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06.公爵の怒り(皇帝陛下視点※小公爵の伯父)
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「どうして、どうしてこんなことになったのですか、陛下。なぜフレデリックが辺境伯に嫁がないといけないのですか!!」
余の執務室で目を血走らせながら喚き散らす男は、ノーマン・リシュリュー公爵、フレデリックの父親であり幼なじみでもある。
フレデリックを辺境伯の褒美に咄嗟に差し出してしまったことで怒り狂って先触れもなくやってきたのだ。
「お前には申し訳ないが病む負えなかったのだ。それにお前のもうひとりの息子のせいでもあるだろう。余の甥が『落伍騎士』になるなど考えてもおらんかったわ」
余だって可愛い甥っ子を追い込みたくなどなかったが、あの状況ではマティアスにフレデリックが嫁ぐことが最善だったと今でも思っている。
「……アルフレッドの件は、調査をしっかり行い陛下にも後ほど報告いたします」
「それなら良い。ノーム。余は其方のことは幼馴染であり親友だと思っている。だから無礼な発言も多少は目を瞑っていることだけは忘れるな」
無礼な友人に目の笑わない笑みを浮かべるがノーマンは気にした様子はなかった。
「わかっておりますが……フレデリックはあの子は特別な存在です。陛下もご理解いただいておりますよね??『落伍騎士』になった以上は手厚い保護が必要だ。一時的に貴方の側妃の『姫』にするとか他にも方法はあったはずです」
「ははは、確かにフレデリックはイライジャに似て可愛い甥だが、余は皇妃一筋ゆえ側妃はむずかしい。大体余は近親相姦は無理じゃ」
フレデリックは、間違いなく美しさ、素養から『姫』であれば当代いち、いや、今までの歴史の中でも類まれなる『傾国の姫』だな、余からみれば可愛い甥でしかないので婚姻はフェイクでもする気はない。
そもそも、『姫』とは『騎士』から求婚されて成り立つとされるが、求婚される存在というのは一朝一夕で作れるものではない。
容姿、性格、素養を認められたものが『姫』としての厳しい教育を幼い頃から受けて『騎士』の心を射止めてはじめて完成する。
だからこそ『落伍騎士』から『姫』になる者はほぼ居ない。
しかし、フレデリックは違う。
フレデリックが『騎士』として『姫』と契約するまでは公爵家には絶えずフレデリックへの求婚が溢れていたし、『騎士』になってからもしつこく何人からか求婚されていたらしい。
フレデリックの『姫』であったゴールド伯爵令息などよりはるかにフレデリックは『騎士』を無意識に惑わせていた。
しかし、それを父親であるノーマンは許さなかった。正確には許せなかったのだ。
今では公爵のノーマンだが、そもそもは辺境伯家の縁戚の子爵家の嫡男に過ぎなかった。
しかし、武の素養が高かったため、『騎士』として出世し、王族近衛隊に団長にまでのぼりつめた。
そして、我々の代で一番の『姫』であった余の弟で第二皇子だったイライジャの護衛として仕えることで愛を育んだ。
その結果、身分差はあったがイライジャがノーマンと結ばれたいと願い、イライジャが公爵として臣下降下する形でノーマンと結ばれたのだ。
ノーマンは今でもイライジャだけを愛し続けているが、イライジャは元々体が弱く、フレデリックを産んですぐに儚くなってしまった。
だから、ノーマンがフレデリックを憎んでいると多くの人間は思っているがそうではない。
フレデリックはイライジャの生き写しであり、さらにそれ以上にフレデリックは『傾国の姫』となる存在だった。
ノーマンは最愛の人の忘れ形見であり、その生き写しのフレデリックが『姫』として他の男に蹂躙されることが許せなかったのだ。だから、ノーマンは敢えてフレデリックを『騎士』として育てることを宣言しフレデリックに厳しい『騎士』としての教育を行った。
フレデリックはとても真面目な性格だったので、努力しストイックな『騎士』に育った。
そして、花嫁である『姫』まで迎えればフレデリックが『姫』として花開くことなどないとノーマンは安心していたのだろう。
しかし、散々吟味して選んだフレデリックの『姫』が、恩義のために引き取った後妻の連れ子である息子と結託して裏切るなどとは思いもしていなかっただろう。
「もちろん、フレデリックが特別な存在なことは理解している。だからこそ辺境伯が望むならと花嫁に出したのだ。あの男以上にフレデリックを愛している者も守れる者も居ないからな」
「しかし、あいつは……あいつはフレデリックを妻にしたなら監禁して口に出すことも憚られるようなことをするはずです。あの狂った目を見れば分かる!!きっとフレデリックの肖像画や彫像が沢山飾ったあるような部屋があったり、自身の体液を何かに混ぜて飲ませるかもしれない」
そう叫ぶノーマンにドン引きする。
「いや、いくらなんでも、マティアスは立派な騎士だ。そんなことはしないだろう」
「しますよ。辺境伯の血がもっとも濃い男が愛する『姫』を手に入れたら絶対します。確実に……」
血走った目で断言するノーマンに、辺境伯一族が呪われた一族とされていることを思い出すが、それを言うならノーマンも同じ血が流れているのだから同族嫌悪にすぎない。
「まぁ、そうだとしても夫婦なら問題ないし、『姫』の契約をするしないはフレデリックが決めることだ。あのフレデリックが簡単に絆されることはないだろうからその間にフレデリックをマティアスから離す方法を考えればよいだろう」
その時の余はフレデリックへのマティアスを執念を完全に見誤っていたことにまだ気づいていなかった。
余の執務室で目を血走らせながら喚き散らす男は、ノーマン・リシュリュー公爵、フレデリックの父親であり幼なじみでもある。
フレデリックを辺境伯の褒美に咄嗟に差し出してしまったことで怒り狂って先触れもなくやってきたのだ。
「お前には申し訳ないが病む負えなかったのだ。それにお前のもうひとりの息子のせいでもあるだろう。余の甥が『落伍騎士』になるなど考えてもおらんかったわ」
余だって可愛い甥っ子を追い込みたくなどなかったが、あの状況ではマティアスにフレデリックが嫁ぐことが最善だったと今でも思っている。
「……アルフレッドの件は、調査をしっかり行い陛下にも後ほど報告いたします」
「それなら良い。ノーム。余は其方のことは幼馴染であり親友だと思っている。だから無礼な発言も多少は目を瞑っていることだけは忘れるな」
無礼な友人に目の笑わない笑みを浮かべるがノーマンは気にした様子はなかった。
「わかっておりますが……フレデリックはあの子は特別な存在です。陛下もご理解いただいておりますよね??『落伍騎士』になった以上は手厚い保護が必要だ。一時的に貴方の側妃の『姫』にするとか他にも方法はあったはずです」
「ははは、確かにフレデリックはイライジャに似て可愛い甥だが、余は皇妃一筋ゆえ側妃はむずかしい。大体余は近親相姦は無理じゃ」
フレデリックは、間違いなく美しさ、素養から『姫』であれば当代いち、いや、今までの歴史の中でも類まれなる『傾国の姫』だな、余からみれば可愛い甥でしかないので婚姻はフェイクでもする気はない。
そもそも、『姫』とは『騎士』から求婚されて成り立つとされるが、求婚される存在というのは一朝一夕で作れるものではない。
容姿、性格、素養を認められたものが『姫』としての厳しい教育を幼い頃から受けて『騎士』の心を射止めてはじめて完成する。
だからこそ『落伍騎士』から『姫』になる者はほぼ居ない。
しかし、フレデリックは違う。
フレデリックが『騎士』として『姫』と契約するまでは公爵家には絶えずフレデリックへの求婚が溢れていたし、『騎士』になってからもしつこく何人からか求婚されていたらしい。
フレデリックの『姫』であったゴールド伯爵令息などよりはるかにフレデリックは『騎士』を無意識に惑わせていた。
しかし、それを父親であるノーマンは許さなかった。正確には許せなかったのだ。
今では公爵のノーマンだが、そもそもは辺境伯家の縁戚の子爵家の嫡男に過ぎなかった。
しかし、武の素養が高かったため、『騎士』として出世し、王族近衛隊に団長にまでのぼりつめた。
そして、我々の代で一番の『姫』であった余の弟で第二皇子だったイライジャの護衛として仕えることで愛を育んだ。
その結果、身分差はあったがイライジャがノーマンと結ばれたいと願い、イライジャが公爵として臣下降下する形でノーマンと結ばれたのだ。
ノーマンは今でもイライジャだけを愛し続けているが、イライジャは元々体が弱く、フレデリックを産んですぐに儚くなってしまった。
だから、ノーマンがフレデリックを憎んでいると多くの人間は思っているがそうではない。
フレデリックはイライジャの生き写しであり、さらにそれ以上にフレデリックは『傾国の姫』となる存在だった。
ノーマンは最愛の人の忘れ形見であり、その生き写しのフレデリックが『姫』として他の男に蹂躙されることが許せなかったのだ。だから、ノーマンは敢えてフレデリックを『騎士』として育てることを宣言しフレデリックに厳しい『騎士』としての教育を行った。
フレデリックはとても真面目な性格だったので、努力しストイックな『騎士』に育った。
そして、花嫁である『姫』まで迎えればフレデリックが『姫』として花開くことなどないとノーマンは安心していたのだろう。
しかし、散々吟味して選んだフレデリックの『姫』が、恩義のために引き取った後妻の連れ子である息子と結託して裏切るなどとは思いもしていなかっただろう。
「もちろん、フレデリックが特別な存在なことは理解している。だからこそ辺境伯が望むならと花嫁に出したのだ。あの男以上にフレデリックを愛している者も守れる者も居ないからな」
「しかし、あいつは……あいつはフレデリックを妻にしたなら監禁して口に出すことも憚られるようなことをするはずです。あの狂った目を見れば分かる!!きっとフレデリックの肖像画や彫像が沢山飾ったあるような部屋があったり、自身の体液を何かに混ぜて飲ませるかもしれない」
そう叫ぶノーマンにドン引きする。
「いや、いくらなんでも、マティアスは立派な騎士だ。そんなことはしないだろう」
「しますよ。辺境伯の血がもっとも濃い男が愛する『姫』を手に入れたら絶対します。確実に……」
血走った目で断言するノーマンに、辺境伯一族が呪われた一族とされていることを思い出すが、それを言うならノーマンも同じ血が流れているのだから同族嫌悪にすぎない。
「まぁ、そうだとしても夫婦なら問題ないし、『姫』の契約をするしないはフレデリックが決めることだ。あのフレデリックが簡単に絆されることはないだろうからその間にフレデリックをマティアスから離す方法を考えればよいだろう」
その時の余はフレデリックへのマティアスを執念を完全に見誤っていたことにまだ気づいていなかった。
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