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閑話:なぜ賢竜帝様の番は壊れてしまったのだろう01

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ヴェリテヴェリテヴェリテヴェリテヴェリテヴェリテヴェリテヴェリテヴェリテヴェリテヴェリテヴェリテヴェリテヴェリテヴェリテヴェリテヴェリテヴェリテヴェリテ。

何度もつぶやいた。

ヴェリテヴェリテヴェリテヴェリテヴェリテヴェリテヴェリテヴェリテヴェリテヴェリテヴェリテヴェリテヴェリテヴェリテヴェリテヴェリテヴェリテ。

どうしてもこの真っ暗い闇が怖くて仕方なかったから。

そうして、叫び出したかった。どうか誰か『ヴェリテ』を明るみにしてほしい、その時初めて僕はもっとも愛した君に刃を向けることができるのだから。

***********************************************************************

生まれた時から、僕の全ては決まっていた。

肥沃な土地に恵まれた、フェルカド王国の国王と正妃の長男に生まれた僕は将来この穏やかな王国の国王となるべく育てられた。

最高の教育に、最高の品を与えられて、それらに特に努力しなくても及第点を取れる程度には才能に恵まれていた。

容姿も母親から引き継いだ美しい銀髪と、ピジョンブラッドと称えられる赤い瞳と中世的で整った顔立ちに、多くの女性の心を掴むことが出来ていたと言われている。

けれど、その自覚をする前に僕には婚約者が出来た。

『初めまして、殿下。私はリリア・ラミア・メグレズと申します」

完全なカーテシーをするリリアに僕はひと目で恋をした。

彼女は僕と同じ銀髪だが、美しいサファイアの瞳をした少女だった。

さらに、彼女はとても優秀で実際僕よりも勉強もなにもかもが出来た。

ここで、人によっては彼女を妬むのかもしれないが、僕は彼女を妬んだりすることはなかった、何故なら……。

「リリア様、このような形では完璧とはいえません」

「……はい」

パシッと定規のようなもので体を叩かれた音が響いた。

妃教育で彼女はとても厳しくされていた。それは体罰をも辞さないもので見ていて辛くなった。

僕は激しいショックを受けてすぐさま、妃教育の責任を持つ母に抗議をした。

「母上、体罰はいけません。リリアが可哀そうです」

しかし、母は僕をまっすぐ見て首を振る。

「私もそうでしたが、王妃になるものには厳しい教育が必要です。そして、それを乗り越えられない者は王妃にはなれないのです」

「……そんな。リリアはとても優秀で……」

「その優秀なリリアでさぇも努力をしないといけないのが妃教育です。それを止めろというのは将来王になる貴方の言葉でもできません。それは、リリアに王妃としての資質がないというようなものになりますから」

凛と言い放つ母の姿には国母としての矜持を感じた。

ならば、僕がすべきことはひとつだけだ。

「分かりました。妃教育には口出しはしませんが、努力を怠らないリリアを労う時間やプレゼント、手紙をその分、僕は準備しましょう。うまくいかない時は必ずありますがふたりで乗り越えていけるように王になるべく、僕も今まで以上に勉学に励みます」

リリアは誰よりも努力して、国母たる淑女を目指していた。だから、僕自身も努力し、より良い王になりたいと夢見るようになった。

日に日に厳しくなる妃教育に、気の強い彼女がひとり涙している日には、僕はさりげなく出会ったふりをしてさりげなく慰めた。そして、彼女の誕生日や、パーティーの日は必ずプレゼントを送りそうじゃなくても、少し疲れただろうと思う時は彼女が好きな店のオススメのお茶や、お菓子を送った。

激しさはないが、お互いに支え合える関係をゆっくり育んでいたはずだ。

「ルー殿下、私は貴方の婚約者になれて幸せでございます」

そう言って微笑むリリアを私は、誰よりも愛おしく思っていた。その全てを守るためなら何でもできると自負するほどに。

宰相の次男で側近のグランバードはよく呆れて『ヤンデレ殿下』と僕を呼ぶほどに彼女へ重い恋心を抱いていた。

リリアの笑顔のためならなんでもできたし、そのために彼女が望む良き王になろうと努力し、優秀な成績を取れるようになった。

全ては愛するリリアと、比類なき王妃になる彼女と並び立ちたかった、それだけだ。

それほど、僕はリリアに夢中だった。

だから、リリアが他の男と話すだけで嫉妬したり、パーティーでリリアが他の男と踊ろうとするのを阻止したりはしていた。

婚約者としてそれくらいは普通だと思う。なんせ僕は本当は監禁して、彼女の全てを管理したくらいには彼女が好きで好きでたまらないのを我慢していたから。

むしろ、彼女以外の女性は全て同じに見えるといったら、グランバードに「こわっ、それ眼球取り換えた方がいいですにゃ」とドン引かれたりしたけれど、僕にとってリリアとはそれほど大切な人だったのだ。

その幸せが永遠に続くと、僕は信じていた。そのためなら何でもできると思っていた。
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