43 / 46
35:断罪に手を貸した騎士団長02(ざまぁ有、モブ視点)
しおりを挟む
※残酷な表現がありますので苦手な方はご注意ください。
陛下から話しを聞いてから数日が経ったとき、見たことのない男が王城を訪れた。男は褐色の肌に黒髪をした美しい男で異国から来た魔術師でこの城に掛かった呪いを解析しにきたという。
王城に居た魔術師たちはこの原因不明の事象に慄き、いなくなってしまっていた。そのため、きっと陛下が異国に依頼したのかもしれない。
王城に迎え入れると男はゆっくり歩を進めるように、王城内部を歩いて回った。そして、最後に王の玉座までくると難しい顔をしながら、それを取り出した。
見た目は白い粉のような、それは薬だと男は説明した。
「呪いは貴方達に深く根付いております。治すには体の中からの浄化が必要となります。この薬を1日3回欠かさずお飲みになれば、1ヶ月ほどで呪いは解けます」
嘘臭いと思い、薬は調査したが、特に異常はないし毒でもないらしい。正直胡散臭いとは思ったが、呪いに怯えている陛下やその他の人間にとって少しでも支えになればとそれを配布した。
しかし、その薬を飲んでからおかしなことが起こる様になった。
毎晩、夢を見るのだ。夢の中では私はまだ若い。そう、建国パーティーであの悪女の行いを断罪をした日だ。途中まであの女の悪行をさばいていったところで、あの時は、あの悪女の罪が暴かれて女は正妃ではなく側妃として変えられることになったはずだ。それなのに夢の中では、途中であの魔術師そっくりの男が現れる。
「貴方達がいう、義姉を虐げていたという罪、すべてでっちあげですよ」
と笑う。そんなはずはないので、こちらが証拠を出した。
例えば、王妃様のものを売りさばいた証拠になる書類を出した。しかし、魔術師は笑いながら。
「その筆跡本当に彼女の物ですか??」
といった。そして調べるとその筆跡は悪女ではなく正妃様のものだと判明する。つまり自作自演だと。
その他にも、使用人に嫌がらせを命じた話も、ひとりの年老いた使用人が自身の命をかけて悪女はむしろ王妃様を庇っていたし、そのような行いが起きないように両親も説き伏せていた。といった。
それだけではない、婚約についても王妃様を指名したのに辞退に追い込んだ話も、使用人や、学園の友人たちがこぞって彼女は姉の婚約者を奪うことを望まなかったが、姉が辞退して仕方なく受けざる得なかったと証言した。
全てが全て、王妃様が嘘をついたというのだ。
「嘘だ!!高潔な王妃様がそのようなことするはずがない、悪女が!!」
激昂して、悪女に切りかかろうとした時、魔術師の男がそれを庇った。そのせいで剣が男の胸に刺さった。
(まずい、無関係な人間を殺してしまった……)
しかし、剣が胸に刺さった男は死ぬことはなかった。代わりに血ではなく黒い何かがあふれ出て来た。それだけではない、先ほどまで会った美しい顔が割れて中から得体のしれない何かが出てきた。
あまりのことに絶句しているうちに、男はいつの間にか貌のない化け物に姿を変える。逃げたいが金縛りに掛かったようになり動くことができない。
そんな私の耳に、とても恐ろしい笑い声が聞こえた。まるで全てをあざ笑うような声だった。
「貴方のしたことは、全て過ちでした。貴方は悪女を倒し、美しい姫君を主君と結ばせたなんておとぎ話を信じていますが、実際は、冤罪の女性を過労死させて、その子を生贄に捧げた。ふふふ、弱い者を守るはずの騎士が聞いてあきれますね」
「うるさい!!こんなのは夢だ!!ただの……」
言葉を紡ぎかけて、絶句した。何故なら貌のない化け物がこちらへ近づいてきたからだ。
「くるな、こっちへくるな!!」
「はははっははははははあはははははははは。残念ですね。貴方はね、愚かな罪を償う必要があるのです。そうです、わかりますか??貴方はね、僕の大切な番をこの世界で冤罪を着せて殺したんだ。だから、苦しんで苦しんでしんでください」
そう言って、触手が体を絡めとる。必死に抵抗するがそれは離れることはなく、むしろ強い力で吸い付いて、次第に体の骨が折れて、更には内臓を潰した。
あまりのことに激痛に息もできずにいると、何故か体が一度回復した。いまのうちと逃げようとしたら、再び骨を折られて内臓がつぶれた。それを何度も何度も繰り返す。
「いやだ……いたぃ!!殺してくれ、殺して!!」
「ははっははははははははははははははっはあはははははははは無理無理無理はははははははははは!!!貴方は、私の愛おしい人を傷つけた、ゆるさないゆるさないゆるさないははっはっははあははははは」
耳障りな笑い声を立てながら、笑い続ける。そうして、何度も殺されて憔悴した状態で目を覚ます。それが一週間ほど続き、もしかしたら呪いを解く名目で逆に呪われたことを疑い、例の魔術師を尋問するために捉えた。
そうして拷問しようと牢にぶら下げた男を見る。俯いた男の顔には何の表情もない。
「お前は我々に呪いをかけたのか!!」
「まさか、あれは呪いを解く薬です」
「ふざけるな、あの薬を飲んでから酷い悪夢にうなされている」
その言葉に、魔術師は笑う。まるであの夢の時のようにけたたましく。
「何がおかしい!!」
「そりゃあ、当たり前ですよ。呪いを解くには、呪った人物が浮かばれないといけません。あの薬はね、その呪った人物を慰めるためのものですから。悪夢を見るのは贖罪のためです」
「ふざけるな!!」
