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13.勇者は魔王に甘い声で怖いことを言われる
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「そんなことしておりません。レイジ様はきっと夢を見ていらしたのではありませんか??」
震えながらそう口にして無理やり微笑んでいるカペラだったが、そんな言い訳を許すつもりはなかったので反論しようとした時、僕より先にユリウスが口を開いた。
「夢か。だとしたらなぜレイジは浴室で自殺を図れた??私はお前にレイジの世話を命じた。私の宝物がひとりで湯あみをするなどということは起こるはずだが」
ユリウスの言葉にカペラは焦ったように言葉を重ねた。
「申し訳ありません。確かに僕はレイジ様の湯あみ中に目を離しました。しかしそれは放置ではなくほんの一瞬の出来事で……」
「ほんの一瞬でレイジの体があんなに冷たくなるものか!!!」
ユリウスが怒り叫んだ瞬間、カペラの体が空中に浮いてそのまま部屋の壁に突き飛ばされる。
「うっ……ぐはぁ」
背中を強く打ち付けてそのまま落下したカペラの口からは血があふれた。その姿に胸がすくような感覚より恐ろしいと感じたが、目を離すこともできなかった。
「カペラ、私はお前を信じていた。だからこそ、一番大切な宝物の世話を任せた。魔王としても務めがある以上、ずっとレイジの側にいれないからその代わりに身を尽くすことを望んだ」
「魔王様、申し訳ございません」
口から血を流しながら地面にひれ伏したカペラの首根っこを持ち上げてそのままユリウスは持ち上げると自身の現前までその顔を近づけた。
「謝る相手は私ではない」
吐き捨てるように言うと僕の足元にカペラを投げ捨てた。顔面から落ちた際にグシャっといやな音がした気がするが、カペラは僕の足元に跪いて『ごめんなさい』と繰り返した。
ただ、顔を伏せて土下座の体制のまま謝罪だけを繰り返してカペラに僕は気になっていたことを聞こうと口を開いた。
「なぜ、僕に嫌がらせをしたんだ??人間だからか??」
まっすぐ相手を見つめながら問うとわずかに顔を上げたカペラが恨めしいという瞳で僕を見ながらなんとか答えた。
「……うらやましかったのです。魔王様に大切にされるあなたが……僕だって、ずっと魔王様を、魔王様だけを想ってきたのに」
唇を強くかみしめて答えている姿には嘘がないことが分かった。
「……私は私の宝物であるレイジを傷つけた者を許すつもりはない」
その言葉を全く意に介していないユリウスはそのままカペラを殺そうとしていたので、反射的にユリウスの動きを止めようとその体に抱き着いた。
「レイジ……どうした??怖かったのか??大丈夫だ。大切な宝物であるレイジに酷いことをしたこの不届きものはちゃんと殺すから安心しろ」
甘くとろけるような声で囁かれた言葉に僕は首を振った。
「だめだ、ユリウス。カペラを殺してはいけない」
震えながらそう口にして無理やり微笑んでいるカペラだったが、そんな言い訳を許すつもりはなかったので反論しようとした時、僕より先にユリウスが口を開いた。
「夢か。だとしたらなぜレイジは浴室で自殺を図れた??私はお前にレイジの世話を命じた。私の宝物がひとりで湯あみをするなどということは起こるはずだが」
ユリウスの言葉にカペラは焦ったように言葉を重ねた。
「申し訳ありません。確かに僕はレイジ様の湯あみ中に目を離しました。しかしそれは放置ではなくほんの一瞬の出来事で……」
「ほんの一瞬でレイジの体があんなに冷たくなるものか!!!」
ユリウスが怒り叫んだ瞬間、カペラの体が空中に浮いてそのまま部屋の壁に突き飛ばされる。
「うっ……ぐはぁ」
背中を強く打ち付けてそのまま落下したカペラの口からは血があふれた。その姿に胸がすくような感覚より恐ろしいと感じたが、目を離すこともできなかった。
「カペラ、私はお前を信じていた。だからこそ、一番大切な宝物の世話を任せた。魔王としても務めがある以上、ずっとレイジの側にいれないからその代わりに身を尽くすことを望んだ」
「魔王様、申し訳ございません」
口から血を流しながら地面にひれ伏したカペラの首根っこを持ち上げてそのままユリウスは持ち上げると自身の現前までその顔を近づけた。
「謝る相手は私ではない」
吐き捨てるように言うと僕の足元にカペラを投げ捨てた。顔面から落ちた際にグシャっといやな音がした気がするが、カペラは僕の足元に跪いて『ごめんなさい』と繰り返した。
ただ、顔を伏せて土下座の体制のまま謝罪だけを繰り返してカペラに僕は気になっていたことを聞こうと口を開いた。
「なぜ、僕に嫌がらせをしたんだ??人間だからか??」
まっすぐ相手を見つめながら問うとわずかに顔を上げたカペラが恨めしいという瞳で僕を見ながらなんとか答えた。
「……うらやましかったのです。魔王様に大切にされるあなたが……僕だって、ずっと魔王様を、魔王様だけを想ってきたのに」
唇を強くかみしめて答えている姿には嘘がないことが分かった。
「……私は私の宝物であるレイジを傷つけた者を許すつもりはない」
その言葉を全く意に介していないユリウスはそのままカペラを殺そうとしていたので、反射的にユリウスの動きを止めようとその体に抱き着いた。
「レイジ……どうした??怖かったのか??大丈夫だ。大切な宝物であるレイジに酷いことをしたこの不届きものはちゃんと殺すから安心しろ」
甘くとろけるような声で囁かれた言葉に僕は首を振った。
「だめだ、ユリウス。カペラを殺してはいけない」
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