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54.すっかり忘れていたざまぁ対象が襲ってきた

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「なんだ??」

「ルビー侯爵領から、なぜか辺境伯領へ攻撃がされまして……」

その言葉に思わず特大の舌打ちがでた。美人局を行っていた証拠を挙がったルビー侯爵家はそれなりの制裁を受けると聞いていたがどうやら、相当連中には痛手だったらしい。

輝石の貴族でありながら問題を起こしたのが悪いのだが、それが気位が高い連中が許せなかったのだろう。ルカの正体を知っていたか否かは知らないが、よりにもよって辺境伯領を攻撃するとは気が触れたとしか思えない。

しかし、我々になんらかの罪を着せて葬るためという可能性は否めない。

例えば、ルカの正体が分かれば、フルー公国と結託して辺境伯領が祖国を陥れようとしているなどのようなシナリオが想像できる。

(ルカへの腹いせが大きいだろうが……絶対にあいつらは締め上げる)

確かに、ルビー侯爵家は近衛兵や王宮の騎士団を輩出したり管理している家系で元々あるが、歴戦の猛者である辺境伯領の騎士に挑むなど正直愚かとしか言い難い。

「ふん、あんな実戦をほとんどしていない連中など簡単に捻れるだろう」

「……それが、連中隣国から銃火器を大量に入手して来てるっす。腕は我々のが上っすが、装備が……後、この間フルー公国から攻められた際の負傷者も多く苦戦しているかんじっす」

とレイモンドの目が明らかにシオン大公を笑顔だか睨んでいた。この事態の元凶だからな。

「……なるほど」

「止むを得ないので、うちの実家にも一応救援要請したっす。数は少ないけど装備はあるし、兄上も流石に力を貸してくれるはずっす……」

「私も大切なギルフェルへの罪滅ぼしにうちの兵を貸そうか??」

「それはだめだ。最悪辺境伯領が隣国と結託して祖国を落とそうとしたとかありえない話をでっち上げられる」

ルビー侯爵家の当主は真の意味でずる賢い男だ。警戒するに越したことはない。

「レイレイの生家ですか??」

「ああ、話してなかったっすね。俺の生家はっす。ただ、俺はだから跡は継いでないっすけど……」

ルカの質問に答えるレイモンド。色なしとは、輝石の貴族の家でその名になっている輝石の色を持たずに生まれた子供をさす言葉だ。レイモンドは本来なら、サファイア侯爵家の嫡男だったが、色なしのため、遠縁から養子にきた人物がレイモンドの代わりに嫡男となったと聞いている。

これだけ聞くと不遇っぽいが、レイモンドの父親はレイモンドの母を狂愛し、レイモンドも溺愛している。

「レイたんはたぬきみたいですごく可愛いんだ。ああ、お父さんレイたんのことどこに入れても痛くない」とか公の場で言っている姿を俺は見たことがある。その時のレイモンドの引きつり切った笑顔も忘れられない。

だから本当は色なしでも家を継がせたかったようだが、周囲の反対やレイモンドが断ったようだ。そして、親が子離れするために一番過酷な辺境伯領へ出仕しているという奇妙な話だ。

「えええええ、レイレイ、ハチャメチャ偉い人じゃないですか!!」

「ルカルカも偉いからトントンっすよ」

妙に会話が弾んでいるふたりをみていると、無性にレイモンドを捻りたくなる。

「バブゥ」

隣にいつの間にかいたモレクといわれている獣も同じ気持ちらしい。

「おい、あのルカに慣れ慣れしい男を噛んでもかまわないぞ」

そう目配せすると、「わかった」というように一度頷くなり、レイモンドに素早く近づいて行った。

「イタッ!!!」

(犬、グッジョブだ)
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