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34.かゆきも日記とかいうホラー展開
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鳩の名前と今後について考えていた時、ふっと大切なことを忘れていたことに気付いた。それは奇しくも生理現象により思い出された。具体的には尿意である。
「やばっ、あの個室トイレか確認しないと」
鳩が肩の上に乗ったままだけど、まぁトイレに鳥類持ち込んでも別に問題ないよねというのと、どこかに置いていく余裕がないくらい状況が切羽つまっていたのでそのまま例の個室へ向かった。
個室は想像通り、洗面所とトイレと浴室だった。
ただ、昨日連れていかれたような最新式ではなく、結構古いものだった。特に洗面所というかドレッサーがあるのだけれど、それがとても豪奢すぎるので旧時代のものだとひと目でわかった。
とりあえず、僕は人間としての尊厳のため、用を足した。鳩が肩の上でそれを凝視している。
「人間のおしっこしているところが不思議なんでちゅか?」
とか赤ちゃん言葉で鳩に話しかけた。人に見られたら憤死する場面だけど、僕は動物が好きなので動物には赤ちゃん言葉で話しかける。可愛いは正義だからね。
鳩はその言葉にクルクル鳴きながらスリスリしてくる。可愛いな。
そうして、ひとつ気づいたのがここ愛妾を閉じ込めていた、もとい住まわせていたらしい屋敷なのに男性トイレ仕様だった。
この部屋自体かなり豪奢な部屋なんで主寝室だと思われる。だとしたら、愛妾って男性だったのかもしれないというBL世界あるあるな事実に順調に正気度を減らした僕は、とりあえずすっきりして、人間としての尊厳がギリギリ守られた安堵感から、再度部屋を注意深く見渡してみた。
すると突然、今までおとなしかった鳩が飛んでしまった。
「だめでちゅよ、戻っておいで」
赤ちゃん言葉で優しく話しかけると、鳩は戻ってきた。賢いね。
しかも鳩は何か鍵のようなものを咥えていた。これを持ってきてくれたらしい。そう考えるといよいよこの子賢さがカンストしているやんとテンションが上がりながら鍵をとりあえず受け取った。
「ありがとう、偉いでちゅね。そういえば鳩さんに名前つけないとだね」
こんな賢い子を鳩と呼び続けるのなんか嫌だという変な気持ちから、名づけを早急にすることにした。
そうして、ジーッと鳩を見つめる。白くてつやつやに輝くもふもふふもふもボディに、美しいサファイアのような蒼い瞳。そして凛とした佇まいに、鳩として最高のマヨネーズのボトルのような完璧なフォルム。みればみるほど美しく気高く可愛いその姿……。なのに何故か真っ先に叔父様が浮かんだのはどうしてだろう。
(案外ホームシックなのかな……)
まぁ、兄上のリアルホラー味わったし叔父様のところに帰りたい、でも犯さないでほしいという気持ちの板挟みだけど、ノーリスクなら秒で叔父様の元に帰っていたので、ホームシックかもしれない。
だから、鳩を撫でながら、
「君の名前はマックスにしまちょうね」
マクスはさすがに叔父様ド直球で恥ずかしいので、ちょっと変化球でもうひとつの叔父様の愛称にしてみた。
すると鳩さん、もといマックスもそれが気に入ったみたでくるくる鳴きながらもふもふ羽毛をスリスリしてくる、可愛いね。もふもふは正義だね。
マックスの羽毛に、鼻を突っ込んでクンカクンカしたりしながら、鍵を使うところを探したら案外あっさり見つかった。ドレッサーの引き出しのひとつの鍵みたいだ。
その鍵を開けると、そこには一冊の日記が入っていた。
「誰の日記かな……」
埃を薄っすら被っている古いその日記は開いただけで、古書みたいな独特の黴臭いにおいがしたが、それでも綺麗に装丁されているのでボロボロと崩れたりはしなかった。
『7月15日
僕はやらかしてしまった。うっかり婚約者を断罪して廃嫡されてしまったのだ。
その結果僕が虐げていた弟が王太子になってしまった。しかも弟は廃嫡されて平民落ちするはずだった僕を何故か王籍または公爵位あたりの爵位をあげたいと言い始めた。
なんでかわかんないけど優しすぎない?』
待った、なんだろう、この既視感。兄弟の違いはあれどこれ今の僕と同じだ。なんかすごい嫌な予感がする。
『7月16日
弟が、僕を王籍に戻せるよと報告にきた。
僕のことものすごく恨んでるはずなのになんで、そんな笑顔でそれを喜んでるのかわからない。
後、王籍に戻るに辺り、僕の新しい家としてタウンハウスまで建ててくれたらしい。それがタウンハウスとは思えないほど豪華でびっくりした。
どうして弟は僕にこんなにやさしいのだろう?
