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11.動き出したもの(???視点)
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「フレデリックが、あのマティアスの花嫁になった??」
その言葉に血が沸騰するような激しい怒りを覚えて思わず持っていたワイングラスを砕いてしまった。
血と赤ワインが混ざり合った雫が大理石の床にこぼれ落ちてスカーレットの水溜まりを作る。
「は、はい、あの……」
私の怒りに、震えている男に向けて静かに問いかける。
外遊に行っている際にこんなことになるとは
あれほど時期を言い含めたのに何をやっている。
「なぜ、建国記念日に破棄をした??私が戻ってからするようにと命じたはずだが??」
そうして裏切られて『落伍騎士』にされた可哀想なフレデリックを一番最初に捕まえて優しくして、私の愛おしい小鳥をその鳥籠に閉じ込めるつもりだったのだ。
「いや、オレは、反対しましたがマリーノが先走って……辺境伯が戻るタイミングにしたいっていって聞かなくて……」
(‥…本当に使えない男だ)
ゴールド伯爵子息がマティアスに懸想しているのは有名な話だった。
だから、婚約破棄と契約破棄をしたならあの夢見がちな令息がすぐにマティアスを求めることなど分かりきっていること、それを分かりながら馬鹿正直にその要望に答えるなど愚かの極みでしかない。
「そのせいで計画が狂った。マティアスがフレデリックを攫った。取り戻すにはそれなりの理由が必要だ」
「あ、あの……、助けて下さい。兄貴が辺境伯の花嫁になってから家がおかしくて、父さんはオレを小公爵にはできないとかいうし、それにずっと尋問とかされてマリーノには会えないし、母さんは泣いて話にならないし、もう頼りになるのは貴方様しかいない」
(ああ、本当に馬鹿だな、愚か過ぎる)
フレデリックが居なくなれば小公爵になれるとこいつは思っていたらしいが、フレデリックだから小公爵になれるのだということに気づいていない。
フレデリックには高貴な血が流れている。それに引きかえ下級貴族の血しか引いてないこいつが継げるのはリシュリュー公爵が元々持っていた子爵の方だけだ。
(それすら今回のことでだいぶ怪しくなったがな)
しかし、それに気付かず随分愚かな真似をしたものだ。
(しかし、その愚かさも今までは役にたったが、今後はどうだ……)
正直、利用価値はもうないと思えた。
(……今までのことが明るみに出る前に消すべきか??)
「父さんがずっと兄貴を辺境伯から取り戻すって言ってて、そんなの無理なのに……」
「リシュリュー公爵はこの婚姻に同意していないのか??」
「はい、皇帝陛下の一存で決められたので。だから皇帝陛下にも直談判したらしいけど、聞き入れられなくて……」
(ああ、まだ、まだチャンスはある)
私は笑う。
「アルフレッド、手助けが必要なのだろう??なら、君から私とリシュリュー公爵が話せる場を設けてくれないか??そうすれば、悪いようにはしない」
助けるとは言わない。そのつもりは1ミリもないのだから。
しかし、馬鹿なアルフレッドは嬉しそうに笑う。
「は、はい。もちろんです。父さんも貴方様、この国の小さな太陽である皇太子殿下にでしたら会わないはずがありません」
最大限ごまをするアルフレッドに完璧な笑みを返す。リシュリュー公爵が認めていないならばまだ正攻法での勝機がある。
(マティアスとの婚姻が無効になれば、その後は間違いなくリシュリュー公爵なら皇族で高貴な血を引く私と安心して婚姻させるだろう……二度と恐ろしい過ちが起きないように)
そこまで考えて私は、愛おしいフレデリックのことを考える。
この国でもっとも高貴な血を引く私以外の唯一の存在である美しい小鳥。
その翼を手折り私だけに囀る存在に変えないといけない。
(あんな黒い血が流れる呪われた辺境伯になど渡したりはしない……)
その言葉に血が沸騰するような激しい怒りを覚えて思わず持っていたワイングラスを砕いてしまった。
血と赤ワインが混ざり合った雫が大理石の床にこぼれ落ちてスカーレットの水溜まりを作る。
「は、はい、あの……」
私の怒りに、震えている男に向けて静かに問いかける。
外遊に行っている際にこんなことになるとは
あれほど時期を言い含めたのに何をやっている。
「なぜ、建国記念日に破棄をした??私が戻ってからするようにと命じたはずだが??」
そうして裏切られて『落伍騎士』にされた可哀想なフレデリックを一番最初に捕まえて優しくして、私の愛おしい小鳥をその鳥籠に閉じ込めるつもりだったのだ。
「いや、オレは、反対しましたがマリーノが先走って……辺境伯が戻るタイミングにしたいっていって聞かなくて……」
(‥…本当に使えない男だ)
ゴールド伯爵子息がマティアスに懸想しているのは有名な話だった。
だから、婚約破棄と契約破棄をしたならあの夢見がちな令息がすぐにマティアスを求めることなど分かりきっていること、それを分かりながら馬鹿正直にその要望に答えるなど愚かの極みでしかない。
「そのせいで計画が狂った。マティアスがフレデリックを攫った。取り戻すにはそれなりの理由が必要だ」
「あ、あの……、助けて下さい。兄貴が辺境伯の花嫁になってから家がおかしくて、父さんはオレを小公爵にはできないとかいうし、それにずっと尋問とかされてマリーノには会えないし、母さんは泣いて話にならないし、もう頼りになるのは貴方様しかいない」
(ああ、本当に馬鹿だな、愚か過ぎる)
フレデリックが居なくなれば小公爵になれるとこいつは思っていたらしいが、フレデリックだから小公爵になれるのだということに気づいていない。
フレデリックには高貴な血が流れている。それに引きかえ下級貴族の血しか引いてないこいつが継げるのはリシュリュー公爵が元々持っていた子爵の方だけだ。
(それすら今回のことでだいぶ怪しくなったがな)
しかし、それに気付かず随分愚かな真似をしたものだ。
(しかし、その愚かさも今までは役にたったが、今後はどうだ……)
正直、利用価値はもうないと思えた。
(……今までのことが明るみに出る前に消すべきか??)
「父さんがずっと兄貴を辺境伯から取り戻すって言ってて、そんなの無理なのに……」
「リシュリュー公爵はこの婚姻に同意していないのか??」
「はい、皇帝陛下の一存で決められたので。だから皇帝陛下にも直談判したらしいけど、聞き入れられなくて……」
(ああ、まだ、まだチャンスはある)
私は笑う。
「アルフレッド、手助けが必要なのだろう??なら、君から私とリシュリュー公爵が話せる場を設けてくれないか??そうすれば、悪いようにはしない」
助けるとは言わない。そのつもりは1ミリもないのだから。
しかし、馬鹿なアルフレッドは嬉しそうに笑う。
「は、はい。もちろんです。父さんも貴方様、この国の小さな太陽である皇太子殿下にでしたら会わないはずがありません」
最大限ごまをするアルフレッドに完璧な笑みを返す。リシュリュー公爵が認めていないならばまだ正攻法での勝機がある。
(マティアスとの婚姻が無効になれば、その後は間違いなくリシュリュー公爵なら皇族で高貴な血を引く私と安心して婚姻させるだろう……二度と恐ろしい過ちが起きないように)
そこまで考えて私は、愛おしいフレデリックのことを考える。
この国でもっとも高貴な血を引く私以外の唯一の存在である美しい小鳥。
その翼を手折り私だけに囀る存在に変えないといけない。
(あんな黒い血が流れる呪われた辺境伯になど渡したりはしない……)
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