婚約破棄された冷血小公爵はライバルの最狂ヤンデレ騎士にらちかんされました

ひよこ麺

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28.狂った裏切り者の物語(後編)(ノーマン(フレデリックの父親視点))

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※残酷な描写を含みます。ご注意ください。

愚かなアルフレッドとマリーノと腹黒い皇太子殿下により、フレデリックがマリーノとの『騎士契約』を解除されてしまったのだ。

自分がそれを知ったのは遠征の最中で、すぐに王都に戻ったがとんでもない事実が分かった。

『落伍騎士』にされたフレデリックがちょうど王都に凱旋をしたマティアスの願いにより花嫁としてそのまま辺境伯領に連れ去られたということだった。

しかも陛下はそれを容認しろという。その傲慢な言葉に怒りと憎しみの感情が湧いたが、どう足掻いても陛下が救国の英雄への褒美を取り下げないことはわかっていた。

ならば、フレデリックを取り戻すことと、復讐を同時に行うことにした。

しかし、なぜか皇帝陛下のご命令でしばらく辺境伯領への出入りが禁止されてしまったので復讐を先に行うことにした。

まず、ゴールド伯爵をいつもの店へ呼び出した。マリーノの浮気の証拠を持っていったのだ。こちらにも後ろ暗い秘密はあったが、まだ、マリーノの浮気を反省し賠償に応じるならそれ以上は時間の無駄なので何もしないつもりだった。

しかし、ゴールド伯爵は自分の秘密の方が重いと思ったのかマリーノが浮気をしたことを棚に上げて罵ったのだ。

『どうして、マリーノが浮気をしたくらいで皇帝陛下に捕らえられないといけないんだ!!』

そう叫んだ時には、あまりの醜悪さと自分勝手さに笑った。そして、そのまま、ゴールド伯爵を殺した。

その後、事故で死んだことで処理をした。

しかし、突然主が死んだことをゴールド伯爵夫人や、マリーノの兄達は不審がった。

ただ、彼らはゴールド伯爵と違い、自分の過去のことを知らなかったので犯人にまでたどり着くことはなかった。

それでも危険な芽は完全に取り除く必要があったので、ゴールド伯爵亡き後に、いままでのように潤沢な資金を失い困っている彼らの元へ追い打ちをかけるように、婚約者がいながら浮気を繰り返していたマリーノへ公爵家からの賠償金を請求した。

『マリーノを除籍いたします』

だから、賠償金を免除して欲しいと話したゴールド小伯爵に失笑した。亡きゴールド伯爵はよく自分にいかに自身の家族の絆が深いかの話をしていたが、自分たちの保身のために罪を犯した弟を簡単に切り捨てる姿には絆などは幻想だったのだろうと思った。

しかし、そもそもマリーノが罪を犯した段階でゴールド伯爵家は彼を除籍するつもりだったことは知っていたため、当然その処分だけで許すことはなかった。

その結果、膨大な賠償金を支払えなかったゴールド伯爵家はすぐに爵位を返上する羽目になり、その結果、ゴールド伯爵家に連なる一族も皆没落をした。

そして、ゴールド伯爵家を没落させた後、自分を長年悩ませたカレンデュラを惨たらしく殺し、愚かなアルフレッドは利き腕を奪い、最下層のスラムに捨てた。

復讐は大方片付いたが、もうひとつ大切な処理が残っていた。

皇帝陛下の居城の地下牢、そこに捕らえられているマリーノの元を訪れた。そこには薄汚れて嫌な臭いがするマリーノがいた。

「あっ……あなたは……」

「マリーノ君、フレデリックの何が気に入らなかった??」

自分の姿を見るなり瞳を見開くマリーノに向けて、静かに問いかけた。

「そ、それは、なんの面白味もないつまらない人だったから……」

「フレデリックがつまらない??ハハハハハハ、ただの薄汚れた血筋のものが至高の青薔薇に何を言うかと思えば。フレデリックはね、この世で最も特別な子なんだ。それを踏みにじった罪はしっかりと償ってもらわないとね」

その言葉にマリーノが震えあがるのが分かった。

「違う、だってフレデリックは本当に全然僕には相応しくなかったから、だから……」

「……もう手遅れだよ。君はこれから地獄へ堕ちるのだから」

自分の言葉にマリーノは発狂したようだが、地獄はこれからだ。マリーノは皇帝陛下の計らいで死罪は免れたが救国の英雄への無礼の咎で罪人のみがいる炭鉱へと送られて強制労働を強いられることになる。いままで扇より重いものを持ったこともないマリーノにとってそこは地獄だろう。

復讐が終わった時に、運よく皇帝陛下に呼び出されて皇太子殿下の捜索を言い渡された。

その捜索に乗じて辺境伯領への出入り許可を手に入れてやっとフレデリックを救いに行けことになったのだ。

しかし、同時に覚悟しなければいけなかった。マティアスは父である辺境伯より間違いなく自分に思考回路の近いタイプの人間だ。

もし、自分がマティアスならば愛おしい初恋の姫を手に入れたなら犯さない訳がなかった。

だが、それでもフレデリックが手折られていないかもしれないという一縷の望みと共に辺境伯領の入り口までやってきたが……。

「……これは雪の壁」

目の前にはまるで意思でも持つような雪の壁が立ちふさがっていた。
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