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70.賢いカイム、そして鳥くさい.(ルカ視点)

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「カイム、やっぱり僕はこの食事はとらない方がいいよね??」

もふもふ羽毛のふもってぃボディを僕に摺り寄せる可愛いカイムに、なんとなくそう問いかけた。するとカイムは人のように一度頭をコクリとするように上下させた。肯定のように見える。

「お腹は空いたけど、僕は我慢しよう、ん、カイム??」

先ほどからあたたかいコンソメスープの香りやら、美味しいだろうトマトリゾットの香りと湯気がこの薄汚い部屋に似つかわしくないがずっと漂っていてだいぶしんどい。

耐え忍ぶ僕を見つめるカイム、その賢さを称えたバードアイ。その瞳を見つめているとわかる、何か考えがあるらしい。

「どうしたのカイム……」

そう言った僕に、まるで手を出してというような雰囲気を出してくるカイム。なんとなく手を出した僕のその手の中に、自身の羽の下に隠していたらしい木の実を置いた。

「えっ、でもこれカイムのごはんでしょう??僕は……」

小さな赤い木の実を数粒。それでは食事にならない。カイムの優しさは嬉しいけど流石に鳥の食事ではお腹は膨れないしと考えていると、カイムが何を思ったのか、ひとつの木の実を目の前の食事に入れたのだ。

すると、それはまるで何かの薬のように溶けてしまった。

「これって……」

薬の解けたコンソメスープを「さぁ、おたべ」というように見つめるカイム。賢すぎるバードアイを見つめ返してそれを口に含んでみる。

「美味しい!!それに木の実の味もしない!!」

「ピールルル」

嬉しそうに囀ったカイムは胸を張る。その姿がすごく可愛い。可愛いからカイムをお礼にもふる。ふわふわの羽毛の感触、そして鳥くさい。

「この木の実は解毒効果があるのか。だから毒が入ってても入ってなくてもこれさぇ入れれば安全安心なんだね。すごいねカイム。うんうん。良い鳥だね、鳥くさいけどそこが癖になる」

そんなことをいいながら食事しながらカイムをもふる。そうして、これからどうすべきか考える。

アベーレの言葉が本当か分からないが、もし本当ならばあまり鉄格子など手にしやすい部分は触らない方が良いかもしれない。しかし、そうすると出れるかどうかの確認ができない。

(ジレンマだな。けど、僕が大人しくしていたらあのミリアと結婚させられる)

僕は、もう童貞を女の子で卒業するという野望は捨てていた。というか、僕の初めては両方ギル様に捧ぐ覚悟ができたのだ。

それに、ついこの間まで気づかなかったけれど愛する人以外とそういう行為しても、多分意味ないと思うのだ。ただ非童貞になるだけ、そこになんの価値があるのか。

もちろん、お家のためとかそういうこともあるかもしれない。選べないでそうならざる得ないという人達を否定するつもりはない。けれど、僕は選ぶことができる、ならその権利を今までのように他人に譲るつもりはない。生殺与奪の権利をもう他人に握らせるものか。

そう強く誓って、僕は自身の魔法を使用してなにかできないか考える。雷を放つそれを使用できることを伯爵家の人間は知らない、気付いていないはずだ。

(ならば……やってやろうじゃないか)
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