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第五章:真実の断片と

82.太陽の皇太子と不幸令嬢

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「初めまして、レミリア嬢」

そう声をかけてきた人を見た瞬間だった。レミリアの中にあった何かが溶けたのは。その人はレミリアと同じ黒い髪に黄金の瞳、そして浅黒い健康的な肌の色をしたその男性、サンソレイユ帝国の皇太子であるカールに出会った瞬間、レミリアはただ立ち尽くした。

その人をレミリアは知らない。会ったこともない。それなのにいままでずっとレミリアが抱えていた絶望を払拭してくれるようなそんなものをその人は持っていた。

(間違いない、この人は私の血のつながりのある人だ)

その顔立ちが、髪の色が、目の色が、全てがレミリアにどこか似ている。今までの家族、母親以外の家族に感じたことのないその親近感に思わず涙が頬を伝っていった。

「貴方は……サンソレイユ帝国の方ですね」

「そんな他人行儀にしないでほしい。私はサンソレイユ帝国の皇太子カール。君の従兄弟だ」

まるで太陽というような微笑みだった。その微笑みにレミリアも思わず笑いかける。それはいままでの無理やりの笑顔ではない本当の笑顔だった。

(ふたつの太陽……)

その様子を見つめていたルーファスは憧憬にも似た気持ちを抱いた。自分が持ちえない明るさがそこにはあった。太陽のような裏表のない笑顔。

「カール殿下、お会いできてとても光栄でございます」

「だから、他人行儀はやめておくれ。君は私達の家族だ」

「……ありがとうございます」

そう言って、何の他意もなくカールはレミリアを抱きしめた。あたたかい手だった。とてもあたたかいそれは陽だまりのようでレミリアは一瞬躊躇したが、最終的にその背を抱きしめた。

ー離れ離れだった家族の再会。

まさにそんな風にルーファスには思えた。何故ならカールは、レミーナの父親の太陽の国の皇帝の生まれ変わりだったから。

(今生の父からは愛を貰えなかったレミリアが、前世の父から愛を貰う、ひどく悲しい話だ)

今生でのふたりは父娘ではなく、従兄弟だ。それでもサンソレイユ帝国では大切な家族としてレミリアは体を取り戻せばかの国で大切にされること、健全な幸せを掴めるだろうことがその時ルーファスには分かってしまった。

ルーファスの側にいるよりも輝くだろうレミリアのことを想像していた。

(それでも僕はレミリアを……)

完全なエゴだと分かっている。それでも体を取り戻したとしてもレミリアを手放すことがルーファスには難しいと感じた。

「ルーファス殿下、此度は我々の大切な家族であるレミリアを保護頂き感謝している」
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