傲慢王子は廃嫡されて幽閉されてはじめて愛を知る~そして、王国は瓦解した。

ひよこ麺

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03.傲慢王子と兄王子

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陛下との謁見があった次の日はとても忙しい1日だった。

謁見の日はあれ以降の仕事を行うことができなかったからだ。たった半日という者もいるだろうがその半日分の仕事がまるまる翌日に回った、だからその分該当の半日分をなんとかこなさないといけない。

だから、なんとか食事は持ってきてもらい書類を見ながら執務室で片手にサンドイッチを持ち頬張りながら執務をこなしていた時だった。

「クーサー、忙しいところすいません。ちょっと確認をしたいことがありまして……」

若い男の声だった。僕を呼びつけに出来る人間はこの王城でそこまでいない。その中で若い男であるとすれば誰かは顔を見なくてもわかった。

「兄上、何かありましたか??」

少し困ったような笑みを浮かべたその男のことが、僕は好きではなかった。

王族の中では、比較的友好的な部類ではあるのだろうが、兄は僕に対して何か良からぬことを考えていると幼い日から感じている。それがどういうことかというと……。

「ええ、この部分を確認したくて……」

そう言って持ってきたのは、2日前に稟議を通した資料だった。しかし、それに目を通した瞬間予想通りのことが起きていた。

明かにその資料はになっているのだ。

それに気付いた僕の顔を相変わらずとても困ったように笑顔で見ている兄。

彼は明らかに僕の邪魔をする人なのだ。

それに気付いたのは、彼から直接声を今回のようにかけられたりあるいはその手に渡った物が明らかに別物にすり替わっているということが複数回起きているからだ。

つまりそういう嫌がらせを彼は、善良なフリをしながら行っている可能性が高い。

しかも、今回のようにこちらが忙しく判断力が鈍るようなタイミングを狙ってくるところも実に狡猾だと思う。

(弟のカイニスは僕の婚約者と堂々と浮気しても陛下と王妃様に庇護され、兄は兄で僕の仕事の邪魔をしてそれをさも自分が見つけてあげていますとでもいうようなそんな風に指摘し、有能な人物であるように装う。実に愚かだな。ふたりとも実力が伴わないからと人の足を引っ張ることでしか自己表現ができないのだろう)

もちろん、こちらもやられたままで済ませるつもりはない。ただ、今ここでことを荒立てて仕事がたまることは避けたいので僕は兄をまっすぐに見つめる。

「兄上、この書類は2日前に稟議を通したものですが、どうも、僕が稟議を通した後にがある。それについてこの度はご報告にきてくださったという認識で問題ありませんか。その場合、お手数をお掛けいたしました」

僕の言葉に一瞬まるで無というような顔をしたがすぐにまた困ったような顔に戻る。

「いえいえ。弟のためですからお気になさらず。私はてっきりとてもがあったのかと思って報告にきたのですが、まさか改ざんされているなんて、誰がそんな酷いことをしたのでしょうね」

「ええ。忙しくても僕は書類を通した後は一定期間その控えを保存しておりますので間違いなく改ざんされていることは確認できるでしょう。本当に、仕事が増えてしまってとても困りますね。この件については追ってしっかりと調査を行う必要がありそうです」

「そうですね。私も可愛い弟を苦しめるような人間がいるなんて許せないので協力しましょう」

その言葉に内心で「邪魔の間違えでは??」と考えたがそれをここで、何の証拠も双方ない中に口にするのはリスクが高い。

「ありがとうございます。ぜひ協力をお願いいたします」

「ええ、もちろん」

笑顔で握手を交わす僕らを見ている周囲は、お互いが纏う冷たい空気になるべく見ないようにしている様子が分かる。そんな中、別の用事で側から離れていたモウカが戻ってきた。

「ダイチ殿下、何か御用ですか??」

とても冷たい声で聞いたモウカが兄を見た。その様子に一瞬傷ついたような顔をしたがやはりすぐに困ったような笑顔を浮かべた。

「ええ。可愛い弟を心配してきたのですよ。クーサーは働きすぎですから」

「……ダイチ殿下、クーサー殿下は昨日スケジュールが変更となりとてもお忙しいので、用事が終わったのなら早急にお戻り頂きたい」

「……忙しいのは分かってますが……」

「分かっているなら出直して頂けますでしょうか。まだ、クーサー殿下はスケジュールが立て込んでおりますので」

正直、王族への態度としては無礼な部類だ。しかし、モウカにはそれが許されている。それは兄にも分かっている。だから兄はモウカに対して言い争いはしない。

「そうですか、気が利かず申し訳ありません。クーサー、先ほどの件はまた後ほど」

そう微笑んで立ち去る兄の背を無言で見送る。

「クーサー殿下、さぁ、仕事の続きをいたしましょう」

モウカはそう言って視線を自分の側に向けさせた。その時だけ形をなさない不安が消えていくようなそんな気がした。
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