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24.冷血小公爵はミルクの正体を知る(マティアス視点)
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「嫌だ、そんなの、僕は『姫』になんてなりたくなかった!!」
「もう隠さないで。貴方は小さい頃ずっと『姫』に憧れていたはずだ。つまりこうなることを望んでいたはずだ」
ずっと貴方は望んでいたはずだ。
(だから、俺は貴方は……)
『騎士』という軛から救いたかった。
幼い頃の記憶がよみがえる。フレデリック様は辺境伯領に来た時は、フレデリック様と呼ぶよりもフリッカ姫と呼ばれることを好んだ。
父上からそう呼ばれていたからかもしれないが、嬉しそうに微笑むフレデリック様を見たくて俺もそう呼んでいた。
『姫』であるはずなのに、『姫』であることを否定しながら生きないといけない絶望をいつもフレデリック様は抱えている。
「ちがう、ちがう!!」
そう叫ぶ姿に、胸の奧が痛くなる。この人はずっとそうやって自身の気持ちに蓋をしていきてきたのだ。もうこの楽園に居る以上はそんなことをしないでいいのに、それでもご自身の中の今まで築き上げてきたプライドがそれを許さないのだろう。
しかし、俺は、いとおしい人を長年縛り付けて来た軛から解放したかった。だからある事実を口にすることにした。
「いいえ、貴方は絶対に『姫』になることを望んでいたのです。そうでなければ貴方は俺に『姫』のように甘えたりできなかったはずだ。ねぇここに来て貴方はどれだけ俺と愛し合ったか、どれだけ甘えたか覚えていませんか??」
その言葉に、フレデリック様の顔が赤くなるのが分かる。
(ああ、なんて愛らしい)
今すぐにでもベッドに横たえて沢山沢山甘やかして、愛して、甘く甘く突き立てたい感情を必死に抑える。
「ちがう、あれは、あんなのは僕じゃない!!」
「いいえ、本来の貴方の姿です。貴方が何度も口にしたミルクのことを覚えていますか??」
蜂蜜ミルクだと言って飲ませたそれにはある薬が盛られていた。その言葉にハッとしたようにフレデリック様が叫んだ。
「やっぱり、あのミルクには催淫剤の類が入っていたのか??そうじゃなければあんな、あんないやらしいことを僕がするわけがない」
「いいえ、アレに催淫剤の類は入っていませんがとある薬が入っていました」
「……何の薬を盛ったんだ」
美しい青薔薇の瞳が俺を睨みつけている。そろそろ真実を伝えよう。それがたとえフレデリック様を壊すことになるとしても……。
「アレに入っていたのは自白剤のような薬です。心の奥底にある本当の願望を露わにするものでした」
その言葉に、フレデリック様がまた震え出す。きっと一番認めたくない言葉だったのだろう。
「嘘だ、そんなの、あんな、あんな淫らなことが僕の望みだったなんて、信じない、信じないぞ!!」
「……そうおっしゃると思いまして、この薬の効果の証拠をお見せいたします」
「……証拠??」
首を傾げたフレデリック様に、俺は魔法である映像を見せることにした。
それは、どこか分からない古い建物の中で、ひとりの男が鎖に囚われている。その男を見た瞬間、フレデリック様は悲鳴を上げた。
「皇太子殿下!?」
フレデリック様の従兄弟で王家独特の黄金の髪をした貴人。現皇帝陛下の最愛の妃が唯一産み落とした帝国の小さな太陽が無様な姿をさらしていることに、ついこの間まで彼の近衛騎士のひとりだったフレデリック様が驚くのは無理もない。
「マティアス、皇太子殿下に何をしたんだ!?」
「特に何もしていません。ただ、貴方に飲ませたものと同じものを皇太子殿下にも飲ませただけですよ」
「……だとして、あの清廉潔白な皇太子殿下に変化が起こる訳ない」
想像通りの言葉を口にするフレデリック様だが、きっとこの後の皇太子殿下の言葉に衝撃を受けるだろう。
映像の中で、俺の部下が皇太子殿下に問いかけた。
『皇太子殿下、貴方はフレデリック様をどう思いますか??』
その問いに、皇太子殿下は血走った目をしながら、興奮して答える。
『この国でもっとも高貴な血を引き、唯一私と同格でこの国最後の美しいロイヤルブルーの瞳を持ついとおしい小鳥、そう、私と結ばれるべき存在、いとおしい小鳥、誰にも渡したくない。そうだ、『黒い血』などに渡してはいけない。フレデリックは私だけのものだ』