7月17日
嘘だろう、弟がずっと僕のこと好きだったなんて。
打ち明けられて、怖くって、逃げ回ったけどここすごいヤバイ。
僕がいる主寝室からどうあがいても通常のルートだと出れないみたい。これって閉じ込められたってことだよね?
なんとか今日はやり過ごせたけど……僕の貞操はいつまで守れるのだろう?
7月18日
なんだか、昨日から僕がおかしい。あんなに嫌悪していた弟の気持ちが嬉しくなってきている。
でも、僕は女の子が好きだし、そんなことあるはずないのに、今日弟に迫られた時逃げる気にならなかった。
7月19日
おとうとがぼくをなでるとすごくあつくなる
あつくなって きもちよくて からだのなかがかゆい うずく
7月20日
おとうと しゅき
かゆい きもちぃい』
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ。
これあれだよ、かゆ〇まじゃねぇか。いや、これはかゆきも日記だけど。というか呪い怖すぎだろう。完全に人格が失われているじゃん。このままだと僕もこうなってしまうってことだよ。兄上の上書き計画がジャパニーズホラーからバイオハザー〇になるなんて聞いてない。
(逃げよう、逃げないと……)
そう考えた時、部屋の扉が開いた音がした。
「やばっ、あの個室トイレか確認しないと」
鳩が肩の上に乗ったままだけど、まぁトイレに鳥類持ち込んでも別に問題ないよねというのと、どこかに置いていく余裕がないくらい状況が切羽つまっていたのでそのまま例の個室へ向かった。
個室は想像通り、洗面所とトイレと浴室だった。
ただ、昨日連れていかれたような最新式ではなく、結構古いものだった。特に洗面所というかドレッサーがあるのだけれど、それがとても豪奢すぎるので旧時代のものだとひと目でわかった。
とりあえず、僕は人間としての尊厳のため、用を足した。鳩が肩の上でそれを凝視している。
「人間のおしっこしているところが不思議なんでちゅか?」
とか赤ちゃん言葉で鳩に話しかけた。人に見られたら憤死する場面だけど、僕は動物が好きなので動物には赤ちゃん言葉で話しかける。可愛いは正義だからね。
鳩はその言葉にクルクル鳴きながらスリスリしてくる。可愛いな。
そうして、ひとつ気づいたのがここ愛妾を閉じ込めていた、もとい住まわせていたらしい屋敷なのに男性トイレ仕様だった。
この部屋自体かなり豪奢な部屋なんで主寝室だと思われる。だとしたら、愛妾って男性だったのかもしれないというBL世界あるあるな事実に順調に正気度を減らした僕は、とりあえずすっきりして、人間としての尊厳がギリギリ守られた安堵感から、再度部屋を注意深く見渡してみた。
すると突然、今までおとなしかった鳩が飛んでしまった。
「だめでちゅよ、戻っておいで」
赤ちゃん言葉で優しく話しかけると、鳩は戻ってきた。賢いね。
しかも鳩は何か鍵のようなものを咥えていた。これを持ってきてくれたらしい。そう考えるといよいよこの子賢さがカンストしているやんとテンションが上がりながら鍵をとりあえず受け取った。
「ありがとう、偉いでちゅね。そういえば鳩さんに名前つけないとだね」
こんな賢い子を鳩と呼び続けるのなんか嫌だという変な気持ちから、名づけを早急にすることにした。
そうして、ジーッと鳩を見つめる。白くてつやつやに輝くもふもふふもふもボディに、美しいサファイアのような蒼い瞳。そして凛とした佇まいに、鳩として最高のマヨネーズのボトルのような完璧なフォルム。みればみるほど美しく気高く可愛いその姿……。なのに何故か真っ先に叔父様が浮かんだのはどうしてだろう。
(案外ホームシックなのかな……)
まぁ、兄上のリアルホラー味わったし叔父様のところに帰りたい、でも犯さないでほしいという気持ちの板挟みだけど、ノーリスクなら秒で叔父様の元に帰っていたので、ホームシックかもしれない。
だから、鳩を撫でながら、
「君の名前はマックスにしまちょうね」
マクスはさすがに叔父様ド直球で恥ずかしいので、ちょっと変化球でもうひとつの叔父様の愛称にしてみた。
すると鳩さん、もといマックスもそれが気に入ったみたでくるくる鳴きながらもふもふ羽毛をスリスリしてくる、可愛いね。もふもふは正義だね。
マックスの羽毛に、鼻を突っ込んでクンカクンカしたりしながら、鍵を使うところを探したら案外あっさり見つかった。ドレッサーの引き出しのひとつの鍵みたいだ。
その鍵を開けると、そこには一冊の日記が入っていた。
「誰の日記かな……」
埃を薄っすら被っている古いその日記は開いただけで、古書みたいな独特の黴臭いにおいがしたが、それでも綺麗に装丁されているのでボロボロと崩れたりはしなかった。
『7月15日
僕はやらかしてしまった。うっかり婚約者を断罪して廃嫡されてしまったのだ。
その結果僕が虐げていた弟が王太子になってしまった。しかも弟は廃嫡されて平民落ちするはずだった僕を何故か王籍または公爵位あたりの爵位をあげたいと言い始めた。
なんでかわかんないけど優しすぎない?』
待った、なんだろう、この既視感。兄弟の違いはあれどこれ今の僕と同じだ。なんかすごい嫌な予感がする。
『7月16日
弟が、僕を王籍に戻せるよと報告にきた。
僕のことものすごく恨んでるはずなのになんで、そんな笑顔でそれを喜んでるのかわからない。
後、王籍に戻るに辺り、僕の新しい家としてタウンハウスまで建ててくれたらしい。それがタウンハウスとは思えないほど豪華でびっくりした。
どうして弟は僕にこんなにやさしいのだろう?
7月17日
嘘だろう、弟がずっと僕のこと好きだったなんて。
打ち明けられて、怖くって、逃げ回ったけどここすごいヤバイ。
僕がいる主寝室からどうあがいても通常のルートだと出れないみたい。これって閉じ込められたってことだよね?
なんとか今日はやり過ごせたけど……僕の貞操はいつまで守れるのだろう?
7月18日
なんだか、昨日から僕がおかしい。あんなに嫌悪していた弟の気持ちが嬉しくなってきている。
でも、僕は女の子が好きだし、そんなことあるはずないのに、今日弟に迫られた時逃げる気にならなかった。
7月19日
おとうとがぼくをなでるとすごくあつくなる
あつくなって きもちよくて からだのなかがかゆい うずく
7月20日
おとうと しゅき
かゆい きもちぃい』
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ。
これあれだよ、かゆ〇まじゃねぇか。いや、これはかゆきも日記だけど。というか呪い怖すぎだろう。完全に人格が失われているじゃん。このままだと僕もこうなってしまうってことだよ。兄上の上書き計画がジャパニーズホラーからバイオハザー〇になるなんて聞いてない。
(逃げよう、逃げないと……)
そう考えた時、部屋の扉が開いた音がした。
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