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10.結ばれた契りと壊れているふたり※(マティアス視点+フレデリック視点)
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※マティアス視点、少し痛い描写があります。
「姫君……っ」
俺の呼びかけに反応はない。
美しい青薔薇の瞳は虚ろで何もうつさず、定期的な呼吸を繰り返す薔薇色の唇と白い胸を見つめる。
あの日、俺が心無い言葉を口にして以来、フレデリック様はまるで人形のように虚空を見つめてほとんど反応を示さなくなってしまっていた。
(分かっていたはずだ、姫君が父上を慕っていたことも『姫』でありながら『騎士』になることを強要されて必死にご自身を洗脳してギリギリ精神を保っていたことを……それをあんな残酷なことを言えばどうなるか分かっていたはずだ……)
分かっていたのに深く傷つけてしまった。自分が一番許せない。
「クソッ、クソッ。どうして俺は……」
行き場のない怒りと共に自身の剣が目に入った。無意識にそれを引き抜いていた。そして……、
(自分なんか消えた方がいい)
自らの胸を貫いてしまおう。……しかし、何かがその動きを止めた。それが美しい白い手でフレデリック様が刀の動きを止めたのだ。
「あっ……あっ」
喉から潰れたカエルのような無様な声が漏れた。刃の部分を持って止めたからか、真っ赤な雫がその美しい白い手から絨毯に滴り落ちていく。
その瞬間、いままで混乱していた頭が正気に戻った。
「姫君、駄目だ。綺麗な手が……」
剣をなおも離さない白い手を急いで強引に外す。剣本体は毛足の長い絨毯の上に音もなく落ちた。
「すぐに手当いたします」
急いで見たフレデリック様の傷は思ったよりも深くなかったため安堵するが、その傷口を見た時、自分のせいで傷付けてしまった罪悪感と、自分のために出来た傷という高揚感が混ざり合うのが分かった。
「姫君が、フレデリック様が俺のために付けた傷口……」
その傷口にそっと唇を寄せる。
我ながら狂っていると思ったがもうずっと俺は、フレデリック様のことになると正気ではいられていなかった。
血の味が口内に広がったがなんて甘いのだろう。
「やはり、貴方は特別な至高の姫君……。俺は血なまぐさい騎士、貴方と違う化け物なのに……」
この身には呪われた黒い血が流れているのに、その美しさ、甘さ、優しさ、気高さ全てに惹かれてしまう。そして、その眩しさを欲してしまう。たとえ自分が地獄の業火に焼かれることになるとしてもこの愛は誰にも触れさせない。
「そのために、貴方にこちら側に来て頂きます……優しい貴方がそれを望まなくても……」
俺は自身の手も躊躇なく剣で切った。フレデリック様とは違うどす黒い血が零れた。その傷口をフレデリック様の傷口に合わせた。
お互いの血が混ざり合う。その瞬間、青い薔薇が手の甲に咲いたのが分かる。『騎士』と『姫』も契約はなされた。その瞬間、狂ったように笑っていた。やっと手に入れたのだから。
「もう貴方は永遠に俺だけの姫君だ……」
*******************************************
(※視点がフレデリックに戻ります+エッチな描写があります)
夢と現の間を彷徨ううちに、僕は何かを思い出して、何かを忘れてしまった気がする。
けれど、そんな僕を大好きなマティアスの手が優しく撫でるのが分かった。とても心地よくてずっとそうして欲しくなる感覚で思わずその手を包み込むとズキリと手が痛む。
思わず眉根を寄せたのをマティアスは見逃さなかった。
「姫君、お気に召しませんか??」
「……ちがう……もっと」
甘えるように腰を突き出す。マティアスの手が撫でているのは自身と僕のペニスで、ふたつを握って一緒に愛撫しているのだ。
兜合わせというらしいこの性技が僕はたまらなく好きだった。
お互いのものが同時にこすれ合うのも、マティアスの大きくて赤黒いペニスと自身のペニスが重なるこちでサイズの違いがつまびらかにされるような感覚、屈辱すらもたまらない。
それは、ずっと自分に課してきた『呪い』を解いていく儀式のようで何度も求めてしまう。
ぐちゅぐちゅぬちゅ
猥雑な水音が響く度に脳がただマティアスを求める。
「あっ……きもちぃ」
「姫君は、兜合わせがお好きなのですね。ああ、こんなに甘い蜜を垂らしていますよ」
マティアスの手が先走りでテラテラと光っているのが分かる。そのいやらしさに体の奧が熱くなるのが分かった。
「……痒い……もっとつよく……して」
その言葉に呼応するようにマティアスの扱く力と速度が上がる。そうして、ふたりの体液も体温も何もかもが混ざり合い溶け合うような気がした。
「……とけるっ」
「なら、ふたりで溶け合いましょう、二度と離れないように」
マティアスの甘い囁きにほぼ同時に零れた白濁、気持ちの良い脱力感。そして、雄のにおいが充満する淫靡な空気。ずっと忌避してきた汚らわしい行為なのに虜になっている。
「もっと……もっと汚して」
無意識に選んだその言葉に意味はない。けれど、マティアスが昏い笑みを浮かべるのが分かった。
「いくらでも、何度でも貴方を堕としてみせましょう、俺だけの姫君……」
恍惚の黄金の瞳を以前のように恐ろしく思うよりも自身の情欲が満ち足りるのがわかる。
(もっともっと求められたい。この男の全てを飲み込んでしまいたい……)
「きて……っ、もっとちょうだい」
