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第六章:集う運命

122.月の王子と側近と不幸令嬢

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「やはり仕掛けがあったか」

ルーファスは、その光景を遠隔でレミリアとヨミと眺めながら言った。

「……あの国が何も隠れ家に仕掛けていないとは思いませんでしたからね。しかし、あそこまで古代の魔法の道具が仕掛けてあるとは……」

「……皆さん大丈夫かしら……」

レミリアは自分のために、危険に飛び込む彼等を心配そうに見つめた。

「大丈夫だよ。何かあれば僕らが魔法で力を貸すから」

そんなレミリアを落ち着かせるように、ルーファスはその肩を優しく抱き寄せた。その体からぬくもりが伝わることはないが、とても心強かった。

レミリアには何もできず見守るだけしかできないことは分かっていたが、とても歯がゆい気持ちだった。

カールとクレメントの率いる部隊は、罠を躱しながら奥へ進んで行っている。そうして、じわじわとクリストファーを追い詰めている。レミリアには『太陽狂い』であるというクリストファーが何故そこまで自身に固執しているのかがいまだによくわからなかった。

レミリアの父は、『太陽狂い』でそれ故にレミリアを遠ざけていたとうことは以前、ルーファス達に聞いたけれど、それでもあの父が自分を愛していたのかはわからない。ただ、分かるのはそこに仮に愛が存在しても愛というにはそれは歪んでいるということだけだ。

レミリアにとって、クリストファーは確かに婚約者で将来支え合うはずの人だった。けれど、それだけだ。それすらもレミリアが自殺を図った日に壊れた。つまりレミリアからすれば既にクリストファーとの関係は終わっている。

(それなのに、何故今更、私を彼は欲するのだろう……元々愛しているとも思えない関係だったのに……)

そう考えていた時、ついにカールとクレメントがクリストファーとレミリアの体があるだろうと思われる最奥までたどり着いていた。

「ついに……もうすぐレミリアの体が戻ってくるはずだ」

安堵に満ちた声でルーファスが囁くのと同時に、画面が明らかに暗くなったのが分かった。

「これは??」

「まさか……」

ヨミが青い顔をしながら、その画面を食い入るように見つめた。そして、ルーファスに神妙な顔で告げた。

「第2王子殿にとりついている者が、例のあの男の魂が外にでて悪霊のように悪さをしたのでしょう……ここは」

ヨミが何か伝えようとした時だった。

「あああああああ!!」

画面から誰かが叫ぶ声がした。その男の声が誰のものか判別がつかなかったが、闇に包まれた画面の先で何かが起きたようだった。
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