1 / 13
プロローグ
しおりを挟む
今でもはっきり覚えている。私がまだ幼い頃に出会ったあの素晴らしい存在を。
幼い頃の私は、今と違って自分の本来の煌めきに気付いていなかった。
王子だったけれど、母は私を産んですぐに亡くなり、父は最愛の妻を殺した息子でありながら、あまりに美しすぎる私を憎んでいた。
そして、父である王に疎んじられている私を、周りの兄弟やその他も倣うように、この世でもっとも美しい私に嫌がらせをしていた。
今思えばみんな私の美貌を妬んでいた可哀そうな人達だけど当時の私は自身の美しさを確信していなかったので、酷い目にあわされてとても苦しいし、悲しいと感じていた。
その日も、私は兄弟にいじめられて泣いていた、唯一大好きな玄関に敷かれている、玄関マット代わりでいつも慰めてくれるもふもふの虎の皮も洗濯されているらしくいなくて、私は泣く場所を探して、普段は出歩かない王城内をさまよっていた。
誰からも、あまりの美しさにスルーされていた私の前に、彼は現れた。
「泣いているのか、その……これ」
そう言って、綺麗なハンカチを差し出したのは、とても素敵なもふもふした耳と尻尾を持つショタ獣人だったと記憶しているが、なんの獣人だったかも顔も忘れてしまったが、抱きついてこっそりもふった彼の髪や耳は、愛する虎の皮のと同じくらいもふもふしていて最高だった。
だからかもしれない、まるで玄関マットにするように私は、彼に思いっきり抱き着いて、なんなら体中くんかくんかした。今ならショタにそんなことしたら犯罪だけれどその当時は私もリアルショタだったので許された。
「あ、お、おい、な、んで……」
「さみしいの、いつもひとりぼっちで……私は父上に嫌われているの。きっと醜い子だから……」
「君が醜い??嘘だろう。その……オレが今まで見た中で、一番、綺麗だ」
もふもふの彼はそう言ってくれた。けれどその時の私は自信がなくて、もう一度その子を真正面から見つめて聞いた。
「本当に??私、きれい??」
「何度でも言おう、君は世界一綺麗だ」
「ありがとう」
そう言って微笑んだ私に、そのもふもふの彼は微笑み返した。全くどんな顔か覚えていないけれど砂糖を煮詰めたくらいには甘い顔だった。間違いなく私の美貌によって口角が緩んだのだろう。
その後の記憶は割と曖昧だ。
何故かその日以降左手の薬指のところに獣の歯形の傷がついてしまって、何をしても治らず、美しくないけれど放置していたある日、偶然、呪いの指輪を薬指にはめたため、今は目立たないし、なんならもう傷は消えているかも入れない。
この体験のおかげで、私は、私がとても美しい至高の存在であるということを理解した。
それからは、兄弟や周りの人はみんなは私があまりに美しいからこんな嫌がらせをしているという事実も知ることができて、それ以来何か言われても「美しくて申し訳ない」とか殴る人には「美しすぎて害したいのですね、はぁはぁ、最近は痛いのも割と気持ちいいから殴りたければ殴っていいですよ」と言い続けた結果、私のあまりの美しさと心の広さに、嫌がらせはされなくなった。やはり美しさは裏切らない。真実の前では人とは、無力なのだ。
それを教えてくれた、もふもふは合わせて正義となった。そうもふもふは正義だ。
そして元凶であり、私の美しさをとても憎んでいるはずの父も、前は睨んできたが、最近は何故か私と目が合うだけで高速で目を逸らすようになった。それについて、側近のロイド曰く、
「最愛の人に似た美しい容姿なのに、ナルシストで殴ったりいじめられると喜ぶタイプの変態であるため、見ているだけで死にたくなるそうですよ」
とのこと。つまり私の美しさに父はたじろいでいるということだ。やはり美しさは裏切らない。
自分の美しさひとつで世界は変った。それに気づかせてくれた恩人たるもふもふを探して、私は日夜数多のもふもふを撫でまわしてきた。
しかし、私が美しすぎたのでもふもふ達には逃げられる。それではいけないと鍛えて今ではチーターの獣人にも勝るほどの脚力も身につけた。美しい上に才能があるなんて我ながら恐ろしいね。
そんな、私には今ひとつ大きな悩みがあった、それは……。
幼い頃の私は、今と違って自分の本来の煌めきに気付いていなかった。
王子だったけれど、母は私を産んですぐに亡くなり、父は最愛の妻を殺した息子でありながら、あまりに美しすぎる私を憎んでいた。
そして、父である王に疎んじられている私を、周りの兄弟やその他も倣うように、この世でもっとも美しい私に嫌がらせをしていた。
今思えばみんな私の美貌を妬んでいた可哀そうな人達だけど当時の私は自身の美しさを確信していなかったので、酷い目にあわされてとても苦しいし、悲しいと感じていた。
その日も、私は兄弟にいじめられて泣いていた、唯一大好きな玄関に敷かれている、玄関マット代わりでいつも慰めてくれるもふもふの虎の皮も洗濯されているらしくいなくて、私は泣く場所を探して、普段は出歩かない王城内をさまよっていた。
誰からも、あまりの美しさにスルーされていた私の前に、彼は現れた。
「泣いているのか、その……これ」
そう言って、綺麗なハンカチを差し出したのは、とても素敵なもふもふした耳と尻尾を持つショタ獣人だったと記憶しているが、なんの獣人だったかも顔も忘れてしまったが、抱きついてこっそりもふった彼の髪や耳は、愛する虎の皮のと同じくらいもふもふしていて最高だった。
だからかもしれない、まるで玄関マットにするように私は、彼に思いっきり抱き着いて、なんなら体中くんかくんかした。今ならショタにそんなことしたら犯罪だけれどその当時は私もリアルショタだったので許された。
「あ、お、おい、な、んで……」
「さみしいの、いつもひとりぼっちで……私は父上に嫌われているの。きっと醜い子だから……」
「君が醜い??嘘だろう。その……オレが今まで見た中で、一番、綺麗だ」
もふもふの彼はそう言ってくれた。けれどその時の私は自信がなくて、もう一度その子を真正面から見つめて聞いた。
「本当に??私、きれい??」
「何度でも言おう、君は世界一綺麗だ」
「ありがとう」
そう言って微笑んだ私に、そのもふもふの彼は微笑み返した。全くどんな顔か覚えていないけれど砂糖を煮詰めたくらいには甘い顔だった。間違いなく私の美貌によって口角が緩んだのだろう。
その後の記憶は割と曖昧だ。
何故かその日以降左手の薬指のところに獣の歯形の傷がついてしまって、何をしても治らず、美しくないけれど放置していたある日、偶然、呪いの指輪を薬指にはめたため、今は目立たないし、なんならもう傷は消えているかも入れない。
この体験のおかげで、私は、私がとても美しい至高の存在であるということを理解した。
それからは、兄弟や周りの人はみんなは私があまりに美しいからこんな嫌がらせをしているという事実も知ることができて、それ以来何か言われても「美しくて申し訳ない」とか殴る人には「美しすぎて害したいのですね、はぁはぁ、最近は痛いのも割と気持ちいいから殴りたければ殴っていいですよ」と言い続けた結果、私のあまりの美しさと心の広さに、嫌がらせはされなくなった。やはり美しさは裏切らない。真実の前では人とは、無力なのだ。
それを教えてくれた、もふもふは合わせて正義となった。そうもふもふは正義だ。
そして元凶であり、私の美しさをとても憎んでいるはずの父も、前は睨んできたが、最近は何故か私と目が合うだけで高速で目を逸らすようになった。それについて、側近のロイド曰く、
「最愛の人に似た美しい容姿なのに、ナルシストで殴ったりいじめられると喜ぶタイプの変態であるため、見ているだけで死にたくなるそうですよ」
とのこと。つまり私の美しさに父はたじろいでいるということだ。やはり美しさは裏切らない。
自分の美しさひとつで世界は変った。それに気づかせてくれた恩人たるもふもふを探して、私は日夜数多のもふもふを撫でまわしてきた。
しかし、私が美しすぎたのでもふもふ達には逃げられる。それではいけないと鍛えて今ではチーターの獣人にも勝るほどの脚力も身につけた。美しい上に才能があるなんて我ながら恐ろしいね。
そんな、私には今ひとつ大きな悩みがあった、それは……。
37
お気に入りに追加
809
あなたにおすすめの小説

