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49.今度こそお役に立ちます(ジャック視点)
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俺が幼い頃、ひとりで泣いていた。何をやっても兄弟で一番、出来が悪かった。それが辛くって仕方がなかった。
あの日も庭で、お茶会が開かれていたが、兄弟につまはじきにされてひとりで隠れて泣いていた。
「どうしたの?」
そんな俺に声をかけてくれた子がいた。真っ黒い髪に真っ赤な瞳のとても可愛らしい男の子。
「なんでもない……」
「泣いてるのになんでもないわけないよ。どこか痛いの?」
その小さな白い手が俺に触れる。あたたかい手だった。それになんだか安心して、俺は兄弟のことを今の状況を話していた。するとその子が綺麗な赤い瞳に涙をためる。
「わかるよ、ぼくもお兄たんと比べられるのつらいもん。それはないちゃうよ」
と言った。「泣くな」と言われたことはあったけれど「泣いてしまう」と肯定してくれたのは初めてだった。それがなんだか嬉しかった。
「だから、僕しかいないからいっぱいないていいよ」
そう言って、自分も泣きながら、笑った綺麗な顔に胸を撃ち抜かれた。間違いなく初恋だった。
それが俺とルーク殿下の出会いであり、俺の一生を決めた出来事だった。
俺は公爵様のお屋敷で自身の無力さに打ちのめされている。ルーク殿下が俺を信用して付いてきて欲しいと言ったのに、魔法により眠ってしまい結果的にお役に立つことができなかった。
ちなみに、王太子殿下の元へ行ったルーク殿下は後ほど、ガルシア公爵様と無事に帰ってきた。ガルシア公爵様、救国の英雄で王弟殿下であらせられる御方に俺が敵うことはない。それでもルーク殿下のただお役に立ちたいその一心でここまで来たのに本当にダメだなと落ち込む。
「ジャック殿」
そこには、この屋敷の使用人で、ガルシア公爵様から絶大な信用を得ているクリスが立っていた。この男については経歴はもちろん全てが不明らしいが、優秀でかつルーク殿下に対して恋愛感情を持つことがないという理由からここに来てからの、側仕えもされていた。
「何か用か?」
「貴方の力が必要です、至急こちらへきてください」
クリスに促されていくと、通信石越しにガルシア公爵様が映し出されていた。
「ガルシア公爵様、馳せ参じました」
「ご苦労。ジャック。君を呼んだのはほかでもない。ルークが居なくなった」
突然言われた言葉に思わず目を見開く。ガルシア公爵様が同伴されていたのでそのような事態は起こらないと思っていた。けれど、確かに公爵様ははっきりとおっしゃった。
その顔はとても険しく状況が思わしくないことがすぐにわかる。
「……それで、自分に何ができますか?」
「ルークには居場所や行動が常に分かるように、高感度の魔導追跡装置が埋め込まれている。しかし、その反応がある地点で消えた。ジャックなら分かると思う。魔導装置系の反応が消える場所がこの国の中のどこにあるのか」
「まほろばの森ですね」
色々問題発言があった気がしたがそれは一旦置いておこう。この国では大半のことを魔法で行う。しかし、その魔法が滅びる、つまり使えない場所が存在する。それこそが「まほろばの森」である。ありとあらゆる魔法が通用しないそこでは身体能力の高さが要求される。
「そうだ。僕達も大至急ルーク救出へ向かうが……」
そこで珍しくガルシア公爵様が言いよどむ。正直、公爵様ならその身体能力から単騎でも「まほろばの森」を制覇できるはずだ。
「本来であればテレポートで一瞬で飛べるが、今ルークの安全のために防衛魔法と位置特定魔法を同時掛けしているのでテレポートができない」
「……ガルシア公爵様「まほろばの森」の内部に干渉する魔法は使えないはずでは……」
それは当然、「まほろばの森」内部にいるルーク殿下にも掛けることはできないはずだ。しかし……。
「「まほろばの森」の場合、魔導装置は使えないが、直接的な魔法ならば通常の倍掛の力で掛けば、僕は魔法を使える」
ガルシア公爵様だから出来ることで常人には難しいことは間違いない。少なくとも俺には無理だ。あまり考えると精神的にダメージを受けるので一旦は忘れることにした。
「そこで、「まほろばの森」に僕らより近い場所に居るジャック、君にルークの位置情報を送るので救出を手伝ってほしい。時は一刻を争う」
殿下に命の危機が迫っているということか。ならば俺は……。
「わかりました。必ずや殿下を保護いたします」
「ありがとう。これでルークの膀胱が守られる」
