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10.90年に一度の祝祭の生贄はいやです(ルカ視点)

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「良く似合っている」

白いドレスのような服に、頭に花の輪を付けられた。これって……やはりヤバイ儀式の衣装じゃないか?ある辺境の村で「90年に一度の祝祭」で着せられるタイプのこれ服だろう。僕はそういうサブカルチャーには強いんだ。女の子にモテたくて齧ったからな、全くモテなかったけど。

「あ、あの……これは……」

「お前にふさわしい装束だ」

怖い。大魔王様へんきょうはくさま。絶対僕をその儀式の生贄にする気じゃないか?兵士として殺されるより嫌すぎる。

(どうして、そんな恐ろしいことをしようとするんだろう?やはり大魔王だからかな?)

「ごめんなさぃ、生贄は本当に辞めてください。これ僕臓物とか捧げるヤツですよね。もしくは……まさか性の儀式ですか??あ、でもそっちは死なないだけマシ……か?」

確かあの村の儀式ってそんな名前だったよね??その辺りの記憶が漠然としているのはその内容が余りにも凄惨過ぎて僕は途中から完全に意識が遠のいてまともにそれをみれなかったからね。

そんな僕の強い思いが通じたのか、少し大魔王様へんきょうはくさまは怯んだ様子で聞く。

「ルカ、その、儀式を行っていいのか?」

「駄目です」

よしよし、この調子なら恐ろしい儀式の哀れな生贄にされないで済むかもしれない。そうしたら、なんとか大魔王様へんきょうはくさまに取り入る方法を考えてうまい具合に乗り切ってみせる。

「どうしてもだめか?痛いことは絶対にしないと約束する」

何故か少し大魔王様へんきょうはくさまが悲し気に聞いてきた。というか儀式って臓物抜いたりするなら痛いよね?痛くしないって麻酔でも打つのかな?それって無意味な気がするけど……。

「えっ、儀式って痛いでしょう?」

「大丈夫、痛くないし、痛かったら止める」

(痛かったらやめるか……うーん。一応僕の意思が尊重されるなら、少し交渉すれば生き残れるかもしれない?)

「本当に、痛いことや怖いことはないですか??」

なら、もう一度念を押して聞いてみよう。すると、大魔王様へんきょうはくさまが今までにないくらい力強く頷いてみせる。

「ない、だから……しよう」

(「しよう」とはなんだろう?)

しかし、とりあえず殺されたり、臓物を抉られないのなら一旦その提案にのってみよう。そう軽く考えたことをこの後後悔することになるとはこの時の僕は思いもしなかった。
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