激昂した私は、男を思わず刺した。致命傷にならない場所のはずだ、それなのに男はまるで心臓でも刺されたように動かなくなる。
「な、なぜ……」
その瞬間、夢のようにその傷口から黒いものがあふれた。そして、男の体がミシミシ音を立てながら割れて中から貌のない化け物が現れた。
「う、うそだ、これは幻影……」
「反省できない悪い子には現実でもお仕置きがいりますね」
そう言ってけたたましく笑った化け物。……そして。
*********************************************************************************
「騎士団長様までおかしくなられたらしい」
「そうなんですか??」
「ええ、今精神病院にいますが、ずっと「貌のない男が殺しに来る、痛い助けて」って言い続けて暴れるそうだよ。あまりに暴れるから鎮静剤を打たれていつも夢うつつになっているそうだよ」
男は永遠に続く悪夢の中で、今も無間地獄のような苦しみを受けながらもがき続けている。
陛下から話しを聞いてから数日が経ったとき、見たことのない男が王城を訪れた。男は褐色の肌に黒髪をした美しい男で異国から来た魔術師でこの城に掛かった呪いを解析しにきたという。
王城に居た魔術師たちはこの原因不明の事象に慄き、いなくなってしまっていた。そのため、きっと陛下が異国に依頼したのかもしれない。
王城に迎え入れると男はゆっくり歩を進めるように、王城内部を歩いて回った。そして、最後に王の玉座までくると難しい顔をしながら、それを取り出した。
見た目は白い粉のような、それは薬だと男は説明した。
「呪いは貴方達に深く根付いております。治すには体の中からの浄化が必要となります。この薬を1日3回欠かさずお飲みになれば、1ヶ月ほどで呪いは解けます」
嘘臭いと思い、薬は調査したが、特に異常はないし毒でもないらしい。正直胡散臭いとは思ったが、呪いに怯えている陛下やその他の人間にとって少しでも支えになればとそれを配布した。
しかし、その薬を飲んでからおかしなことが起こる様になった。
毎晩、夢を見るのだ。夢の中では私はまだ若い。そう、建国パーティーであの悪女の行いを断罪をした日だ。途中まであの女の悪行をさばいていったところで、あの時は、あの悪女の罪が暴かれて女は正妃ではなく側妃として変えられることになったはずだ。それなのに夢の中では、途中であの魔術師そっくりの男が現れる。
「貴方達がいう、義姉を虐げていたという罪、すべてでっちあげですよ」
と笑う。そんなはずはないので、こちらが証拠を出した。
例えば、王妃様のものを売りさばいた証拠になる書類を出した。しかし、魔術師は笑いながら。
「その筆跡本当に彼女の物ですか??」
といった。そして調べるとその筆跡は悪女ではなく正妃様のものだと判明する。つまり自作自演だと。
その他にも、使用人に嫌がらせを命じた話も、ひとりの年老いた使用人が自身の命をかけて悪女はむしろ王妃様を庇っていたし、そのような行いが起きないように両親も説き伏せていた。といった。
それだけではない、婚約についても王妃様を指名したのに辞退に追い込んだ話も、使用人や、学園の友人たちがこぞって彼女は姉の婚約者を奪うことを望まなかったが、姉が辞退して仕方なく受けざる得なかったと証言した。
全てが全て、王妃様が嘘をついたというのだ。
「嘘だ!!高潔な王妃様がそのようなことするはずがない、悪女が!!」
激昂して、悪女に切りかかろうとした時、魔術師の男がそれを庇った。そのせいで剣が男の胸に刺さった。
(まずい、無関係な人間を殺してしまった……)
しかし、剣が胸に刺さった男は死ぬことはなかった。代わりに血ではなく黒い何かがあふれ出て来た。それだけではない、先ほどまで会った美しい顔が割れて中から得体のしれない何かが出てきた。
あまりのことに絶句しているうちに、男はいつの間にか貌のない化け物に姿を変える。逃げたいが金縛りに掛かったようになり動くことができない。
そんな私の耳に、とても恐ろしい笑い声が聞こえた。まるで全てをあざ笑うような声だった。
「貴方のしたことは、全て過ちでした。貴方は悪女を倒し、美しい姫君を主君と結ばせたなんておとぎ話を信じていますが、実際は、冤罪の女性を過労死させて、その子を生贄に捧げた。ふふふ、弱い者を守るはずの騎士が聞いてあきれますね」
「うるさい!!こんなのは夢だ!!ただの……」
言葉を紡ぎかけて、絶句した。何故なら貌のない化け物がこちらへ近づいてきたからだ。
「くるな、こっちへくるな!!」
「はははっははははははあはははははははは。残念ですね。貴方はね、愚かな罪を償う必要があるのです。そうです、わかりますか??貴方はね、僕の大切な番をこの世界で冤罪を着せて殺したんだ。だから、苦しんで苦しんでしんでください」
そう言って、触手が体を絡めとる。必死に抵抗するがそれは離れることはなく、むしろ強い力で吸い付いて、次第に体の骨が折れて、更には内臓を潰した。
あまりのことに激痛に息もできずにいると、何故か体が一度回復した。いまのうちと逃げようとしたら、再び骨を折られて内臓がつぶれた。それを何度も何度も繰り返す。
「いやだ……いたぃ!!殺してくれ、殺して!!」
「ははっははははははははははははははっはあはははははははは無理無理無理はははははははははは!!!貴方は、私の愛おしい人を傷つけた、ゆるさないゆるさないゆるさないははっはっははあははははは」
