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27.「〇〇たん」呼びされたい人同盟の存在について
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目が覚めると僕は寝室にいた。その部屋のベッドはとても豪華な天蓋付きだったが、その光景を見た瞬間僕の中で確実に恐怖心が芽生えていた。
思い出してしまったのだ。この世界でもうひとり僕が慎重になる必要があるヤンデレを。
基本的には叔父様とルークの追いかけっこの多い原作本にて、叔父様のライバルとして設定されている唯一のキャラクターがレイズ殿下、つまり兄上である。
何故か全く思い出せなかったが、最初に神も言っていた「王族の呪い」にかかっているのは叔父様だけではなかった、第一王子で王太子でなかった兄上にもその呪いはかかっていたのだ。しかも王太子が変わって自分になっても一度芽生えた僕への執着心は消えず、むしろ変質して歪んでしまっているのだ。
叔父様が優しい変態系ヤンデレなら、兄上は拗らせ執着系ヤンデレであり、僕に対して愛憎入り混じったなんとも言い難い感情を抱いているらしい。この部分は原作本参照なので実際はまだ信じがたいところです。
(今のところ、優しい兄上しか見えてないけどこの後ヤバイ目に遭うのは嫌だな)
原作本通りにこの世界は進んでいる訳では割とない。クリスとかクリスとか、後、叔父様と追いかけっこしまくっている訳でもないし……。
なら、兄上が本当に優しいだけってパターンもあってしかるべきだよね、むしろ明らかに新しい監禁をされている状態で望みが薄い気もするけど……。
そんなことをモヤモヤ考えていた時、部屋の扉が開いた。
(あ、多分兄上かな……)
そう考えてベッドから起き上がろうとして僕はなんで今まで気づかなかったんだレベルの異変に気付いた。
僕は首輪をされている、それだけではなく手錠もされている。さらにどうやら鎖でつながれている。つまりどういうことかというと……
「おはよう、ルーク、良い夢は見れたかな?」
いつもの優しい笑顔の兄上。そこだけ切り取れば特に違和感がないが、僕は今拘束されている。
「レイズ殿下、どういうことですか??」
そう呼ぶと兄上は笑顔のまま僕の顎を掴んだ。そして自身の顔を近づける。
「ルーク、レイズ殿下と呼ぶのはやめておくれ。君にそう呼ばれるとまるで私だけ蚊帳の外にいるみたいで悲しいんだ」
「……兄…うぇ」
この場合、呼び直しが適切だろうと思い、体勢的にきついがなんとか言葉を紡いだ、しかし兄上は首を左右に振る。
「君は昔から、私にどこか遠慮して叔父様には「おじたん」と言って懐いていたのに、私のことは「兄上」としか呼んでくれなかったね。でも、もうそれも終わりだよ。ルーク、私のことは今日から「レイズお兄たん」って呼ぼうね」
全く笑えない場面だ、そう、そのはずなのに僕は今めちゃくちゃ笑いたかった。だって……考えて欲しい。ルークに「〇〇たん」って呼ばせるのが王族のブームなの?ステータスなの?いやいやそんなことないやろう、叔父様が頭おかしいだけだろうって思ってました、けれど比較的、あくまでルーク比で申し訳ないけどまともな人だと考えていた兄上まで僕に「たん」呼びを要求してきているという事実。
(笑ってはいけない、笑ってはいけない)
「どうしたのルーク?」
「いえ、レイズお兄たん」
そう呼べば、本当に嬉しそうにその美しい顔が綻ぶ。叔父様は割と完全に整った上で至高の男性みがあるのだけれど兄上はどこか中性的な品の良さのある顔なので別の意味で魅力的だと思う。
(とはいえ、どちらもぼくに「たん」呼びしてほしい同盟の人だけど)
「えらいね。ルークは本当に良い子だね。ルークは良い子だからきっと逃げたりしないとは思ったんだけれど……一応諸々が終わるまでの保険のために拘束させてもらったよ」
「……諸々って……あの」
「来た時に話したけれど、私はルークを王族籍へ戻すか、臣下降下で公爵位を与えるようにしたいんだ」
「でも、それは前にもはなしましたが僕は元婚約者に酷い行いをしたので辞退すると……」
「だめだよ」
今までの優しい声とは全く違うとても冷たい声だった。そして今まで持ち上げていた僕の顔に自身の顔を近づけるとそのまま口づけをする。
口腔内を暴かれるように舌を入れられて無理やり抉じ開けられた。叔父様のような優しいキスとは違う荒々しさのあるそれは文字通り貪るように僕の口の中を蹂躙していった。
(くるし……ぃ)
