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31.とにかく気持ち悪い男との話し合い

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「交換条件ということか、なんだ言え」

「ふふふ、その不遜さ、実に良いね。ちょっとした絵のモデルになってほしいんだ」

恍惚とした顔でそんなことを言う男を信じられない目でみた。当たり前だ。辺境伯領とフルー公国は長年の因縁がある。それなのにそんなちょっとした条件で人質を解放するはずがない。

「……どんな絵のモデルだ」

「そうだね、まずギルベルト、君を上半身裸にして……」

「待て」

前提条件がおかしい。何故、俺がこの男の前で上半身裸にならないといけない。最大限のジト目でシオン大公を見るが、全く効かない。普段なら大体の人間が、「どうか、お命だけはお助けを」とか「ああ、なんでもなんでもしますから」とか「魔王様、はぁはぁ殺して」とか言われる場面だが、シオン大公は相変わらず恍惚とはしているが全く動じてはいない。

「えっ、何故??上半身を裸にして、それから鎖で君の両手を縛り上げて、ああ、そうだなズボンもちょっと破けているようなのが良いかな。それでもって……」

「だから待て。後、気持ち悪い」

うっかり本音を口にしてしまう。まずかったかと思ったが、シオン大公はむしろなんかさらに恍惚として小さな声で「ギルフェルに気持ち悪いって言われた、ご褒美だな」などいっているような気がしたが多分空耳だ。それ以外は認めない。

「それは絵のモデルというより完全な捕虜だろう。つまりルカを解放する代わりに俺を捕虜にしたいということか??」

「捕虜??それはつまりギルフェルを合法的に監禁できるということかい、ああ、それはいいな最高だ」

「捕虜は別に合法的ではない。後、気持ち悪い」

完全に目がイッている。こういう人間とは関わりたくはない。ただルカのためなら交換で捕虜に一時的になったフリくらいはする。アレもあるしすぐボコボコにして帰るがな。

(そして、可愛い可愛いルカとめくるめく世界を……)

「今は気持ち悪くても、ちゃんとギルフェルを私が気持ち良くしてあげるから問題はない」

「いや。まずそんなお願いは絶対しないし気持ち悪い」

こいつとの会話はいつもそうだが全くといって良いほどかみ合わない。かみ合わないだけならいいが完全に狂っていると思う。しかし、この話をレイモンドにした時に、「ああ、ルカ君を前にしている辺境伯様みたいですね」と言われた時はレイモンドに剣術稽古と言う名の地獄の扱きを行ったがそれも懐かしい思い出だ。

「とりあえず、君に絵のモデル兼捕虜になってほしい、大丈夫とてもとても一生大切にする」

「……なんだそのプロポーズみたいな文言はとても気持ち悪い。ただとは思っていなかったからな。承知した。ただ、ルカの安全を確認してから……」

そう答えた瞬間、部屋の中を充満する甘い香りに気付く。まずい、これは……

「ふふふ、君との会話はちゃんと録音してあるから、君が私の捕虜になることを容認したことも確認できるよ。ああ、やっとやっと君を……」

霞む意識の中、高笑いする男の姿が見えた、本来美しい顔立ちが歪み、その醜悪な性格が良く分かる。やっぱりこいつはとてもとても気持ち悪いから嫌いだ。
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