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14.夢から覚めた天使の素顔

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「本当にルカは美しい。全部欲しい……」

気絶されてしまった美しいルカの看病をしながらその尊顔を眺めていた。やっぱりルカエルは天使だ。美しい。もう全てが穢れない存在だ。

「辺境伯様、キモイっすよ」

軽い口調で話しかけてきたのは副官のレイモンドだ。この男は俺のルカエルへの想いを知っているが定期的にダメ出ししてくる。

(とりあえずまた最前線に送ろうか。)

そう、ものすごい形相で睨んでいると、流石に言葉にしなくとも察したらしいレイモンドが慌てる。

「いや、そのね、俺だって心配してるっすよ。辺境伯様は恋愛下手だからさ……」

「ルカは俺の想いを受け入れてくれた」

「えっ、犯したんですか?てっきりルカ君ってノンケだと思ったんですが……」

「バカ、俺の愛しいルカエルを勝手に傷物にするな。まだ抱いてはない、でもキスはした……」

その言葉にチベットスナギツネみたいな顔をするレイモンド。なんだ、その反応は。

「ああ、俺分かっちゃいました。辺境伯様さては無理やりキスして拒否られたでしょう?」

黙ったところを肯定と捉えた無駄に察しのようレイモンドがニヤニヤしている。

「あのね、辺境伯様。好きだって気持ちを抑えきれないのは分かります。けれど、ちゃんと本人の意思は確認しないとだめっすよ」

「……ああ」

「大体、辺境伯様は想いがものすごく重いんです、ヘビーです。それを受け入れるだけでも大変なんですからもっとちゃんとしてください」

「わかっている。俺にとって……本当に大切な存在だ、だから」

そんな話をしていて気付いた。いつの間にかルカが目を覚ましたらしく、俺達を見つめていることに……。その目がまるで見てはいけないものを見ているような色を含んでいたような気がしたがきっと気のせいだ。

「ルカ、目が覚めたのか。すまない。怪我を負わせた」

「そうっすよ。大切な兵士を傷つけちゃダメっすよ」

茶々をいれるレイモンドをぶん殴りたい気持ちは抑えてルカに手を貸す。ルカはすごい微妙な笑みを浮かべている。なんだろう例えるならば、親が深い方のキスとかしているところに出くわした時や、友人が恋人とむつみ合うのを見た時のような気まずい顔。

(どうして、あんな顔をしている?)

「あはは、すいません。その……」

何か言いたげなルカをとりあえず俺は抱きしめた、が……。

「ははは、へんきょ、いえギル様。誰にでも抱き着いてはいけませんよ。誤解が生まれます」

妙な渇いた笑みを浮かべるルカ。誤解なんかない。むしろ俺のルカへの想いはそのまま伝えたいくらいであるし……。

「誤解?何を言っているんだ?ああ、こいつは別に……」

「はいはい、俺はお邪魔っすね。失礼しやす」

目でレイモンドの殺意を送ったおかげで奴は去ったが、何故かルカがすごく複雑な顔をしていた。

(まさかルカはレイモンドに好意を抱いたのか??)
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