの側にいた。本当に本当に可愛い甥っ子でね、あの子のこと大魔王なんて呼ぶ人達がいるけれど、私には天使に見える、大天使ギルエル……ふふふ。あ、そうだ、良かったらあの子のアルバムがあるから、見せてあげよう」

といままでのイメージをぶち壊すような語りで、若干引きそうになったけど、ギル様の叔父様がそれはもう甥っ子を溺愛しているということだけはものすごくわかったし、その後も赤ちゃんなギル様、少し大きくなったギル様、少年ギル様と写真を見せてくれた。気がかりなのは特定の年齢からアルバムの写真のギル様の目線が合っていないなとは思ったけれど、かねがね幸せそうである。

「しかし、そんなギルベルトもお嫁さんを貰うことになるんだね。ルカ君、どうかあの子を幸せに……」

急に涙腺が緩んだのか泣き出しそうになる公爵様、僕がそれをなだめようとした時だった。

ドカン!!

爆音がした。あまりの出来事に思わずふたりで見つめ合う。ちなみに距離も割と近い。そしてバタバタと駆け込んでくる音と共に部屋の扉が開かれて……。

「ダイヤモンド公爵、俺のルカを返せ!!」

まるで誘拐犯に対して威嚇するようにギル様が、レイモンドさん達を引き連れてやってきたのだった……。

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