2 / 3
初恋を失くして泡に戻れない人魚姫は……(ルカン(人魚姫)視点) ※中編扱いです。
しおりを挟む
はじめてそいつを見た時、オレは恋をした。
海辺にはたまに傷だらけの奴がいてオレは小さな頃そいつらを面白半分に助けていた。
その日も偶然、自分と同じ年位のヤツを助けた。そいつは泣きながら、
『どうして助けた、母上の元へいきたかったのに』と暴れた。大半の奴は助けてやると感謝するけどオレの鋭利な牙を見て鮫だって気付いて逃げるのに……、そいつはオレを怖がってないけどすごく抵抗した。
『母上に会えないなら死にたい』
だからこそ、そう言った時に思わずある言葉が口から飛び出す。
『お前、オレの前で自殺とかやめろよな』
その言葉に、なぜかそいつは今までの抵抗をやめてただ涙をこぼした。その姿が愛らしくて思わず慰めるように微笑んでからその体を抱きしめたらとても華奢でドキドキした。
だから恥ずかしくなって、
『なんだよ、泣くなよ』と言ったら、さらに驚いた顔をした後に微笑んだ顔に胸の奧で何かがはじけるような特別な何かを感じた。
*******************************
あの匂いと感覚を探した。実は鮫の人魚である俺は視力が悪い。あの日のあいつも恥ずかしくて近くで顔を見れなかったことをずっと悔やんでいた。
ただ、記憶に残る青い瞳とどこか甘い匂いを頼りにある人物がその初恋相手だと確信した。
そいつはこの辺りの海へよくやってくる白い兎の獣人だった。
過去のことがあるからかよくオレに話しかけてきた。
「ねぇ、サメさん。あちら側に僕を連れて行ってくれないかな、つれて行ってくれたらサメさんに僕サービスするよ♡」
好意を持つ相手にそう言われてオレは拒む選択肢なんてなかった。そいつを背に乗せて対岸につれて行く寸前で、背中の上の初恋の相手が言った。
「おバカな鮫さん。僕は恋人に会いに行くために君を利用したんだ。だから君が想像したようなことはしないよ」
その言葉に唖然とした。確かに下心が全くなかったかと言えばウソになるけれど純粋な気持ちを侮辱されたことが許せなくて、思わずそのままそいつを海に引きずり込んで怒りのまま犯そうとした。
けれど、すんでのところで通りかかった兎獣人の恋人の神に邪魔をされて、さらには呪いを掛けられた。
呪いは『もっとも愛する人と結ばれなければ永遠に生き続けないといけない』というものだった。
人魚はそもそもとても一途な種族で、恋が破れたなら泡になるのだが、初恋の相手を奪われてそんな呪いを掛けられたオレは死ぬことさえ許されなくなったらしい。
あまりのことに自暴自棄になったオレはいつもならしないようなミスで人間に捕らえられた。
けれど、オレの体に神の呪いの証があったことで人間はオレを処分しようとした。それもそのはずで神の恩恵を受けているこの国の人間が呪われた存在なんて保有したくないだろうから。
ただオレの体に傷はついたが、処分はできなかった。
神の呪いのせいで死ねないのだから。
そのことで、人間は慄きオレをなんとか手放そうとしたとき物好きな人間の貴族がオレを引き取りたいと言っていると聞いた。
その貴族は神の血を引いているらしく、オレの呪いを恐れていないらしいという。年は若いが人魚を好むおかしな性癖がある変態らしいがもうどうでもよかった。
そうして連れて来られた場所で、人にされて今、犯されそうになっている。
「怖くないよ、さぁ、永遠の幸せを教えてあげよう」
狂った瞳で見つめるその顔を間近で見た時、体が震えるのが分かった。それは恐怖からではなく……、
(嘘だ、まさか……)
その美しい青い瞳にもほのかに香った甘い香りにも覚えがあった、けれど……。
「(オレが犯される側なんて)いやだ!!」
そう叫んだが、拒否の声はそのまま甘い口づけにかき消されてしまった。
海辺にはたまに傷だらけの奴がいてオレは小さな頃そいつらを面白半分に助けていた。
その日も偶然、自分と同じ年位のヤツを助けた。そいつは泣きながら、
『どうして助けた、母上の元へいきたかったのに』と暴れた。大半の奴は助けてやると感謝するけどオレの鋭利な牙を見て鮫だって気付いて逃げるのに……、そいつはオレを怖がってないけどすごく抵抗した。
『母上に会えないなら死にたい』
だからこそ、そう言った時に思わずある言葉が口から飛び出す。
『お前、オレの前で自殺とかやめろよな』
その言葉に、なぜかそいつは今までの抵抗をやめてただ涙をこぼした。その姿が愛らしくて思わず慰めるように微笑んでからその体を抱きしめたらとても華奢でドキドキした。
だから恥ずかしくなって、
『なんだよ、泣くなよ』と言ったら、さらに驚いた顔をした後に微笑んだ顔に胸の奧で何かがはじけるような特別な何かを感じた。
*******************************
あの匂いと感覚を探した。実は鮫の人魚である俺は視力が悪い。あの日のあいつも恥ずかしくて近くで顔を見れなかったことをずっと悔やんでいた。
ただ、記憶に残る青い瞳とどこか甘い匂いを頼りにある人物がその初恋相手だと確信した。
そいつはこの辺りの海へよくやってくる白い兎の獣人だった。
過去のことがあるからかよくオレに話しかけてきた。
「ねぇ、サメさん。あちら側に僕を連れて行ってくれないかな、つれて行ってくれたらサメさんに僕サービスするよ♡」
好意を持つ相手にそう言われてオレは拒む選択肢なんてなかった。そいつを背に乗せて対岸につれて行く寸前で、背中の上の初恋の相手が言った。
「おバカな鮫さん。僕は恋人に会いに行くために君を利用したんだ。だから君が想像したようなことはしないよ」
その言葉に唖然とした。確かに下心が全くなかったかと言えばウソになるけれど純粋な気持ちを侮辱されたことが許せなくて、思わずそのままそいつを海に引きずり込んで怒りのまま犯そうとした。
けれど、すんでのところで通りかかった兎獣人の恋人の神に邪魔をされて、さらには呪いを掛けられた。
呪いは『もっとも愛する人と結ばれなければ永遠に生き続けないといけない』というものだった。
人魚はそもそもとても一途な種族で、恋が破れたなら泡になるのだが、初恋の相手を奪われてそんな呪いを掛けられたオレは死ぬことさえ許されなくなったらしい。
あまりのことに自暴自棄になったオレはいつもならしないようなミスで人間に捕らえられた。
けれど、オレの体に神の呪いの証があったことで人間はオレを処分しようとした。それもそのはずで神の恩恵を受けているこの国の人間が呪われた存在なんて保有したくないだろうから。
ただオレの体に傷はついたが、処分はできなかった。
神の呪いのせいで死ねないのだから。
そのことで、人間は慄きオレをなんとか手放そうとしたとき物好きな人間の貴族がオレを引き取りたいと言っていると聞いた。
その貴族は神の血を引いているらしく、オレの呪いを恐れていないらしいという。年は若いが人魚を好むおかしな性癖がある変態らしいがもうどうでもよかった。
そうして連れて来られた場所で、人にされて今、犯されそうになっている。
「怖くないよ、さぁ、永遠の幸せを教えてあげよう」
狂った瞳で見つめるその顔を間近で見た時、体が震えるのが分かった。それは恐怖からではなく……、
(嘘だ、まさか……)
その美しい青い瞳にもほのかに香った甘い香りにも覚えがあった、けれど……。
「(オレが犯される側なんて)いやだ!!」
そう叫んだが、拒否の声はそのまま甘い口づけにかき消されてしまった。
35
お気に入りに追加
66
あなたにおすすめの小説

