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65:黒い三つ巴の戦い
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(間違いなく、鉱山の権利書だわ……それも)
隣国とこの国の境界にある、何度も国同士が権利をどちらにするか揉めたと言われる曰く付きの場所だった。そんなある意味で拠点のような場所の権利を私にくれるというのは、ファハド王子は身分を隠す気がないと見えた。
「……その、これは本当に本物でしょうか??だとしたら私の記憶が正しければこの鉱山は我が国と、貴方の国の境界にある鉱山で利権をめぐって何度も争いがあった場所……今は隣国の王族の直轄領だったと思うのですが」
その言葉にルキヤンの表情が変わる。しかし、すぐに元の暗黒微笑に戻る。私の知らないうちにルキヤンがどんどん邪悪に染まっている気がしてちょっと凹んだがそれよりも大切なことがある。
「ははは、バレてしまいましたね。そうです。私は隣国の王族、ファハドと申します」
「……ファハド殿下。何故貴方がこのようなところに……」
マグダラ伯爵領は王都から近いが、王都ほど栄えてはいないし、周りにもっと交通の便の良い領がある。イメージは前世なら首都圏の北関東らへんくらいのイメージがが近いかもしれない。
物凄く便が悪いとかはないが、もの凄く便利でもない。せめて隣の侯爵領ならばそこにいる理由も分かるが正直謎だった。そんな疑問に子爵が答えた。
「殿下、折角隠していたのに。もう隠しても仕方ありません。実は我々は我が国の違法薬物の売人を追っておりました。その密売人がこちらの領に隠れているとの情報を掴み動いていたのです」
「違法薬物??」
脳裏に例の嫌悪剤が浮かぶ。子爵はなんとも形容しがたい表情を浮かべて続けた。
「マグダラ伯爵家も被害にあわれた嫌悪剤です。それについて扱っていた違法薬物の売人が何故かこちらの領でその薬を売りさばいていたのです」
「つまり、あの恐ろしい薬を何故かマグダラ伯爵領で蔓延させようとしていたと。シャレにならないね。民衆にそれを使い、我がマグダラ伯爵家に反感を持ったなら、一揆などが起きて立ち行かなくなる」
「その通りです。さらには以前にもご迷惑をこちらがかけている手前、なんとか解決できないかと調査をしておりました」
淡々と語る子爵の言葉に嘘は感じられない。ただ、私には気になることがあった。
「何故、その件にファハド殿下がかかわっていらっしゃるのですか??」
「……貴方に、ベアトリーチェ嬢にご迷惑をこれ以上お掛けしたくなかったのです、後はその……一方的なものですが私はベアトリーチェ嬢に好意を持っているのです」
少しはにかむようにそう答えた表情。そこには嘘はないように見えた。けれどだからといって舞い上がるほど私は子供ではない。大体いまだに彼については敵かも味方かも判然としない。
ただ、今の段階ではそこまで危害が及ばない認識でいるだけだ。
「何故、殿下が私の妹のことをご存じなのですか??」
わざと空気を読まないような感じでそう聞いたリアム。その言葉によく見ていないと気付かないが一瞬だけファハド殿下の表情が憎々し気だった気がした。まるで、恋敵にでも向けるような眼差しだった。
「そうですね、例の事件の際に被害者である貴方の写真をみたのです。そして、勝手に一目惚れした愚かな存在なのです」
「なるほど、実際に会ったことがないけど妹の美しさに惹かれたのですね。その感覚は僕ともあいそうですね」
ニコニコ微笑んでいるが、完全にリアムは彼を煽る気満載のようだ。
「ははは、お兄様である小伯爵とは気が合いそうでなによりです。そうだ、お近づきに握手でもいたしますか??」
「そうですね、ぜひ」
そう言って差し出した手をニコニコ微笑みながらリアムが握った。そして、お互いがお互いの手を潰したいのか、本気で握りあって微笑みながらにらみ合っているのがわかった。
(全く、どうやら何故かこのふたりは仲が悪いのね)
本当なら面倒なので放っておきたいが仕方ない。
「お兄様、大人げないです。それにファハド殿下はあくまで私の姿に対して好意を抱いただけです。この性格を知って恋も冷めるかもしれませんよ」