「もう隠さないで。貴方は小さい頃ずっと『姫』に憧れていたはずだ。つまりこうなることを望んでいたはずだ」
ずっと貴方は望んでいたはずだ。
(だから、俺は貴方は……)
『騎士』という軛から救いたかった。
幼い頃の記憶がよみがえる。フレデリック様は辺境伯領に来た時は、フレデリック様と呼ぶよりもフリッカ姫と呼ばれることを好んだ。
父上からそう呼ばれていたからかもしれないが、嬉しそうに微笑むフレデリック様を見たくて俺もそう呼んでいた。
『姫』であるはずなのに、『姫』であることを否定しながら生きないといけない絶望をいつもフレデリック様は抱えている。
「ちがう、ちがう!!」
そう叫ぶ姿に、胸の奧が痛くなる。この人はずっとそうやって自身の気持ちに蓋をしていきてきたのだ。もうこの楽園に居る以上はそんなことをしないでいいのに、それでもご自身の中の今まで築き上げてきたプライドがそれを許さないのだろう。
しかし、俺は、いとおしい人を長年縛り付けて来た軛から解放したかった。だからある事実を口にすることにした。
「いいえ、貴方は絶対に『姫』になることを望んでいたのです。そうでなければ貴方は俺に『姫』のように甘えたりできなかったはずだ。ねぇここに来て貴方はどれだけ俺と愛し合ったか、どれだけ甘えたか覚えていませんか??」
その言葉に、フレデリック様の顔が赤くなるのが分かる。
(ああ、なんて愛らしい)
今すぐにでもベッドに横たえて沢山沢山甘やかして、愛して、甘く甘く突き立てたい感情を必死に抑える。
「ちがう、あれは、あんなのは僕じゃない!!」
「いいえ、本来の貴方の姿です。貴方が何度も口にしたミルクのことを覚えていますか??」
蜂蜜ミルクだと言って飲ませたそれにはある薬が盛られていた。その言葉にハッとしたようにフレデリック様が叫んだ。
「やっぱり、あのミルクには催淫剤の類が入っていたのか??そうじゃなければあんな、あんないやらしいことを僕がするわけがない」
「いいえ、アレに催淫剤の類は入っていませんがとある薬が入っていました」
「……何の薬を盛ったんだ」
美しい青薔薇の瞳が俺を睨みつけている。そろそろ真実を伝えよう。それがたとえフレデリック様を壊すことになるとしても……。
「アレに入っていたのは自白剤のような薬です。心の奥底にある本当の願望を露わにするものでした」
その言葉に、フレデリック様がまた震え出す。きっと一番認めたくない言葉だったのだろう。
「嘘だ、そんなの、あんな、あんな淫らなことが僕の望みだったなんて、信じない、信じないぞ!!」
「……そうおっしゃると思いまして、この薬の効果の証拠をお見せいたします」
「……証拠??」
首を傾げたフレデリック様に、俺は魔法である映像を見せることにした。
それは、どこか分からない古い建物の中で、ひとりの男が鎖に囚われている。その男を見た瞬間、フレデリック様は悲鳴を上げた。
「皇太子殿下!?」
フレデリック様の従兄弟で王家独特の黄金の髪をした貴人。現皇帝陛下の最愛の妃が唯一産み落とした帝国の小さな太陽が無様な姿をさらしていることに、ついこの間まで彼の近衛騎士のひとりだったフレデリック様が驚くのは無理もない。
「マティアス、皇太子殿下に何をしたんだ!?」
「特に何もしていません。ただ、貴方に飲ませたものと同じものを皇太子殿下にも飲ませただけですよ」
「……だとして、あの清廉潔白な皇太子殿下に変化が起こる訳ない」
想像通りの言葉を口にするフレデリック様だが、きっとこの後の皇太子殿下の言葉に衝撃を受けるだろう。
映像の中で、俺の部下が皇太子殿下に問いかけた。
『皇太子殿下、貴方はフレデリック様をどう思いますか??』
その問いに、皇太子殿下は血走った目をしながら、興奮して答える。
『この国でもっとも高貴な血を引き、唯一私と同格でこの国最後の美しいロイヤルブルーの瞳を持ついとおしい小鳥、そう、私と結ばれるべき存在、いとおしい小鳥、誰にも渡したくない。そうだ、『黒い血』などに渡してはいけない。フレデリックは私だけのものだ』
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