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06.魔王城の恐怖(ルカ視点)

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「……具体が悪いのか?」

「あ、いえ、大丈夫です」

長い間、馬車にゆられていたので完全に酔っていた。しかし、辺境伯様の前でそんな弱みを見せたら殺されてその辺りに捨てられるかもしれない。

あいにく、ここは戦場。死体処理ならし放題のはずだ。

「大丈夫じゃない。ここは戦場だ」

そう地を這うようなデスボイスで言われた時、ここで具合が悪いと言ったら絶対にバラバラ殺人の被害者になると確信した。

(いやだ、まだ童貞だよ、絶対に死にたくない)

しかし、命乞いをしても殺されそうな空気だ。けれど何もしないで殺されるよりは少しでもこの大魔王様へんきょうはくさまにこびへつらいなんとか生き残れないか足掻こう。この戦場を乗り越えたら、僕、童貞捨てるんだ。

「本当に大丈夫です。だから、捨てないでください、足手まといにはなりませんから頑張りますからどうか」

童貞を捨てずに死ぬ未来を浮かべたら、涙があふれてきた。なんとしてもなんとしても僕は童貞だけは捨てて見せるんだ。その様子に大魔王様へんきょうはくさまの様子が変わる。この間とは違うがすごい睨まれているこれ今日が僕の命日かもしれない。

「捨てない。兵士は全て大切だ。だが、だからこそ不調を隠すような真似はするな、次に隠したら……」

「すいません、馬車で酔いました。少し休みたいです」

すごい気迫に押されて、僕は素直に自分の状態を話した。兵士になるのに酔ったなんてもしかしたら最悪この場で殺されるかもしれないけれど、ワンチャン本当に休ませてくれる方にかけてみた。

「分かった。こっちへ来い」

そう告げられて、生き残れることがわかり、童貞卒業チャレンジのチャレンジチャンスをなんとか死守できた。

「イエッサー!!」

喜び過ぎて思わず明るく叫んだ。しかし、大魔王様へんきょうはくさまはすごい嫌そうな顔をしている。騒がしくってごめんなさい。

そのままついて行く。多分兵士用にこの城にも汚い部屋があり、その部屋に僕は入るのだと思っていた、それなのに僕が連れてこられたのは決して派手ではないが全てが一流の品と分かるような荘厳な寝室だったのだ。絶対これは僕の来るべき部屋ではない。

「あ、あのへんきょ……いえギル様」

「どうかしたか?」

「部屋をお間違えではないですか?」

きっと大魔王様へんきょうはくさまも疲れて間違えたんだ。そうだ、そうに決まっていると思った、思ったのだが……

「間違いないが?」

何言ってんだこいつみたいなノリで返されて思わず焦る。

「いえ、あの、ここってこのお城の主寝室ですよね?つまり……」

「そう、俺の寝室だ」

終わった。何故か知らないけど僕は大魔王様へんきょうはくさまに目をつけれらて本来人間がもっともやすらぐ眠りを奪われるタイプの拷問、確か睡眠妨害とかそういうものを受けることになるんだ。

ああ、あんなこと言わなければよかった。とりあえず無理かもだけど五体投地をした。最大限の謝罪ポーズで再び許しを乞う。

「すいません、僕は酔っただけで、こんなその上官のお部屋で休むわけにはいきません」

「何を言っている。ここは俺の寝室で、今日からお前もここで生活をする」

ああああああああああああああ。終わった。僕の人生、童貞を捨てるという小さな夢すら果たせぬまま僕は。そんな絶望的な未来を考えたらなんか色々な糸が切れたようになりその場で気絶した。

遠のく意識の中で心配そうに、

「ルカ?ルカどうし……気絶している?」

と声をかけられた気がするが多分都合の良い夢だろう。
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