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73.ルカのくせに生意気とか言われた(ルカ視点)

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「よう、ルカ。いよいよ明日お前はジルコニア伯爵家に行くことになる」

そう言ってニヤニヤと笑っているのは、ケビンだ。この義兄は昔から僕に対して目に見える嫌がらせをする男だった。アベーレのように最愛の弟を僕に奪われたとかなら分かるのだが、彼は僕に何かを奪われた訳でもないし、なんならルカとの仲も良くはなかったはずだ。

ケビンにとってルカは、異母兄弟でしかも弟。兄のアベーレは優秀でケビンなど意にも返さない。だからターゲットはダメな僕だったのだろう。

(しかし、ただの憂さ晴らしにしてはなんというか……)

僕がルカでないことを知って、改めてケビンについてみてみると彼はどうやら僕に対して妙に熱に籠った目を向けてくることがあると気付いた。

そういう目で見てくる人は男子校に居た頃もそこそこいたのだけれど、大半はギル様を恐れて近づいてこなかった。一度だけ茂みに連れ込まれてえらい目に遭いかけた時も、ギル様がどこからともなく現れて……・。

「燃やされたいか??」

と聞いていた。

(なんで燃やしたいのかはあの時は、ギル様の顔が怖くて聞けなかったし僕ごと焼かれると勘違いしていたからね)

「おい、俺の話を聞けよ!!」

ドンと壁を叩いて真っ赤な顔でこちらを見ている。僕は思わずはぁとため息をついた。

「なんだ、その態度は、お前は……」

「兄上、いえ、。貴方は僕が誰か分かっているのですか??」

そう言って冷たい瞳で睨みつける。僕は、現在『アクアマリン伯爵家』の人間とされているが、実際はフルー大公家の次男になる。他国とはいえ、王族に等しい一族の子息にこのような無礼は行うべきではない。それがずっと虐げていた義兄もどきだったとしても。いや、人間としてそういう行いは慎むべきだ。

「お前は、ルカだろう、俺の義兄の……」

「僕はルカではありません。もっと言えばこの家の人間ですらない」

「嘘だ、お前は!!」

意外なことにケビンは事実を知らなかったらしい。この間彼の前でもこの話はしたのに聞いていなかったのだろうか。だとしたら相当駄目だと思う。もしくは聞いていて虚言とでも勝手に思い込んだ可能性もある。

「僕はフルー大公家の次男、ルキウス・フルーです。この事実はもうすぐ明るみになります。なので僕はジルコニア伯爵家に行くことはありません」

「ふん。お前がフルー大公家の息子の訳がない。お前は放蕩者でバカでなんの権力もないアクアマリン伯爵家の三男だ。どうしてそんな妄想をしてる!!お前は明日金でジルコニア伯爵家に売られてミリア、あの阿婆擦れ女と結婚するんだよ!!ああ、ちなみに俺もあの女とヤッたことがある。お前はないだろうけどな!!」

急に非童貞であることを盾に僕をディスってきた。ちょっと前なら傷ついただろう。けれど、今は全く傷つかない何故なら、僕には愛する人ができたからだ。

「そうですか。それは良かったですね」

「なんだ、ルカの癖に、なんで悔しがらない!!」

童貞がらみの話をすれば僕が、悔しがると思ったのだろう。しかし、僕は凪いだ瞳でケビンを見た。そして無言を貫く。答えるきさえおきなかった。

しかし、その態度がどうやら気に入らなかったらしい。座敷牢へケビンが何故か入ってきた。そして……

「ルカのくせに生意気なんだよ。女みたいな顔しやがって!!」

僕はこの機会を待っていた。彼が鍵を開けて近づいてくるタイミングを……。
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