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最終章:さようなら、れんごくの国と不幸令嬢

131.月の神と海の国の公爵と不幸令嬢02

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「では、乗り越えたならそれはまた別のものになるとでもいうのか??」

ヨミの中で何か引っかかりがとれるような気がしてそれを問うと、ヴァーミリオン公爵は頷いて、そしてゆっくりと言葉を紡いだ。

「私達の国では昔から、ある言葉がある。「太陽狂い」と同じくらいポピュラーに国民が知りながらも実際それはおとぎ話のようだとも思われている。それを「海よりも深い愛パーフェクトラブ」と呼ぶのですが、やっと私はこれが何かを理解できました」

確信の籠った言葉だった。ヨミはヴァーミリオン公爵を静かに見据える。目の前の男からは確かに呪いのような気配はしない。代わりにまるで、包み込むようなあたたかい何かを感じた。

「多分ですが、「太陽狂い」の者が、最愛の人と結ばれることは稀なのでしょう。私はとても運がよかったのに、彼女を、彼女が殺されていまった、私が気づければ今日も彼女は微笑んでいて、レミリアはあんなに悲しい思いをしないですんだ。全ては私が悪いのです。そして、彼女が亡くなり、本来は守り愛し慈しむべきだったレミリアを自身の狂気への恐れから遠ざけた。いくらあの女を監視するためとはいえ、それは許されない行為でした」

「……それで、貴方はレミリア姫に謝罪でもされたいというのですか??」

思ったより冷たい声色でヨミははき捨てていた。この男は何かわかったようにいっているが、結局レミリアに謝れば全てがすむと思っているような気がしたのだ。しかし、ヴァーミリオン公爵は首を振った。

「私の行いはきっと娘に永遠に許されないでしょう。もし許される日が来るとしてもそれはレミリアが決めることで私が決められるものではありません。ならば、私に出来ることは、レミリアを誰よりも愛してくれる人、レミリアが愛する人の元へいけるように手助けをする、それだけです。たとえそれが、命を懸けることになっても娘がずっと笑えるように今度こそ私は間違えない」

その言葉を聞いた時、ヨミはアトラス王国の者だけが持つ感覚。自身の私利私欲を超えて真に愛することを学んだ時、野蛮で歪んだ恋も愛も全てが形を変えて太陽とはまた違う穏やかで全てを包み込んでいくような深い愛の感情が芽生えることがあるということを思い出した。

そして、それはヨミがルーファスに抱いている親心に似ている、その愛はただ穏やかな無償の愛。

(何故彼が、俺と一緒にこの空間に来たのか分かった気がするな……)

それはまさに親心を持つものの魂が共鳴したのだ。そう、愛する子供たちを今度こそ守るために、ふたりの父親は暗闇の中で我が子を探して歩きだしたのだ。
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