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第五章:真実の断片と
86.太陽の皇太子と不幸令嬢05
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「カール殿下、かの王子の行方は掴めていますか??」
「その件について、実はクリストファー王子の居場所についてリークがあり、現在確認に向かわせている」
カールがそう答えた時、僅かに表情が歪んだのがレミリアには分かった。
「何か気になることがあったのですか??」
「ああ、いや、大したことじゃないが……アトラス王国は王族同士の仲があまり良くないのかと思ってな」
カールの言葉の意図をレミリアは理解できなかった。しかし、それを聞いたルーファスが訝し気に眉を寄せた。
「リークしてきた人間の信用がおけないということですか」
「そうではない。むしろとても信頼がおける。なぜならその人物はアトラス王国の王族を憎んでいるからな……」
そう答えたカールは悲し気に見えた。その理由をレミリアは分からなかったが、それでも自身の体の手がかりをくれた人物には感謝していたので、もし全てが終わった後にはお礼をしたいと漠然と考えた。
「なるほど。一旦はその情報は信じてよさそうですね」
「ああ。こちらについてはまた追って連絡しよう。もうひとつ、アトラス王国への制裁についてだがムーンティア王国が攻撃されている当事国だ。だからその措置については希望を確認したい」
カールの言葉に、ヨミがルーファスの代わりに話はじめた。
「その件について、カール殿下にお願いがございます」
「なんだ」
「かの国は、サンソレイユ帝国の同盟国である我が国をなぜか攻撃している。その理由についてまずかの国へ確認を行い、しかるべき賠償責任をとらせたいのです。しかし、ムーンティア王国は武力の面では現在無力です。なのでサンソレイユ帝国のお力をお借りしたい」
サラサラと答えたヨミに、カールは頷いた。
「元から、そのつもりだ。しかし、アトラス王国は太陽が絡むと問題ばかり起こすな……」
その言葉にルーファスの表情が歪んだ。それが呪いのせいであることはカールも理解しているが、その呪いの根源がムーンティア王国であることをきっと今のサンソレイユ帝国の皇族は知らないだろう。
(ヨミのかけた呪いが原因だというべきか……いや。今は結束すべき時なのに迂闊なことは口にすべきではない)
カールの前世である、皇帝はその件について不問としてはくれた。しかしそれはあくまで前世であり、現世のカールがそれを許してくれる保証はないしいらぬ諍いを呼ぶことが分かっていた。だから、当たり障りなく答えることにする。
「そうですね。彼等はずっと学ばない……いや、狂気とは学んでどうにかなるものではないでしょうが……」
「その件について、実はクリストファー王子の居場所についてリークがあり、現在確認に向かわせている」
カールがそう答えた時、僅かに表情が歪んだのがレミリアには分かった。
「何か気になることがあったのですか??」
「ああ、いや、大したことじゃないが……アトラス王国は王族同士の仲があまり良くないのかと思ってな」
カールの言葉の意図をレミリアは理解できなかった。しかし、それを聞いたルーファスが訝し気に眉を寄せた。
「リークしてきた人間の信用がおけないということですか」
「そうではない。むしろとても信頼がおける。なぜならその人物はアトラス王国の王族を憎んでいるからな……」
そう答えたカールは悲し気に見えた。その理由をレミリアは分からなかったが、それでも自身の体の手がかりをくれた人物には感謝していたので、もし全てが終わった後にはお礼をしたいと漠然と考えた。
「なるほど。一旦はその情報は信じてよさそうですね」
「ああ。こちらについてはまた追って連絡しよう。もうひとつ、アトラス王国への制裁についてだがムーンティア王国が攻撃されている当事国だ。だからその措置については希望を確認したい」
カールの言葉に、ヨミがルーファスの代わりに話はじめた。
「その件について、カール殿下にお願いがございます」
「なんだ」
「かの国は、サンソレイユ帝国の同盟国である我が国をなぜか攻撃している。その理由についてまずかの国へ確認を行い、しかるべき賠償責任をとらせたいのです。しかし、ムーンティア王国は武力の面では現在無力です。なのでサンソレイユ帝国のお力をお借りしたい」
サラサラと答えたヨミに、カールは頷いた。
「元から、そのつもりだ。しかし、アトラス王国は太陽が絡むと問題ばかり起こすな……」
その言葉にルーファスの表情が歪んだ。それが呪いのせいであることはカールも理解しているが、その呪いの根源がムーンティア王国であることをきっと今のサンソレイユ帝国の皇族は知らないだろう。
(ヨミのかけた呪いが原因だというべきか……いや。今は結束すべき時なのに迂闊なことは口にすべきではない)
カールの前世である、皇帝はその件について不問としてはくれた。しかしそれはあくまで前世であり、現世のカールがそれを許してくれる保証はないしいらぬ諍いを呼ぶことが分かっていた。だから、当たり障りなく答えることにする。
「そうですね。彼等はずっと学ばない……いや、狂気とは学んでどうにかなるものではないでしょうが……」
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