婚約破棄した王子様の初恋相手の綺麗なお姉さんの正体はヤンデレの叔父でした
ひよこ麺
BL
第2王子のルクスには、幼い頃からの婚約者がいたがその関係は完全に破綻していた。
その婚約者との顔合わせの日にうまくいかず泣いていたところを慰めてくれた年上の綺麗なお姉さんに初恋をしたルクス。勢いでお姉さんと『成人したら結婚する』約束をする。
時は流れて、いよいよ婚約者との関係が破綻した日、隣国との紛争をおさめて10年ぶりに帰還した王弟である叔父。救国の英雄となった彼が望んだことは地位でも名誉でもなくただひとつ。
「ルクスを私の花嫁として迎えたい」
突然の出来事に周囲を巻き込みながら、ルクスの周囲をかためていく叔父様と、そんな叔父様から逃げて初恋の人と結ばれたいルクスの物語。
※コメディータッチの予定です。
指先一ミリの罠
楽川楽
BL
美形×平凡。
仲良し四人組の間に突如割って入ってきた、女の子のように可愛い後輩、安田♂。
いつだって自分を優先してくれていたはずの時成は、いつからか可愛い安田にべったりになってしまった。どうすることもできずヤキモキしていた一平は、ついに時成と安田がひと気の無い場所へ消えていくのを見てしまい…!?

少女漫画の当て馬に転生したら聖騎士がヤンデレ化しました
猫むぎ
BL
外の世界に憧れを抱いていた少年は、少女漫画の世界に転生しました。
当て馬キャラに転生したけど、モブとして普通に暮らしていたが突然悪役である魔騎士の刺青が腕に浮かび上がった。
それでも特に刺青があるだけでモブなのは変わらなかった。
漫画では優男であった聖騎士が魔騎士に豹変するまでは…
出会う筈がなかった二人が出会い、聖騎士はヤンデレと化す。
メインヒーローの筈の聖騎士に執着されています。
最上級魔導士ヤンデレ溺愛聖騎士×当て馬悪役だけどモブだと信じて疑わない最下層魔導士

弟勇者と保護した魔王に狙われているので家出します。
あじ/Jio
BL
父親に殴られた時、俺は前世を思い出した。
だが、前世を思い出したところで、俺が腹違いの弟を嫌うことに変わりはない。
よくある漫画や小説のように、断罪されるのを回避するために、弟と仲良くする気は毛頭なかった。
弟は600年の眠りから醒めた魔王を退治する英雄だ。
そして俺は、そんな弟に嫉妬して何かと邪魔をしようとするモブ悪役。
どうせ互いに相容れない存在だと、大嫌いな弟から離れて辺境の地で過ごしていた幼少期。
俺は眠りから醒めたばかりの魔王を見つけた。
そして時が過ぎた今、なぜか弟と魔王に執着されてケツ穴を狙われている。
◎1話完結型になります

普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。
山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。
お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。
サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。

悪役のはずだった二人の十年間
海野璃音
BL
第三王子の誕生会に呼ばれた主人公。そこで自分が悪役モブであることに気づく。そして、目の前に居る第三王子がラスボス系な悪役である事も。
破滅はいやだと謙虚に生きる主人公とそんな主人公に執着する第三王子の十年間。
※ムーンライトノベルズにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる