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50.真実

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「……俺ごと抱きしめるのはやめろ」

気持ち悪いシオン大公を睨むが普段のような強い気持ちでの拒絶ができない。

「ギルフェル。君はもうすぐ僕の弟になるんだから可愛い弟ふたりを抱きしめるのは兄の役得じゃないかい??決して、ルカを抱きしめるついでにギルフェルの首筋のにおいをこっそり嗅いで、そのミントのかおりに酔いしれていたりはしないよ」

「気持ち悪いから離れろ」

とりあえず、もう一度拒否を軽くする。普段なら問答無用で突き飛ばすが今回はこちらの国のせいでいくつかの家族を不幸にした。

しかも、まさかルカを俺の身内が不幸にしたのだ。

ルカの紫の瞳はとても特殊なものだ。フルー前大公の妻、つまりルカとシオン大公の母は、大国プロキオン王国の貴族の出だ。

プロキオン王国には特殊な血を有する家系が多数ある。特に有名なのは王弟であるガルシア公爵の竜神の血筋だが、ルカの母親はベルダンディ元公爵令嬢は妖精姫の血筋を強く継いでいた。

ベルダンディ公爵家の起こりはまだ小国だったプロキオン王国の窮地を救った伝説の狂戦士バーサーカーとその戦士を愛し手助けをした妖精姫が始祖とされている。

そのため、彼らにはその血が色濃く継がれている。

男性は狂戦士バーサーカーの血を色濃く引き継ぎ、女性が妖精姫の血を濃く引き継ぐ。

狂戦士バーサーカーの血はひとつのことを他の人より突き詰めることができる強靭な精神、類稀なる才能と異常な狂気として発揮され、妖精姫の血は妖精の瞳と呼ばれる紫の稀少な瞳として発言し、妖精や精霊の加護を持つもので国に繁栄をもたらすとされる。

ルカは男性でありながら妖精の瞳も保有している存在だった。

それは、としての才覚を持つ者とされ、我が国にとって不仲な隣国フルー公国に存在されては困る存在だった。

(しかし、今までのルカにはそんな兆候はまるでなかった、ただ、そうだ、ルカは学生時代多くの俺も含めて信奉者を有していた……)

覇王は多くを魅了する。男も女も。

シオン大公に効かなかったのも同じ血筋だからだろう。

「……あの、僕は誰なんですか??僕はルキウスなのですか??」

不安げに見上げられた瞳。美しい紫の色彩に胸が騒ぐ。

「……」

俺は何も答えられなかった。それを答えたら自身の色々なものを否定してしまうような気がしたのだ。

けれど、ルカを俺が真に愛しているなら答えるべきだ、全てを……。

「ああ、ルカはルキウスだ。さっきまで分からなかったけれど君に触れて確信した」

「シオン大公様……あの、大公様が触れているのはギル様ですが……」

真剣に俺の顎をクイッとしているシオン大公にルカがツッコミをいれた。

「やめろ」

さすがに生理的に無理でとりあえず俺はシオン大公を殴る。

「ギルフェルの拳、良いな……」

鼻血を流してシオン大公が倒れたので、それをほっといてルカを真正面から見つめる。

「全て話す」

ルカを愛しているならすべきことはずっと前から決まっていた。

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