何かすごく微妙な発言を聞いたような気がしたが、割といつものことなのと、俺自身の汚名を返上する機会を逃すつもりはなかった。
あの日も庭で、お茶会が開かれていたが、兄弟につまはじきにされてひとりで隠れて泣いていた。
「どうしたの?」
そんな俺に声をかけてくれた子がいた。真っ黒い髪に真っ赤な瞳のとても可愛らしい男の子。
「なんでもない……」
「泣いてるのになんでもないわけないよ。どこか痛いの?」
その小さな白い手が俺に触れる。あたたかい手だった。それになんだか安心して、俺は兄弟のことを今の状況を話していた。するとその子が綺麗な赤い瞳に涙をためる。
「わかるよ、ぼくもお兄たんと比べられるのつらいもん。それはないちゃうよ」
と言った。「泣くな」と言われたことはあったけれど「泣いてしまう」と肯定してくれたのは初めてだった。それがなんだか嬉しかった。
「だから、僕しかいないからいっぱいないていいよ」
そう言って、自分も泣きながら、笑った綺麗な顔に胸を撃ち抜かれた。間違いなく初恋だった。
それが俺とルーク殿下の出会いであり、俺の一生を決めた出来事だった。
俺は公爵様のお屋敷で自身の無力さに打ちのめされている。ルーク殿下が俺を信用して付いてきて欲しいと言ったのに、魔法により眠ってしまい結果的にお役に立つことができなかった。
ちなみに、王太子殿下の元へ行ったルーク殿下は後ほど、ガルシア公爵様と無事に帰ってきた。ガルシア公爵様、救国の英雄で王弟殿下であらせられる御方に俺が敵うことはない。それでもルーク殿下のただお役に立ちたいその一心でここまで来たのに本当にダメだなと落ち込む。
「ジャック殿」
そこには、この屋敷の使用人で、ガルシア公爵様から絶大な信用を得ているクリスが立っていた。この男については経歴はもちろん全てが不明らしいが、優秀でかつルーク殿下に対して恋愛感情を持つことがないという理由からここに来てからの、側仕えもされていた。
「何か用か?」
「貴方の力が必要です、至急こちらへきてください」
クリスに促されていくと、通信石越しにガルシア公爵様が映し出されていた。
「ガルシア公爵様、馳せ参じました」
「ご苦労。ジャック。君を呼んだのはほかでもない。ルークが居なくなった」
突然言われた言葉に思わず目を見開く。ガルシア公爵様が同伴されていたのでそのような事態は起こらないと思っていた。けれど、確かに公爵様ははっきりとおっしゃった。
その顔はとても険しく状況が思わしくないことがすぐにわかる。
「……それで、自分に何ができますか?」
「ルークには居場所や行動が常に分かるように、高感度の魔導追跡装置が埋め込まれている。しかし、その反応がある地点で消えた。ジャックなら分かると思う。魔導装置系の反応が消える場所がこの国の中のどこにあるのか」
「まほろばの森ですね」
色々問題発言があった気がしたがそれは一旦置いておこう。この国では大半のことを魔法で行う。しかし、その魔法が滅びる、つまり使えない場所が存在する。それこそが「まほろばの森」である。ありとあらゆる魔法が通用しないそこでは身体能力の高さが要求される。
「そうだ。僕達も大至急ルーク救出へ向かうが……」
そこで珍しくガルシア公爵様が言いよどむ。正直、公爵様ならその身体能力から単騎でも「まほろばの森」を制覇できるはずだ。
「本来であればテレポートで一瞬で飛べるが、今ルークの安全のために防衛魔法と位置特定魔法を同時掛けしているのでテレポートができない」
「……ガルシア公爵様「まほろばの森」の内部に干渉する魔法は使えないはずでは……」
それは当然、「まほろばの森」内部にいるルーク殿下にも掛けることはできないはずだ。しかし……。
「「まほろばの森」の場合、魔導装置は使えないが、直接的な魔法ならば通常の倍掛の力で掛けば、僕は魔法を使える」
ガルシア公爵様だから出来ることで常人には難しいことは間違いない。少なくとも俺には無理だ。あまり考えると精神的にダメージを受けるので一旦は忘れることにした。
「そこで、「まほろばの森」に僕らより近い場所に居るジャック、君にルークの位置情報を送るので救出を手伝ってほしい。時は一刻を争う」
殿下に命の危機が迫っているということか。ならば俺は……。
「わかりました。必ずや殿下を保護いたします」
「ありがとう。これでルークの膀胱が守られる」
何かすごく微妙な発言を聞いたような気がしたが、割といつものことなのと、俺自身の汚名を返上する機会を逃すつもりはなかった。
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