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3.ある教皇の信仰

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ラトレッジ修道院の修道長より元男爵令嬢であり、現在罪の償いに幽閉措置となったアザレアへの措置の連絡を受けた。

私はその措置は正直あまりにも重いと感じていた。

アザレアは男爵令嬢であったが、とある婚約者のいる公爵令息に手を出してその婚約を破談にした。それだけなら修道院へ行くことはなかった。

しかし、その破談を公の場で行ったのがよくなかった。

破談を言い渡した際、聞いていた群衆の中ひとりの令嬢がふたりの前に立ち塞がった。

エカチェリーナ皇女。この国でもっとも身分の高い女性だ。

「アザレア男爵令嬢。貴方は学園で婚約者のいる男性ばかりに声をかけて誘惑をしその関係を壊しましたね」

「そんなことありません」

しかし、皇女の周りに美しい令嬢達が集いました。

そして皆が皆、アザレアにより婚約者との関係を悪くされたと訴えました。

それに対してその婚約者はそんなことはない、元から恋愛感情のない関係だったなどと揉めていきます。

そこにさらに皇女殿下は続けたそうです。

「さらに、清らかで美しい私の親友に貴方は嫌がらせをいたしました。彼女のものを壊したり盗んだり。さらにはその婚約者まで奪いました。その証拠は全てございますので次は法廷でお会いましょう」

鈴のような声は会場の騒乱を全て消しました。

婚約者を取るとられたは若い年頃にはある話ですが、傷害と窃盗は別です。それはどんな年齢でも犯罪となる、ましてや男爵令嬢のアザレアよりもかのお相手のご令嬢は身分が高い方だったそうですから。

彼女にたぶらかされた男性陣も暗躍しましたが、ほぼ全ての女性を敵にしたアザレアは結果的にその後裁判に負け、修道院送りとなったそうでした。

しかし、その修道院で彼女はひとりの修道女に嫌がらせをし、遂には修道院内で幽閉したいとの達しがきたのだった。

確かに良くない行為ではあるが、それでは罪が重すぎると平等な立場で見て思った。

そのため、私は修道院長や被害者の修道女を呼び出しました。

「教皇様、この度はお手間をとらせてしまい申し訳ありません」

そう言った彼女を見た瞬間私は夢を見たのかと思いました。

なぜならそこに聖女がごときお方がが礼をしていたのだから。

彼女はヨハンナと名乗り、今までの修道院でアザレアが行った悪事をゆっくり分かりやすくお話になりました。

その話に私はこの聖女が受けた仕打ちを追体験するような奇妙な感覚に囚われました。

まさに神の子の苦行を追体験するような気持ちで途中頬を涙が伝いました。

「それはなんと恐ろしきことだ」

私は胸に憎悪が宿りました。神に仕えるようになり始めての怒りでした。

私はある貴族の三男でした。ゆえに家を継ぐことはできないため妻帯を諦め、神に仕えるために世俗と性を捨て今まで神に尽くし、ついにはこの国で一番神に近い教皇となりました。

私は人間の感情は欠落しています。それは神に近づいたからと認識していましたがどうやらそれをも打ち破るほどにアザレアは悪辣な女だとヨハンナ、いえヨハンナ様の言葉で気付きました。

「そのような邪悪な悪魔を幽閉などで許すべきではありません」

気付いたらそう叫んでいた。
この国の身分制度では貴族や王族の上に神官がおり、さらに私はその頂点にいる。

だから、ヨハンナ様に仇なす大罪人、いえ悪魔を殺すことなど難しくはない。

「教皇様、ありがとうございます。しかし、流石に処刑は哀れでございます。故にバレーユ監獄へ幽閉するのはいかがでございますか?」

慈悲深いヨハンナ様はそう死すべき悪魔へも情けをかけられました。

バレーユ監獄は凶悪犯を収監する劣悪な場所です。まさに悪辣なかのものに相応しい地獄。

私はそれに頷きました。

「バレーユ監獄へかの女を移送しろ」

ヨハンナ様の言葉はまさに神の言葉。これは紛れもない信仰深いことにほかならない。
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