耳障りな笑い声を立てながら、笑い続ける。そうして、何度も殺されて憔悴した状態で目を覚ます。それが一週間ほど続き、もしかしたら呪いを解く名目で逆に呪われたことを疑い、例の魔術師を尋問するために捉えた。
そうして拷問しようと牢にぶら下げた男を見る。俯いた男の顔には何の表情もない。
「お前は我々に呪いをかけたのか!!」
「まさか、あれは呪いを解く薬です」
「ふざけるな、あの薬を飲んでから酷い悪夢にうなされている」
その言葉に、魔術師は笑う。まるであの夢の時のようにけたたましく。
「何がおかしい!!」
「そりゃあ、当たり前ですよ。呪いを解くには、呪った人物が浮かばれないといけません。あの薬はね、その呪った人物を慰めるためのものですから。悪夢を見るのは贖罪のためです」
「ふざけるな!!」
激昂した私は、男を思わず刺した。致命傷にならない場所のはずだ、それなのに男はまるで心臓でも刺されたように動かなくなる。
「な、なぜ……」
その瞬間、夢のようにその傷口から黒いものがあふれた。そして、男の体がミシミシ音を立てながら割れて中から貌のない化け物が現れた。
「う、うそだ、これは幻影……」
「反省できない悪い子には現実でもお仕置きがいりますね」
そう言ってけたたましく笑った化け物。……そして。
*********************************************************************************
「騎士団長様までおかしくなられたらしい」
「そうなんですか??」
「ええ、今精神病院にいますが、ずっと「貌のない男が殺しに来る、痛い助けて」って言い続けて暴れるそうだよ。あまりに暴れるから鎮静剤を打たれていつも夢うつつになっているそうだよ」
男は永遠に続く悪夢の中で、今も無間地獄のような苦しみを受けながらもがき続けている。
12
お気に入りに追加
1,985
あなたにおすすめの小説

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
急に運命の番と言われても。夜会で永遠の愛を誓われ駆け落ちし、数年後ぽい捨てされた母を持つ平民娘は、氷の騎士の甘い求婚を冷たく拒む。
石河 翠
恋愛
ルビーの花屋に、隣国の氷の騎士ディランが現れた。
雪豹の獣人である彼は番の匂いを追いかけていたらしい。ところが花屋に着いたとたんに、手がかりを失ってしまったというのだ。
一時的に鼻が詰まった人間並みの嗅覚になったディランだが、番が見つかるまでは帰らないと言い張る始末。ルビーは彼の世話をする羽目に。
ルビーと喧嘩をしつつ、人間についての理解を深めていくディラン。
その後嗅覚を取り戻したディランは番の正体に歓喜し、公衆の面前で結婚を申し込むが冷たく拒まれる。ルビーが求婚を断ったのには理由があって……。
愛されることが怖い臆病なヒロインと、彼女のためならすべてを捨てる一途でだだ甘なヒーローの恋物語。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(ID25481643)をお借りしています。

じゃない方の私が何故かヤンデレ騎士団長に囚われたのですが
カレイ
恋愛
天使な妹。それに纏わりつく金魚のフンがこの私。
両親も妹にしか関心がなく兄からも無視される毎日だけれど、私は別に自分を慕ってくれる妹がいればそれで良かった。
でもある時、私に嫉妬する兄や婚約者に嵌められて、婚約破棄された上、実家を追い出されてしまう。しかしそのことを聞きつけた騎士団長が何故か私の前に現れた。
「ずっと好きでした、もう我慢しません!あぁ、貴方の匂いだけで私は……」
そうして、何故か最強騎士団長に囚われました。



愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。
そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。
相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。
トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。
あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。
ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。
そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが…
追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。
今更ですが、閲覧の際はご注意ください。

ヤンデレ化していた幼稚園ぶりの友人に食べられました
ミルク珈琲
BL
幼稚園の頃ずっと後ろを着いてきて、泣き虫だった男の子がいた。
「優ちゃんは絶対に僕のものにする♡」
ストーリーを分かりやすくするために少しだけ変更させて頂きましたm(_ _)m
・洸sideも投稿させて頂く予定です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる