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38.現れたのは……(ローズベル視点)
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私が、バビロンと呼ばれた私がここに匿われてしばらくたった時にそれは起こった。
いつものように平民を装って必要最低限の行動をしていた私の背後に明らかにつけている気配がしたのだ。正直スパイのようなことをしてきたのでそれ自体は慣れている。
後ろ暗いことをしている人間を追ってくるということは、間違いなく敵だろう。そう考えて私は慣れた足取りでそれを撒いたはずだった。
「……何よこれ」
家、今潜伏している場所について私は思わず呻くように声を上げていた。そこには確かに人が侵入した形跡が残っていた。
このような身の上、決して表にできないことをしてきたからには、警戒は怠らないでいる。だからもし扉を開いたりすれば落ちるようにこっそりと仕掛けた物が床に落ちていた。それだけではない、明らかに外出前と一部の家具の配置も変わっている。
(私の考えが正しければ、カメラか盗聴器が仕込まれたかもしれないわね)
そいつらの正体は分からないが、あまり私にとって良い状態ではない。ただ、ここで騒ぐのもあまり得策ではない。
(とりあえず、普通のふりをしながら組織に連絡を取らないと。けれど普通にとれば筒抜けになる……)
咄嗟に私は考える。どうすることが一番自身のことを守れるかと。挿げ替えのきく私が失態を犯したらその時はただ死ぬだけになる。それが分かっているので必死に頭を捻る。
(どうすれば……)
『大丈夫、何があっても君を守ってみせる』
こんな時だからかもしれない。あの人が浮かんだ。特別な人、とてもとても美しいその人は私の憧れ。
ミッションの都合上、性別を偽ってリリアと名乗っていたその御方の本当の名はユリシーズ様、美しい百合のようなその方に私はひと目で恋をした。けれど、所詮、野花の恋がは叶うはずもない。
そう考えたら、頬を涙が一筋落ちていく。
(とりあえず一旦家を出よう)
私は、部屋を特になんの違和感もなく出ようとした。……その時。
ガバッ
と後ろから私は腕をとられた。あまりのことに驚いたが、すぐに悟る。そいつらは家の中にいたのだと。
「離せ!!」
護身用に持っていたスプレーをその人物に向かって吹き替えた。しかし、そいつはビクともしない。
「残念でした。我々にはその手のものは効かない」
声の主は屈強な男だった。蛇のようではないがなんとも形容しがたい雰囲気がある。それは紛れもない上位種を前にしたような感覚で産毛が総毛立つ。ただ、蛇のようというのとは彼等は違うようだ。
「……いきなり何よ。私はこんなことされるいわれはないわ」
「残念ながら、それについては我々も君も決めることはできない。ただ、君は我々についてこないといけない、そうするように上から命令されている」
「つまり拒否権はないということかしら。ならば……」
私は咄嗟にカプセルを口に含んでそれを噛んだ、毒薬だった。
「……毒か!!」
「残念ながら私は、何もしゃべれないのよ」
そのまま意識を失って、私は死ぬ……そう、死ぬのだ。
(結局、私は何もできなかったのかしら)
ルーエリンの件も、結局私はただの道化を演じただけで、実際にルーエリンに薬を盛ったのはユリシーズ様だった。それでもあの方は私に手柄を与えてくれた。
(いつも優しい瞳で私を見つめてくれた。それが、それだけが……)
全てが暗い闇に沈んでいく、そう思ったしそう願った。それなのに……。
「ここは……」
次に目覚めたのは白い部屋、きっと病院の一室のようだった。
「残念ながら、死んでもらう訳にはいかない」
いつの間に現れた男が、そう告げた。とても凛としたけれどあたたかみのある声だった。
いつものように平民を装って必要最低限の行動をしていた私の背後に明らかにつけている気配がしたのだ。正直スパイのようなことをしてきたのでそれ自体は慣れている。
後ろ暗いことをしている人間を追ってくるということは、間違いなく敵だろう。そう考えて私は慣れた足取りでそれを撒いたはずだった。
「……何よこれ」
家、今潜伏している場所について私は思わず呻くように声を上げていた。そこには確かに人が侵入した形跡が残っていた。
このような身の上、決して表にできないことをしてきたからには、警戒は怠らないでいる。だからもし扉を開いたりすれば落ちるようにこっそりと仕掛けた物が床に落ちていた。それだけではない、明らかに外出前と一部の家具の配置も変わっている。
(私の考えが正しければ、カメラか盗聴器が仕込まれたかもしれないわね)
そいつらの正体は分からないが、あまり私にとって良い状態ではない。ただ、ここで騒ぐのもあまり得策ではない。
(とりあえず、普通のふりをしながら組織に連絡を取らないと。けれど普通にとれば筒抜けになる……)
咄嗟に私は考える。どうすることが一番自身のことを守れるかと。挿げ替えのきく私が失態を犯したらその時はただ死ぬだけになる。それが分かっているので必死に頭を捻る。
(どうすれば……)
『大丈夫、何があっても君を守ってみせる』
こんな時だからかもしれない。あの人が浮かんだ。特別な人、とてもとても美しいその人は私の憧れ。
ミッションの都合上、性別を偽ってリリアと名乗っていたその御方の本当の名はユリシーズ様、美しい百合のようなその方に私はひと目で恋をした。けれど、所詮、野花の恋がは叶うはずもない。
そう考えたら、頬を涙が一筋落ちていく。
(とりあえず一旦家を出よう)
私は、部屋を特になんの違和感もなく出ようとした。……その時。
ガバッ
と後ろから私は腕をとられた。あまりのことに驚いたが、すぐに悟る。そいつらは家の中にいたのだと。
「離せ!!」
護身用に持っていたスプレーをその人物に向かって吹き替えた。しかし、そいつはビクともしない。
「残念でした。我々にはその手のものは効かない」
声の主は屈強な男だった。蛇のようではないがなんとも形容しがたい雰囲気がある。それは紛れもない上位種を前にしたような感覚で産毛が総毛立つ。ただ、蛇のようというのとは彼等は違うようだ。
「……いきなり何よ。私はこんなことされるいわれはないわ」
「残念ながら、それについては我々も君も決めることはできない。ただ、君は我々についてこないといけない、そうするように上から命令されている」
「つまり拒否権はないということかしら。ならば……」
私は咄嗟にカプセルを口に含んでそれを噛んだ、毒薬だった。
「……毒か!!」
「残念ながら私は、何もしゃべれないのよ」
そのまま意識を失って、私は死ぬ……そう、死ぬのだ。
(結局、私は何もできなかったのかしら)
ルーエリンの件も、結局私はただの道化を演じただけで、実際にルーエリンに薬を盛ったのはユリシーズ様だった。それでもあの方は私に手柄を与えてくれた。
(いつも優しい瞳で私を見つめてくれた。それが、それだけが……)
全てが暗い闇に沈んでいく、そう思ったしそう願った。それなのに……。
「ここは……」
次に目覚めたのは白い部屋、きっと病院の一室のようだった。
「残念ながら、死んでもらう訳にはいかない」
いつの間に現れた男が、そう告げた。とても凛としたけれどあたたかみのある声だった。
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