完結·助けた犬は騎士団長でした
禅
BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。
ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。
しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。
強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ……
※完結まで毎日投稿します

モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中
risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。
任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。
快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。
アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——?
24000字程度の短編です。
※BL(ボーイズラブ)作品です。
この作品は小説家になろうさんでも公開します。

30歳まで独身だったので男と結婚することになった
あかべこ
BL
4年前、酒の席で学生時代からの友人のオリヴァーと「30歳まで独身だったら結婚するか?」と持ちかけた冒険者のエドウィン。そして4年後のオリヴァーの誕生日、エドウィンはその約束の履行を求められてしまう。
キラキラしくて頭いいイケメン貴族×ちょっと薄暗い過去持ち平凡冒険者、の予定

ミルクの出ない牛獣人
斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
「はぁ……」
リュートスは胸に手をおきながら溜息を吐く。服装を変えてなんとか隠してきたものの、五年も片思いを続けていれば膨らみも隠せぬほどになってきた。
最近では同僚に「牛獣人ってベータでもこんなに胸でかいのか?」と聞かれてしまうほど。周りに比較対象がいないのをいいことに「ああ大変なんだ」と流したが、年中胸が張っている牛獣人などほとんどいないだろう。そもそもリュートスのように成体になってもベータでいる者自体が稀だ。
通常、牛獣人は群れで生活するため、単独で王都に出てくることはほぼない。あっても買い出し程度で棲み着くことはない。そんな種族である牛獣人のリュートスが王都にいる理由はベータであることと関係していた。

モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた
マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。
主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。
しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。
平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。
タイトルを変えました。
前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。
急に変えてしまい、すみません。

婚約破棄された悪役令息は従者に溺愛される
田中
BL
BLゲームの悪役令息であるリアン・ヒスコックに転生してしまった俺は、婚約者である第二王子から断罪されるのを待っていた!
なぜなら断罪が領地で療養という軽い処置だから。
婚約破棄をされたリアンは従者のテオと共に領地の屋敷で暮らすことになるが何気ないリアンの一言で、テオがリアンにぐいぐい迫ってきてーー?!
従者×悪役令息

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる