17 / 46
15:復讐をスタートしたピヨちゃん
しおりを挟む
「準備が出来まして。ナイアさんお願いいたします」
僕は服を脱いで、自身に透明化の魔法をかけて、そう伝えた。
「分かりました。では」
そう言って指をナイアさんが鳴らすと、僕は王城の元自室にいた。そこは以前と変わらず粗末な部屋だった。いや、部屋というより物置小屋に無理やり粗末なベッドなどが置かれているだけの本当に最悪の部屋だった。
(嫌な記憶が蘇るな……)
まだ母上が生きている頃は僕は母上と同じ部屋で生活をしていた。
母上は一応側妃であったし、押し付けられた公務をいつもひとりでこなして忙しかったため、あまり部屋には戻れなかったがそれでもちゃんとした王族の部屋に僕と住んでいた。
母上には公爵家からついてきた使用人が何人かついていたので、その使用人達が僕の世話をしてくれてもいた。
思えば、王宮の使用人はその当時から僕の世話をすることはなかった。かの王宮では使用人とは言っても身分のしっかりしている中堅貴族の嫡男以外が多かった。
だから、彼等、彼女等のプライドが名ばかりの王族である僕に仕えるなど許せなかったのだろう。
その弊害は母上が亡くなってすぐに訪れた。
側妃の部屋にいられなくなった僕は、王宮の端にある罪を犯したり、精神を蝕んだ王族を幽閉するためにある塔に入れられた。それがこの部屋だ。
閉じこめられている訳ではなかったが、そこから出てもまるで透明人間ででもあるように僕の存在は徹底的に無視された。そして、塔へやってきて僕の世話を言い渡された使用人は正妃の息がかかっている連中で、僕の世話などしなかった。
表立って暴力は振るわないが、僕に支給された王族としての予算は全てその使用人たちが着服していたようだ。それについて表向き知らないことになっていた国王はなにひとつ追及することはなかった。
だから、僕はいつもボロボロで、なんとか冷たい井戸の水で体を洗い、着古した服も自分で洗濯していた。服についても勿論新しく与えられることがなかったので、僕が成長が著しく遅くなければ全裸で過ごさないといけなかったかもしれない。
食事は一応出たが、それは残飯だったらしく、使用人より粗末なものだったと後で僕を救ってくれた弟が憤慨していた。
そんな地獄のような生活を送っていた場所にやってきた時、もうトラウマなど忘れているだろうと思っていたのに、嫌な記憶が脳内に浮かんでしばらく動けなくなった。
『なんてひどい。やはり燃やしてしまいたい』
そんな僕の脳内に直接慣れたヨグ様の声が話しかけてきた。
(どういうことですか、何故……)
『ああ、今しゃべれないし透明になっているからティラノたんの脳に直接語り掛けているよ。僕の姿が見えないだろう??ちなみに僕にはティラノたんのエッチで美しい全裸の姿がはっきり見えているよ。はぁはぁ』
(毒電波を流すだけなら邪魔なんで先に帰ってくれませんか??)
『ははは。相変わらずの冷たい対応。野外というか人の家だと思うとすごく興奮するな。ティラノたんに今見えないしそれをいいことにちょっとした悪戯を……』
(それより、さっさと日記を回収しないと……)
しかし、先ほどから僕はトラウマもあるがある事情でその場を動けないでいた。今は夜中。真っ暗な物置同然で使用されていない部屋になど人は誰ひとりいないはずだった。
「……どこに隠したの」
そうまるで幽鬼のような青白い顔色をした正妃がさきほどからこの部屋をランタンひとつで照らしながら何かを探しているのがわかった。
僕は息を潜めて憎い仇を見つめる。
「あの女が残したアレを見つけ出さないと。私には確かに神が味方しているけれどあの話が本当なら早く手を打たないと大変なことになる……」
『あの女がティラノたんをここに入れて虐待していた女??』
(そうです)
『ティラノたん、殺していいかな??いや、でもすぐ殺したら僕の可愛い可愛い大切な大切な世界の始まりから待ち望んだ永遠の番であるティラノたんの苦しみの1%も与えられない。だとしたら、あはっ。そうだな、無間地獄っていういい場所があって……』
(前に話しましたが、あの女への復讐は僕が成し遂げます。だから手出しは無用です)
そう答えながら、なぜかヨグ様の怒りがとても嬉しいと感じてしまった。僕の憎しみを理解してくれているといことが嬉しいなど、番というのは思ったより厄介なのかもしれないがそれについては一旦忘れることにした。
僕は服を脱いで、自身に透明化の魔法をかけて、そう伝えた。
「分かりました。では」
そう言って指をナイアさんが鳴らすと、僕は王城の元自室にいた。そこは以前と変わらず粗末な部屋だった。いや、部屋というより物置小屋に無理やり粗末なベッドなどが置かれているだけの本当に最悪の部屋だった。
(嫌な記憶が蘇るな……)
まだ母上が生きている頃は僕は母上と同じ部屋で生活をしていた。
母上は一応側妃であったし、押し付けられた公務をいつもひとりでこなして忙しかったため、あまり部屋には戻れなかったがそれでもちゃんとした王族の部屋に僕と住んでいた。
母上には公爵家からついてきた使用人が何人かついていたので、その使用人達が僕の世話をしてくれてもいた。
思えば、王宮の使用人はその当時から僕の世話をすることはなかった。かの王宮では使用人とは言っても身分のしっかりしている中堅貴族の嫡男以外が多かった。
だから、彼等、彼女等のプライドが名ばかりの王族である僕に仕えるなど許せなかったのだろう。
その弊害は母上が亡くなってすぐに訪れた。
側妃の部屋にいられなくなった僕は、王宮の端にある罪を犯したり、精神を蝕んだ王族を幽閉するためにある塔に入れられた。それがこの部屋だ。
閉じこめられている訳ではなかったが、そこから出てもまるで透明人間ででもあるように僕の存在は徹底的に無視された。そして、塔へやってきて僕の世話を言い渡された使用人は正妃の息がかかっている連中で、僕の世話などしなかった。
表立って暴力は振るわないが、僕に支給された王族としての予算は全てその使用人たちが着服していたようだ。それについて表向き知らないことになっていた国王はなにひとつ追及することはなかった。
だから、僕はいつもボロボロで、なんとか冷たい井戸の水で体を洗い、着古した服も自分で洗濯していた。服についても勿論新しく与えられることがなかったので、僕が成長が著しく遅くなければ全裸で過ごさないといけなかったかもしれない。
食事は一応出たが、それは残飯だったらしく、使用人より粗末なものだったと後で僕を救ってくれた弟が憤慨していた。
そんな地獄のような生活を送っていた場所にやってきた時、もうトラウマなど忘れているだろうと思っていたのに、嫌な記憶が脳内に浮かんでしばらく動けなくなった。
『なんてひどい。やはり燃やしてしまいたい』
そんな僕の脳内に直接慣れたヨグ様の声が話しかけてきた。
(どういうことですか、何故……)
『ああ、今しゃべれないし透明になっているからティラノたんの脳に直接語り掛けているよ。僕の姿が見えないだろう??ちなみに僕にはティラノたんのエッチで美しい全裸の姿がはっきり見えているよ。はぁはぁ』
(毒電波を流すだけなら邪魔なんで先に帰ってくれませんか??)
『ははは。相変わらずの冷たい対応。野外というか人の家だと思うとすごく興奮するな。ティラノたんに今見えないしそれをいいことにちょっとした悪戯を……』
(それより、さっさと日記を回収しないと……)
しかし、先ほどから僕はトラウマもあるがある事情でその場を動けないでいた。今は夜中。真っ暗な物置同然で使用されていない部屋になど人は誰ひとりいないはずだった。
「……どこに隠したの」
そうまるで幽鬼のような青白い顔色をした正妃がさきほどからこの部屋をランタンひとつで照らしながら何かを探しているのがわかった。
僕は息を潜めて憎い仇を見つめる。
「あの女が残したアレを見つけ出さないと。私には確かに神が味方しているけれどあの話が本当なら早く手を打たないと大変なことになる……」
『あの女がティラノたんをここに入れて虐待していた女??』
(そうです)
『ティラノたん、殺していいかな??いや、でもすぐ殺したら僕の可愛い可愛い大切な大切な世界の始まりから待ち望んだ永遠の番であるティラノたんの苦しみの1%も与えられない。だとしたら、あはっ。そうだな、無間地獄っていういい場所があって……』
(前に話しましたが、あの女への復讐は僕が成し遂げます。だから手出しは無用です)
そう答えながら、なぜかヨグ様の怒りがとても嬉しいと感じてしまった。僕の憎しみを理解してくれているといことが嬉しいなど、番というのは思ったより厄介なのかもしれないがそれについては一旦忘れることにした。
9
お気に入りに追加
1,985
あなたにおすすめの小説

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
急に運命の番と言われても。夜会で永遠の愛を誓われ駆け落ちし、数年後ぽい捨てされた母を持つ平民娘は、氷の騎士の甘い求婚を冷たく拒む。
石河 翠
恋愛
ルビーの花屋に、隣国の氷の騎士ディランが現れた。
雪豹の獣人である彼は番の匂いを追いかけていたらしい。ところが花屋に着いたとたんに、手がかりを失ってしまったというのだ。
一時的に鼻が詰まった人間並みの嗅覚になったディランだが、番が見つかるまでは帰らないと言い張る始末。ルビーは彼の世話をする羽目に。
ルビーと喧嘩をしつつ、人間についての理解を深めていくディラン。
その後嗅覚を取り戻したディランは番の正体に歓喜し、公衆の面前で結婚を申し込むが冷たく拒まれる。ルビーが求婚を断ったのには理由があって……。
愛されることが怖い臆病なヒロインと、彼女のためならすべてを捨てる一途でだだ甘なヒーローの恋物語。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(ID25481643)をお借りしています。

じゃない方の私が何故かヤンデレ騎士団長に囚われたのですが
カレイ
恋愛
天使な妹。それに纏わりつく金魚のフンがこの私。
両親も妹にしか関心がなく兄からも無視される毎日だけれど、私は別に自分を慕ってくれる妹がいればそれで良かった。
でもある時、私に嫉妬する兄や婚約者に嵌められて、婚約破棄された上、実家を追い出されてしまう。しかしそのことを聞きつけた騎士団長が何故か私の前に現れた。
「ずっと好きでした、もう我慢しません!あぁ、貴方の匂いだけで私は……」
そうして、何故か最強騎士団長に囚われました。



愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。
そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。
相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。
トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。
あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。
ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。
そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが…
追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。
今更ですが、閲覧の際はご注意ください。

ヤンデレ化していた幼稚園ぶりの友人に食べられました
ミルク珈琲
BL
幼稚園の頃ずっと後ろを着いてきて、泣き虫だった男の子がいた。
「優ちゃんは絶対に僕のものにする♡」
ストーリーを分かりやすくするために少しだけ変更させて頂きましたm(_ _)m
・洸sideも投稿させて頂く予定です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる