11 / 33
10.結ばれた契りと壊れているふたり※(マティアス視点+フレデリック視点)
しおりを挟む
※マティアス視点、少し痛い描写があります。
「姫君……っ」
俺の呼びかけに反応はない。
美しい青薔薇の瞳は虚ろで何もうつさず、定期的な呼吸を繰り返す薔薇色の唇と白い胸を見つめる。
あの日、俺が心無い言葉を口にして以来、フレデリック様はまるで人形のように虚空を見つめてほとんど反応を示さなくなってしまっていた。
(分かっていたはずだ、姫君が父上を慕っていたことも『姫』でありながら『騎士』になることを強要されて必死にご自身を洗脳してギリギリ精神を保っていたことを……それをあんな残酷なことを言えばどうなるか分かっていたはずだ……)
分かっていたのに深く傷つけてしまった。自分が一番許せない。
「クソッ、クソッ。どうして俺は……」
行き場のない怒りと共に自身の剣が目に入った。無意識にそれを引き抜いていた。そして……、
(自分なんか消えた方がいい)
自らの胸を貫いてしまおう。……しかし、何かがその動きを止めた。それが美しい白い手でフレデリック様が刀の動きを止めたのだ。
「あっ……あっ」
喉から潰れたカエルのような無様な声が漏れた。刃の部分を持って止めたからか、真っ赤な雫がその美しい白い手から絨毯に滴り落ちていく。
その瞬間、いままで混乱していた頭が正気に戻った。
「姫君、駄目だ。綺麗な手が……」
剣をなおも離さない白い手を急いで強引に外す。剣本体は毛足の長い絨毯の上に音もなく落ちた。
「すぐに手当いたします」
急いで見たフレデリック様の傷は思ったよりも深くなかったため安堵するが、その傷口を見た時、自分のせいで傷付けてしまった罪悪感と、自分のために出来た傷という高揚感が混ざり合うのが分かった。
「姫君が、フレデリック様が俺のために付けた傷口……」
その傷口にそっと唇を寄せる。
我ながら狂っていると思ったがもうずっと俺は、フレデリック様のことになると正気ではいられていなかった。
血の味が口内に広がったがなんて甘いのだろう。
「やはり、貴方は特別な至高の姫君……。俺は血なまぐさい騎士、貴方と違う化け物なのに……」
この身には呪われた黒い血が流れているのに、その美しさ、甘さ、優しさ、気高さ全てに惹かれてしまう。そして、その眩しさを欲してしまう。たとえ自分が地獄の業火に焼かれることになるとしてもこの愛は誰にも触れさせない。
「そのために、貴方にこちら側に来て頂きます……優しい貴方がそれを望まなくても……」
俺は自身の手も躊躇なく剣で切った。フレデリック様とは違うどす黒い血が零れた。その傷口をフレデリック様の傷口に合わせた。
お互いの血が混ざり合う。その瞬間、青い薔薇が手の甲に咲いたのが分かる。『騎士』と『姫』も契約はなされた。その瞬間、狂ったように笑っていた。やっと手に入れたのだから。
「もう貴方は永遠に俺だけの姫君だ……」
*******************************************
(※視点がフレデリックに戻ります+エッチな描写があります)
夢と現の間を彷徨ううちに、僕は何かを思い出して、何かを忘れてしまった気がする。
けれど、そんな僕を大好きなマティアスの手が優しく撫でるのが分かった。とても心地よくてずっとそうして欲しくなる感覚で思わずその手を包み込むとズキリと手が痛む。
思わず眉根を寄せたのをマティアスは見逃さなかった。
「姫君、お気に召しませんか??」
「……ちがう……もっと」
甘えるように腰を突き出す。マティアスの手が撫でているのは自身と僕のペニスで、ふたつを握って一緒に愛撫しているのだ。
兜合わせというらしいこの性技が僕はたまらなく好きだった。
お互いのものが同時にこすれ合うのも、マティアスの大きくて赤黒いペニスと自身のペニスが重なるこちでサイズの違いがつまびらかにされるような感覚、屈辱すらもたまらない。
それは、ずっと自分に課してきた『呪い』を解いていく儀式のようで何度も求めてしまう。
ぐちゅぐちゅぬちゅ
猥雑な水音が響く度に脳がただマティアスを求める。
「あっ……きもちぃ」
「姫君は、兜合わせがお好きなのですね。ああ、こんなに甘い蜜を垂らしていますよ」
マティアスの手が先走りでテラテラと光っているのが分かる。そのいやらしさに体の奧が熱くなるのが分かった。
「……痒い……もっとつよく……して」
その言葉に呼応するようにマティアスの扱く力と速度が上がる。そうして、ふたりの体液も体温も何もかもが混ざり合い溶け合うような気がした。
「……とけるっ」
「なら、ふたりで溶け合いましょう、二度と離れないように」
マティアスの甘い囁きにほぼ同時に零れた白濁、気持ちの良い脱力感。そして、雄のにおいが充満する淫靡な空気。ずっと忌避してきた汚らわしい行為なのに虜になっている。
「もっと……もっと汚して」
無意識に選んだその言葉に意味はない。けれど、マティアスが昏い笑みを浮かべるのが分かった。
「いくらでも、何度でも貴方を堕としてみせましょう、俺だけの姫君……」
恍惚の黄金の瞳を以前のように恐ろしく思うよりも自身の情欲が満ち足りるのがわかる。
(もっともっと求められたい。この男の全てを飲み込んでしまいたい……)
「きて……っ、もっとちょうだい」
足をその太い胴体に絡ませながら、大好きな広い背中に爪を立てる。不思議なくらい自然と体が動く、それこそが自身の本質であるというように……。
「姫君の望むがままに……」
「姫君……っ」
俺の呼びかけに反応はない。
美しい青薔薇の瞳は虚ろで何もうつさず、定期的な呼吸を繰り返す薔薇色の唇と白い胸を見つめる。
あの日、俺が心無い言葉を口にして以来、フレデリック様はまるで人形のように虚空を見つめてほとんど反応を示さなくなってしまっていた。
(分かっていたはずだ、姫君が父上を慕っていたことも『姫』でありながら『騎士』になることを強要されて必死にご自身を洗脳してギリギリ精神を保っていたことを……それをあんな残酷なことを言えばどうなるか分かっていたはずだ……)
分かっていたのに深く傷つけてしまった。自分が一番許せない。
「クソッ、クソッ。どうして俺は……」
行き場のない怒りと共に自身の剣が目に入った。無意識にそれを引き抜いていた。そして……、
(自分なんか消えた方がいい)
自らの胸を貫いてしまおう。……しかし、何かがその動きを止めた。それが美しい白い手でフレデリック様が刀の動きを止めたのだ。
「あっ……あっ」
喉から潰れたカエルのような無様な声が漏れた。刃の部分を持って止めたからか、真っ赤な雫がその美しい白い手から絨毯に滴り落ちていく。
その瞬間、いままで混乱していた頭が正気に戻った。
「姫君、駄目だ。綺麗な手が……」
剣をなおも離さない白い手を急いで強引に外す。剣本体は毛足の長い絨毯の上に音もなく落ちた。
「すぐに手当いたします」
急いで見たフレデリック様の傷は思ったよりも深くなかったため安堵するが、その傷口を見た時、自分のせいで傷付けてしまった罪悪感と、自分のために出来た傷という高揚感が混ざり合うのが分かった。
「姫君が、フレデリック様が俺のために付けた傷口……」
その傷口にそっと唇を寄せる。
我ながら狂っていると思ったがもうずっと俺は、フレデリック様のことになると正気ではいられていなかった。
血の味が口内に広がったがなんて甘いのだろう。
「やはり、貴方は特別な至高の姫君……。俺は血なまぐさい騎士、貴方と違う化け物なのに……」
この身には呪われた黒い血が流れているのに、その美しさ、甘さ、優しさ、気高さ全てに惹かれてしまう。そして、その眩しさを欲してしまう。たとえ自分が地獄の業火に焼かれることになるとしてもこの愛は誰にも触れさせない。
「そのために、貴方にこちら側に来て頂きます……優しい貴方がそれを望まなくても……」
俺は自身の手も躊躇なく剣で切った。フレデリック様とは違うどす黒い血が零れた。その傷口をフレデリック様の傷口に合わせた。
お互いの血が混ざり合う。その瞬間、青い薔薇が手の甲に咲いたのが分かる。『騎士』と『姫』も契約はなされた。その瞬間、狂ったように笑っていた。やっと手に入れたのだから。
「もう貴方は永遠に俺だけの姫君だ……」
*******************************************
(※視点がフレデリックに戻ります+エッチな描写があります)
夢と現の間を彷徨ううちに、僕は何かを思い出して、何かを忘れてしまった気がする。
けれど、そんな僕を大好きなマティアスの手が優しく撫でるのが分かった。とても心地よくてずっとそうして欲しくなる感覚で思わずその手を包み込むとズキリと手が痛む。
思わず眉根を寄せたのをマティアスは見逃さなかった。
「姫君、お気に召しませんか??」
「……ちがう……もっと」
甘えるように腰を突き出す。マティアスの手が撫でているのは自身と僕のペニスで、ふたつを握って一緒に愛撫しているのだ。
兜合わせというらしいこの性技が僕はたまらなく好きだった。
お互いのものが同時にこすれ合うのも、マティアスの大きくて赤黒いペニスと自身のペニスが重なるこちでサイズの違いがつまびらかにされるような感覚、屈辱すらもたまらない。
それは、ずっと自分に課してきた『呪い』を解いていく儀式のようで何度も求めてしまう。
ぐちゅぐちゅぬちゅ
猥雑な水音が響く度に脳がただマティアスを求める。
「あっ……きもちぃ」
「姫君は、兜合わせがお好きなのですね。ああ、こんなに甘い蜜を垂らしていますよ」
マティアスの手が先走りでテラテラと光っているのが分かる。そのいやらしさに体の奧が熱くなるのが分かった。
「……痒い……もっとつよく……して」
その言葉に呼応するようにマティアスの扱く力と速度が上がる。そうして、ふたりの体液も体温も何もかもが混ざり合い溶け合うような気がした。
「……とけるっ」
「なら、ふたりで溶け合いましょう、二度と離れないように」
マティアスの甘い囁きにほぼ同時に零れた白濁、気持ちの良い脱力感。そして、雄のにおいが充満する淫靡な空気。ずっと忌避してきた汚らわしい行為なのに虜になっている。
「もっと……もっと汚して」
無意識に選んだその言葉に意味はない。けれど、マティアスが昏い笑みを浮かべるのが分かった。
「いくらでも、何度でも貴方を堕としてみせましょう、俺だけの姫君……」
恍惚の黄金の瞳を以前のように恐ろしく思うよりも自身の情欲が満ち足りるのがわかる。
(もっともっと求められたい。この男の全てを飲み込んでしまいたい……)
「きて……っ、もっとちょうだい」
足をその太い胴体に絡ませながら、大好きな広い背中に爪を立てる。不思議なくらい自然と体が動く、それこそが自身の本質であるというように……。
「姫君の望むがままに……」
482
お気に入りに追加
1,059
あなたにおすすめの小説
変なαとΩに両脇を包囲されたβが、色々奪われながら頑張る話
ベポ田
BL
ヒトの性別が、雄と雌、さらにα、β、Ωの三種類のバース性に分類される世界。総人口の僅か5%しか存在しないαとΩは、フェロモンの分泌器官・受容体の発達度合いで、さらにI型、II型、Ⅲ型に分類される。
βである主人公・九条博人の通う私立帝高校高校は、αやΩ、さらにI型、II型が多く所属する伝統ある名門校だった。
そんな魔境のなかで、変なI型αとII型Ωに理不尽に執着されては、色々な物を奪われ、手に入れながら頑張る不憫なβの話。
イベントにて頒布予定の合同誌サンプルです。
3部構成のうち、1部まで公開予定です。
イラストは、漫画・イラスト担当のいぽいぽさんが描いたものです。
最新はTwitterに掲載しています。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)

お荷物な俺、独り立ちしようとしたら押し倒されていた
やまくる実
BL
異世界ファンタジー、ゲーム内の様な世界観。
俺は幼なじみのロイの事が好きだった。だけど俺は能力が低く、アイツのお荷物にしかなっていない。
独り立ちしようとして執着激しい攻めにガッツリ押し倒されてしまう話。
好きな相手に冷たくしてしまう拗らせ執着攻め✖️自己肯定感の低い鈍感受け
ムーンライトノベルズにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる