婚約破棄された冷血小公爵はライバルの最狂ヤンデレ騎士にらちかんされました

ひよこ麺

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27.狂った裏切り者の物語(中編)(ノーマン(フレデリックの父親視点))

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その言葉が自分に絶望を与えた。

双子について、王都では特に忌むような習慣は廃れていたが、迷信深い北部の辺境伯領では自分が生まれた当時はまだ、双子は忌み子であり、生まれたなら速やかに下の子を殺すべきだとされていた。

前々辺境伯夫人は王都の裕福な伯爵家から前々辺境伯に乞われて嫁に来た『姫』だった。

だから、双子が誕生した際に、子を殺そうとする北部の人間の目をなんとか欺いて自分をちょうどその当時子供が死産したばかりだった子爵家に養子に出したのだと話してくれた。

この時、前々辺境伯夫人の言葉を聞かなければ、自分はトマスをただのライバルと捉えていただろう。けれど、彼が自身の双子の兄だと知ったその日から、心の中に邪悪なモノが生まれてしまった。

それは日に日に大きくなり、ついには、爆発した。

(今まで、トマスよりほんの少し生まれたのが遅かったせいで全てを奪われてきた。だから、今度こそイーリー姫だけは絶対に渡さない……)

トマスは、両親から愛されて辺境伯としての輝かしい未来も約束されて、そして人望もある。なら、ひとつくらい、自分が本当に欲するものくらいくれたって良いはずだ。

そして、目をつけたのがゴールド伯爵家の遠縁にあたる男爵家の三男のヘリアンサスだった。彼がトマスに恋をしてストーカー紛いの付きまとい行為をしていることは知っていた。

だから、ヘリアンサスを言葉巧みに言い含めて、トマスの血を手に入れさせた。『黒い血』を使えば結ばれるとその当時は隠されていた話を教えたのだ。

結果、ヘリアンサスはトマスの『黒い血』を手に入れて『騎士契約』を為した。そうなってしまえばふたりは結婚するほかなかった。

今でもはっきり覚えている、トマスとヘリアンサスの婚姻式の際のトマスの絶望した表情を。

しかし、トマスを遠ざけたからといってイーリー姫が自分を愛してくれる保証はなかったが、髪色や目の色を変えてはいたが奪われた最愛であるトマスとよく似た自分をきっとイーリー姫は無意識に選んでくれた。

たとえ、トマスの代わりであってもイーリー姫と可愛いひとり息子のフレデリックと幸せに過ごせればそれでよかった。

けれど、トマスを絶望に追いやった天罰が下された。

ヘリアンサスを唆したことがゴールド伯爵家にバレたのだ。その結果……、彼等から真実を隠す代わりに多額の金を要求されるようになった。

黒い秘密を隠すために、必死に金を集めていたが、それがイーリー姫にバレてしまった。その結果、元々体の弱いイーリー姫はショックで儚くなってしまい、まだ幼いフレデリックが遺された。

愛おしく美しい私のフレデリック。

フレデリックは生まれつきの『姫』であることはすぐにわかった。本当は誰より美しい『姫』に育てたい気持ちは当然あった。

だからこそ、イーリー姫を失った段階で、全ての秘密を明かしてしまえばよかったと今にして思うが、それがどうしてもできなかった。

自分は弱い人間だ。その結果ゴールド伯爵家に脅されて、ふたつの条件を飲むことになってしまった。

自身の家の子であるマリーノ・ゴールドとフレデリックを婚約させることと、身持ちの悪い未亡人であるカレンデュラとその連れ子で誰の子かもわからないアルフレッドを自分の後妻と息子として引き取ることになった。

フレデリックが『騎士』になることは、とても辛いことだった。『姫』であれば信頼のおけるものと契約すればその身は守られるが、『騎士』の場合、あの美しいフレデリックが狙われないはずがない。

『姫』としてではなく、寄る辺ない『騎士』同士の淫らな行為にフレデリックが巻き込まれないとも限らない。だから騎士団長の地位を使いフレデリックに邪な目的で近づくものは排除した。

一時期、連れ後のアルフレッドがフレデリックの下着を盗んだと聞いた時は、殺してやろうとすら思ったが、劣情はないという言葉と、その後近辺調査をしてフレデリックへの嫌がらせと判断できたため、フレデリックと距離を離すことで一旦は許してやった。

もし、フレデリックに欲情などしていたら殺してしまっていただろう。

さらに、マリーノ・ゴールドについてもフレデリックの真心を踏みにじる行動をとっていたので、その全てをつまびらかにして、ゴールド伯爵家自体を潰そうと画策していた。それにより、自分の秘密がバレても良いと思っていた。

しかし、自分より一足早く計画が動いてしまった。
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