婚約破棄された冷血小公爵はライバルの最狂ヤンデレ騎士にらちかんされました

ひよこ麺

文字の大きさ
上 下
20 / 33

19.密談(皇太子殿下視点)

しおりを挟む
「リシュリュー公爵、其方はフレデリックをマティアスから取り戻したいだろう??私も従兄弟が父の横暴で無理やり嫁がされるのはおかしいと考えている」

アルフレッドにセッティングさせたことで不安はあったが無事にリシュリュー公爵と秘密裏に話す機会を作ることができた。

今は、皇族がお忍びで使用する料理店のVIPルームで向き合って話をしている。しかし、こちらの言葉を聞いてもリシュリュー公爵は無言のままだった。

私から見たリシュリュー公爵はあまり口が回るタイプではなく、無口で無骨な男というイメージだった。そもそも、辺境伯の親類であり、近衛騎士団の団長であるのだからその印象に間違いはないだろう。

「違憲として父を皇帝陛下を訴えることだって可能だ。其方が望むなら私も全力を尽くそう」

私の計画は、フレデリックの父であるリシュリュー公爵の訴えとして皇帝陛下を訴えてこの度の辺境伯とフレデリックの婚姻を無効にし、その後、私のとしてフレデリックを迎えるというものだった。

リシュリュー公爵はフレデリックの父親なのだから、その父親が望まないままに婚姻がなされたことを無効だと訴えること自体は問題ない行為であるし、そもそもフレデリックは小公爵なのだから辺境伯家に嫁に出すなどおかしいと訴えることも世間的に見ても正しい反応だ。

しかし、その言葉の後もリシュリュー公爵は無言を貫いている。リシュリュー公爵の表情は何かを思案しているというよりはむしろ何か言うタイミングを見計らっているような少し緊迫感のあるものに感じた。

「其方はどう考えている??」

「……皇太子殿下、貴方の言う通り、我がリシュリュー公爵家はフレデリックを失えば後継者はおりません。ただ、フレデリックが継げないのなら最早自分の代でその名が失われることは仕方がないことだとも思っております」

予想とは異なる反応だった。

父からはリシュリュー公爵はイライジャ叔父上と婚姻することで子爵から公爵に爵位が上がるという出世をした人物であるから、てっきり権威欲も高いと思っていた。

「……それは其方は辺境伯にフレデリックが嫁いでも構わないと思っているということか??私は、其方がフレデリックを取り戻したいと思っていると聞いたのだが……」

「はい、もちろん大切なフレデリックをあの『黒い血』の辺境伯家の花嫁になどする気はありません。しかし、私が裁判をしたとて時間が掛かるだけでフレデリックを確実に取り戻すことは難しいのです。それに……」

ずっとどこか遠くを見ているようだったリシュリュー公爵の目がハッキリと私を捉えた。

「仮に裁判で皇太子殿下の手を借りて勝利したとしたら、皇太子殿下、貴方もフレデリックをロイヤルブルーの特別な子を欲しているのでしょう??」

底の見えない昏い瞳でそう言ったリシュリュー公爵に、私は心の中で舌打ちをした。

(……私の考えが少し違っていたようだ。リシュリュー公爵、この男はフレデリックを息子として見ていない)

リシュリュー公爵はフレデリックを取り戻したらそのまま自身の館に閉じ込めるはずだ。そして、もし想像通りすでにリシュリュー公爵の気が触れているならば『騎士契約』は仮契約以外はどちらかの死でのみ解消されるものだから、現在の『姫』であるアルフレッドの母親を殺して、フレデリックを実の子を自身の『姫』にする可能性すらありうる。

「……フレデリックは唯一無二の存在だからな。私も当然欲している」

最早、共同戦線は引けないと判断しリシュリュー公爵に挑発するような視線を向ける。昏い瞳はまるで虚無のようになにも映し出さない。

しかし、リシュリュー公爵は急に声をあげて笑う。

「ハハハ、皇太子殿下、貴方は皇帝陛下とよく似ている。欲しいもののためなら手段を選ばないだろう」

「ああ、そのつもりだ」

意図の読めない言葉に静かに答えれば、再びリシュリュー公爵が今度はけたたましく笑う。

「なら、辺境伯から奪い取って見せてください。そうして貴方のものにすればいい。もちろんそれが出来ればですがね。私はそれに手を貸すつもりも邪魔をするつもりもありませんのでご安心ください」

後半、早口でまくし立てるように話したリシュリュー公爵は目の前に何気なく置かれていた赤ワインを一気に飲み干した。

それは交渉が完全に決裂した合図だった。

「そうか。わかった。其方からの言質はとった。私は私でフレデリックを取り返させてもらう」

席を乱暴に立つとそのまま私は後ろを振り向かずその場を後にした。そして、いよいよ血なまぐさいことをしてでもフレデリックを私のを取り戻す決意をした。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

変なαとΩに両脇を包囲されたβが、色々奪われながら頑張る話

ベポ田
BL
ヒトの性別が、雄と雌、さらにα、β、Ωの三種類のバース性に分類される世界。総人口の僅か5%しか存在しないαとΩは、フェロモンの分泌器官・受容体の発達度合いで、さらにI型、II型、Ⅲ型に分類される。 βである主人公・九条博人の通う私立帝高校高校は、αやΩ、さらにI型、II型が多く所属する伝統ある名門校だった。 そんな魔境のなかで、変なI型αとII型Ωに理不尽に執着されては、色々な物を奪われ、手に入れながら頑張る不憫なβの話。 イベントにて頒布予定の合同誌サンプルです。 3部構成のうち、1部まで公開予定です。 イラストは、漫画・イラスト担当のいぽいぽさんが描いたものです。 最新はTwitterに掲載しています。

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!

めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。 ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。 兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。 義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!? このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。 ※タイトル変更(2024/11/27)

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

堕とされた悪役令息

SEKISUI
BL
 転生したら恋い焦がれたあの人がいるゲームの世界だった  王子ルートのシナリオを成立させてあの人を確実手に入れる  それまであの人との関係を楽しむ主人公  

悪役令息上等です。悪の華は可憐に咲き誇る

竜鳴躍
BL
異性間でも子どもが産まれにくくなった世界。 子どもは魔法の力を借りて同性間でも産めるようになったため、性別に関係なく結婚するようになった世界。 ファーマ王国のアレン=ファーメット公爵令息は、白銀に近い髪に真っ赤な瞳、真っ白な肌を持つ。 神秘的で美しい姿に王子に見初められた彼は公爵家の長男でありながら唯一の王子の婚約者に選ばれてしまった。どこに行くにも欠かせない大きな日傘。日に焼けると爛れてしまいかねない皮膚。 公爵家は両親とも黒髪黒目であるが、彼一人が色が違う。 それは彼が全てアルビノだったからなのに、成長した教養のない王子は、アレンを魔女扱いした上、聖女らしき男爵令嬢に現を抜かして婚約破棄の上スラム街に追放してしまう。 だが、王子は知らない。 アレンにも王位継承権があることを。 従者を一人連れてスラムに行ったアレンは、イケメンでスパダリな従者に溺愛されながらスラムを改革していって……!? *誤字報告ありがとうございます! *カエサル=プレート 修正しました。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

処理中です...