足をその太い胴体に絡ませながら、大好きな広い背中に爪を立てる。不思議なくらい自然と体が動く、それこそが自身の本質であるというように……。
「姫君の望むがままに……」
「姫君……っ」
俺の呼びかけに反応はない。
美しい青薔薇の瞳は虚ろで何もうつさず、定期的な呼吸を繰り返す薔薇色の唇と白い胸を見つめる。
あの日、俺が心無い言葉を口にして以来、フレデリック様はまるで人形のように虚空を見つめてほとんど反応を示さなくなってしまっていた。
(分かっていたはずだ、姫君が父上を慕っていたことも『姫』でありながら『騎士』になることを強要されて必死にご自身を洗脳してギリギリ精神を保っていたことを……それをあんな残酷なことを言えばどうなるか分かっていたはずだ……)
分かっていたのに深く傷つけてしまった。自分が一番許せない。
「クソッ、クソッ。どうして俺は……」
行き場のない怒りと共に自身の剣が目に入った。無意識にそれを引き抜いていた。そして……、
(自分なんか消えた方がいい)
自らの胸を貫いてしまおう。……しかし、何かがその動きを止めた。それが美しい白い手でフレデリック様が刀の動きを止めたのだ。
「あっ……あっ」
喉から潰れたカエルのような無様な声が漏れた。刃の部分を持って止めたからか、真っ赤な雫がその美しい白い手から絨毯に滴り落ちていく。
その瞬間、いままで混乱していた頭が正気に戻った。
「姫君、駄目だ。綺麗な手が……」
剣をなおも離さない白い手を急いで強引に外す。剣本体は毛足の長い絨毯の上に音もなく落ちた。
「すぐに手当いたします」
急いで見たフレデリック様の傷は思ったよりも深くなかったため安堵するが、その傷口を見た時、自分のせいで傷付けてしまった罪悪感と、自分のために出来た傷という高揚感が混ざり合うのが分かった。
「姫君が、フレデリック様が俺のために付けた傷口……」
その傷口にそっと唇を寄せる。
我ながら狂っていると思ったがもうずっと俺は、フレデリック様のことになると正気ではいられていなかった。
血の味が口内に広がったがなんて甘いのだろう。
「やはり、貴方は特別な至高の姫君……。俺は血なまぐさい騎士、貴方と違う化け物なのに……」
この身には呪われた黒い血が流れているのに、その美しさ、甘さ、優しさ、気高さ全てに惹かれてしまう。そして、その眩しさを欲してしまう。たとえ自分が地獄の業火に焼かれることになるとしてもこの愛は誰にも触れさせない。
「そのために、貴方にこちら側に来て頂きます……優しい貴方がそれを望まなくても……」
俺は自身の手も躊躇なく剣で切った。フレデリック様とは違うどす黒い血が零れた。その傷口をフレデリック様の傷口に合わせた。
お互いの血が混ざり合う。その瞬間、青い薔薇が手の甲に咲いたのが分かる。『騎士』と『姫』も契約はなされた。その瞬間、狂ったように笑っていた。やっと手に入れたのだから。
「もう貴方は永遠に俺だけの姫君だ……」
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(※視点がフレデリックに戻ります+エッチな描写があります)
夢と現の間を彷徨ううちに、僕は何かを思い出して、何かを忘れてしまった気がする。
けれど、そんな僕を大好きなマティアスの手が優しく撫でるのが分かった。とても心地よくてずっとそうして欲しくなる感覚で思わずその手を包み込むとズキリと手が痛む。
思わず眉根を寄せたのをマティアスは見逃さなかった。
「姫君、お気に召しませんか??」
「……ちがう……もっと」
甘えるように腰を突き出す。マティアスの手が撫でているのは自身と僕のペニスで、ふたつを握って一緒に愛撫しているのだ。
兜合わせというらしいこの性技が僕はたまらなく好きだった。
お互いのものが同時にこすれ合うのも、マティアスの大きくて赤黒いペニスと自身のペニスが重なるこちでサイズの違いがつまびらかにされるような感覚、屈辱すらもたまらない。
それは、ずっと自分に課してきた『呪い』を解いていく儀式のようで何度も求めてしまう。
ぐちゅぐちゅぬちゅ
猥雑な水音が響く度に脳がただマティアスを求める。
「あっ……きもちぃ」
「姫君は、兜合わせがお好きなのですね。ああ、こんなに甘い蜜を垂らしていますよ」
マティアスの手が先走りでテラテラと光っているのが分かる。そのいやらしさに体の奧が熱くなるのが分かった。
「……痒い……もっとつよく……して」
その言葉に呼応するようにマティアスの扱く力と速度が上がる。そうして、ふたりの体液も体温も何もかもが混ざり合い溶け合うような気がした。
「……とけるっ」
「なら、ふたりで溶け合いましょう、二度と離れないように」
マティアスの甘い囁きにほぼ同時に零れた白濁、気持ちの良い脱力感。そして、雄のにおいが充満する淫靡な空気。ずっと忌避してきた汚らわしい行為なのに虜になっている。
「もっと……もっと汚して」
無意識に選んだその言葉に意味はない。けれど、マティアスが昏い笑みを浮かべるのが分かった。
「いくらでも、何度でも貴方を堕としてみせましょう、俺だけの姫君……」
恍惚の黄金の瞳を以前のように恐ろしく思うよりも自身の情欲が満ち足りるのがわかる。
(もっともっと求められたい。この男の全てを飲み込んでしまいたい……)
「きて……っ、もっとちょうだい」
足をその太い胴体に絡ませながら、大好きな広い背中に爪を立てる。不思議なくらい自然と体が動く、それこそが自身の本質であるというように……。
「姫君の望むがままに……」
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