最恐変態ヤンデレ竜王様は番の生贄ひよこ王子が可愛くって仕方ないので世界を滅ぼす約束をした

ひよこ麺

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33:白い竜が見せる悪夢(バイアティス(ピヨちゃんの父親)視点)

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「また、退職か……」

城から次々と人が消えていく。その事態に私は大きくため息をついた。原因はわからない。ただ、『化け物が出る』と言って次々に家臣たちが王城をさり、いよいよ色々な業務が回らなくなりはじめていた。

その対策で、くたびれて眠りにつくが、最近は毎晩同じ悪夢により全く休まらなかった。

夢の内容は、とても美しい白い竜が現れて、私に必ず恐ろしいことを告げるのだ。

「お前は私との契約を破りお前の家族をないがしろにした。その罪でそう遠くない未来にお前はお前の番を失い邪竜に堕ちるだろう」

「そんなことは嘘だ、何があっても私は番を失ったりはしない!!」

そう叫んだが、竜は首を振る。

「お前は、側妃など迎えてはいけなかった。彼女と彼女との間に生まれた息子を不幸にしてはいけなかった。例え愛していなくても最低限の尊厳は与えるべきだった。ちなみにお前がお前の邪悪な番に言われるがままに殺してしまった生贄にされてしまったルキオは、竜の遅れ子だった。つまり、竜神の番だったのだよ」

その言葉に私は思わず震えた。竜の遅れ子はたまに王族に生まれる存在で極端に発育が遅い先祖返りの子供を指したが、彼らは全て生贄に捧げられてきたし、それに対してなんらかの問題が生じることはなく豊穣が約束された。

「しかし、竜の遅れ子は今までも生贄に捧げられたはずだ、何故今回だけ問題がある」

「お前はあの子にいわれのない罪を着せた。いままでの遅れ子はあくまでただ尊厳は守られて皆から尊敬されながら番である竜神の元に旅立たせただけだ。だから、その番だった竜神は礼に豊穣を与えてきた。しかし、ルキオは冤罪を着せられて全裸にされて人間としての最低限の尊厳もなく、崖に叩き落とされた。考えてごらん、もしお前の愛おしい番にそんなことをした者がいたら……」

「殺す、いや、拷問をしてこの世で一番苦しめて……あ……」

そこで私は気付いた。つまりそういうことだ。私達はルキオの尊厳を奪った、傷つけた、苦しめた。そしてその番の元へ送った。つまり、ルキオの番である竜神が怒り狂っているということになる。

「理解したな。我が愛し子よ。そして、運が悪いことにルキオの番である竜神は愛おしい番のためならこの世界すら滅ぼせるほど力の強い竜神だったのだ。すまないが私もお前を助けてやることはできない。なにせ私よりも強い竜神、竜神の王をお前は敵に回してしまったのだよ」

悲し気に俯いて告げるかの竜神はどうやら、我々の始祖様らしい。これが夢だと分かっていたが、かの竜に聞かずにはいられなかった。

「私の命ならいくらでも差し出す、だから、彼女の、ソフィアだけは救いたい」

番を失うくらいなら私が死んでも構わない。愛おしいソフィアのためなら、私はどうなったって構わない。しかし、竜は冷たく言い放った。

「それは無理だ。まだ、お前がルキオを生贄にする前なら方法はいくらでもあった。私は今日のように何度も夢で忠告したはずだ。覚えているか??」

その言葉に思わず俯いた。確かに夢を見た記憶がある。その夢は『家族を大切にしろ』『番の言葉だけを鵜呑みにするな。お前は強制力にも抗うことができる側の人間だ、未来を変えられる改心しろ』というものだった。けれど、私はそれらを全てただの夢だと無視し続けた。

「いやだ、ソフィアは、ソフィアだけは守りたい」

「愛し子よ。ルキオは、その母はお前に同じように訴えたことはなかったのか??そしてお前はそれを踏みにじったのだろう??いいかい、これは業だ。それから逃れることはできない。だが安心しなさい。お前が知性のない可哀そうな邪竜になったら私がちゃんと面倒を見てあげる。可愛い愛し子。お前の邪悪な番は憎いが私はお前のことはちゃんと愛している。だからなにも心配しないでいい。地獄で家族で幸せになろう」

見たことのない笑顔。今までみたどんなものより恐ろしい表情だった。あまりの恐怖に背筋が凍り付く。

「大丈夫、もうすぐ迎えにいこう」

「ああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

覚醒する寸前、妙に澄んだ響きで残った声、夢のはずなのにまるで目覚める前にその寸前に耳元で囁かれたような気持ち悪さがあった。

「どうかされたの??」

寝ぼけたように私を見つめる最愛の番。私は首を振る。

「大丈夫、なんでもない」

そう言ってから、その体を抱きしめた。大丈夫、彼女を失うなど全て夢だ、全て……。

私は既に自分が戻ることのできない泥沼に沈んでいることを、深淵が既に捕らえていたことをその時は知らなかった。
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