飲み下せなかった唾液が顎を伝い、首を伝っていく。あまりの苦しさと酸欠で意識を失いかけた時、やっと離れてくれた。そして、その時見た兄上の目は、ギラついているのとは全く違う、まるで凪いだような穏やかな瞳だった。
思い出してしまったのだ。この世界でもうひとり僕が慎重になる必要があるヤンデレを。
基本的には叔父様とルークの追いかけっこの多い原作本にて、叔父様のライバルとして設定されている唯一のキャラクターがレイズ殿下、つまり兄上である。
何故か全く思い出せなかったが、最初に神も言っていた「王族の呪い」にかかっているのは叔父様だけではなかった、第一王子で王太子でなかった兄上にもその呪いはかかっていたのだ。しかも王太子が変わって自分になっても一度芽生えた僕への執着心は消えず、むしろ変質して歪んでしまっているのだ。
叔父様が優しい変態系ヤンデレなら、兄上は拗らせ執着系ヤンデレであり、僕に対して愛憎入り混じったなんとも言い難い感情を抱いているらしい。この部分は原作本参照なので実際はまだ信じがたいところです。
(今のところ、優しい兄上しか見えてないけどこの後ヤバイ目に遭うのは嫌だな)
原作本通りにこの世界は進んでいる訳では割とない。クリスとかクリスとか、後、叔父様と追いかけっこしまくっている訳でもないし……。
なら、兄上が本当に優しいだけってパターンもあってしかるべきだよね、むしろ明らかに新しい監禁をされている状態で望みが薄い気もするけど……。
そんなことをモヤモヤ考えていた時、部屋の扉が開いた。
(あ、多分兄上かな……)
そう考えてベッドから起き上がろうとして僕はなんで今まで気づかなかったんだレベルの異変に気付いた。
僕は首輪をされている、それだけではなく手錠もされている。さらにどうやら鎖でつながれている。つまりどういうことかというと……
「おはよう、ルーク、良い夢は見れたかな?」
いつもの優しい笑顔の兄上。そこだけ切り取れば特に違和感がないが、僕は今拘束されている。
「レイズ殿下、どういうことですか??」
そう呼ぶと兄上は笑顔のまま僕の顎を掴んだ。そして自身の顔を近づける。
「ルーク、レイズ殿下と呼ぶのはやめておくれ。君にそう呼ばれるとまるで私だけ蚊帳の外にいるみたいで悲しいんだ」
「……兄…うぇ」
この場合、呼び直しが適切だろうと思い、体勢的にきついがなんとか言葉を紡いだ、しかし兄上は首を左右に振る。
「君は昔から、私にどこか遠慮して叔父様には「おじたん」と言って懐いていたのに、私のことは「兄上」としか呼んでくれなかったね。でも、もうそれも終わりだよ。ルーク、私のことは今日から「レイズお兄たん」って呼ぼうね」
全く笑えない場面だ、そう、そのはずなのに僕は今めちゃくちゃ笑いたかった。だって……考えて欲しい。ルークに「〇〇たん」って呼ばせるのが王族のブームなの?ステータスなの?いやいやそんなことないやろう、叔父様が頭おかしいだけだろうって思ってました、けれど比較的、あくまでルーク比で申し訳ないけどまともな人だと考えていた兄上まで僕に「たん」呼びを要求してきているという事実。
(笑ってはいけない、笑ってはいけない)
「どうしたのルーク?」
「いえ、レイズお兄たん」
そう呼べば、本当に嬉しそうにその美しい顔が綻ぶ。叔父様は割と完全に整った上で至高の男性みがあるのだけれど兄上はどこか中性的な品の良さのある顔なので別の意味で魅力的だと思う。
(とはいえ、どちらもぼくに「たん」呼びしてほしい同盟の人だけど)
「えらいね。ルークは本当に良い子だね。ルークは良い子だからきっと逃げたりしないとは思ったんだけれど……一応諸々が終わるまでの保険のために拘束させてもらったよ」
「……諸々って……あの」
「来た時に話したけれど、私はルークを王族籍へ戻すか、臣下降下で公爵位を与えるようにしたいんだ」
「でも、それは前にもはなしましたが僕は元婚約者に酷い行いをしたので辞退すると……」
「だめだよ」
今までの優しい声とは全く違うとても冷たい声だった。そして今まで持ち上げていた僕の顔に自身の顔を近づけるとそのまま口づけをする。
口腔内を暴かれるように舌を入れられて無理やり抉じ開けられた。叔父様のような優しいキスとは違う荒々しさのあるそれは文字通り貪るように僕の口の中を蹂躙していった。
(くるし……ぃ)
飲み下せなかった唾液が顎を伝い、首を伝っていく。あまりの苦しさと酸欠で意識を失いかけた時、やっと離れてくれた。そして、その時見た兄上の目は、ギラついているのとは全く違う、まるで凪いだような穏やかな瞳だった。
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