「まさか!!それはない。俺をあのあたたかい力で癒してくれた聖女への想いが冷めることはない」
そう、どさくさに紛れて手を握られた。無骨だが綺麗な手だった。
「だから、殿下、婚約者の前でおさわりは禁止です」
はははといいながら、手を払うリアム。普通に不敬で罰せられないか不安になる。
「わかっておりますよ。けれど婚約者殿は何もおっしゃらないではありませんか、兄上様」
何気なくルキヤンも挑発する、ファハド殿下。好戦的な方なのかもしれない。まぁ豹の獣人らしいのである程度荒々しいのだろう。それに対してルキヤンはこう答えた。
「僕は心の広い人間でかつベアトリーチェ嬢とはお互い愛し合う仲です。だから触れ合う程度で貴方に奪われることなどないと分かっているのですよ」
隣国とこの国の境界にある、何度も国同士が権利をどちらにするか揉めたと言われる曰く付きの場所だった。そんなある意味で拠点のような場所の権利を私にくれるというのは、ファハド王子は身分を隠す気がないと見えた。
「……その、これは本当に本物でしょうか??だとしたら私の記憶が正しければこの鉱山は我が国と、貴方の国の境界にある鉱山で利権をめぐって何度も争いがあった場所……今は隣国の王族の直轄領だったと思うのですが」
その言葉にルキヤンの表情が変わる。しかし、すぐに元の暗黒微笑に戻る。私の知らないうちにルキヤンがどんどん邪悪に染まっている気がしてちょっと凹んだがそれよりも大切なことがある。
「ははは、バレてしまいましたね。そうです。私は隣国の王族、ファハドと申します」
「……ファハド殿下。何故貴方がこのようなところに……」
マグダラ伯爵領は王都から近いが、王都ほど栄えてはいないし、周りにもっと交通の便の良い領がある。イメージは前世なら首都圏の北関東らへんくらいのイメージがが近いかもしれない。
物凄く便が悪いとかはないが、もの凄く便利でもない。せめて隣の侯爵領ならばそこにいる理由も分かるが正直謎だった。そんな疑問に子爵が答えた。
「殿下、折角隠していたのに。もう隠しても仕方ありません。実は我々は我が国の違法薬物の売人を追っておりました。その密売人がこちらの領に隠れているとの情報を掴み動いていたのです」
「違法薬物??」
脳裏に例の嫌悪剤が浮かぶ。子爵はなんとも形容しがたい表情を浮かべて続けた。
「マグダラ伯爵家も被害にあわれた嫌悪剤です。それについて扱っていた違法薬物の売人が何故かこちらの領でその薬を売りさばいていたのです」
「つまり、あの恐ろしい薬を何故かマグダラ伯爵領で蔓延させようとしていたと。シャレにならないね。民衆にそれを使い、我がマグダラ伯爵家に反感を持ったなら、一揆などが起きて立ち行かなくなる」
「その通りです。さらには以前にもご迷惑をこちらがかけている手前、なんとか解決できないかと調査をしておりました」
淡々と語る子爵の言葉に嘘は感じられない。ただ、私には気になることがあった。
「何故、その件にファハド殿下がかかわっていらっしゃるのですか??」
「……貴方に、ベアトリーチェ嬢にご迷惑をこれ以上お掛けしたくなかったのです、後はその……一方的なものですが私はベアトリーチェ嬢に好意を持っているのです」
少しはにかむようにそう答えた表情。そこには嘘はないように見えた。けれどだからといって舞い上がるほど私は子供ではない。大体いまだに彼については敵かも味方かも判然としない。
ただ、今の段階ではそこまで危害が及ばない認識でいるだけだ。
「何故、殿下が私の妹のことをご存じなのですか??」
わざと空気を読まないような感じでそう聞いたリアム。その言葉によく見ていないと気付かないが一瞬だけファハド殿下の表情が憎々し気だった気がした。まるで、恋敵にでも向けるような眼差しだった。
「そうですね、例の事件の際に被害者である貴方の写真をみたのです。そして、勝手に一目惚れした愚かな存在なのです」
「なるほど、実際に会ったことがないけど妹の美しさに惹かれたのですね。その感覚は僕ともあいそうですね」
ニコニコ微笑んでいるが、完全にリアムは彼を煽る気満載のようだ。
「ははは、お兄様である小伯爵とは気が合いそうでなによりです。そうだ、お近づきに握手でもいたしますか??」
「そうですね、ぜひ」
そう言って差し出した手をニコニコ微笑みながらリアムが握った。そして、お互いがお互いの手を潰したいのか、本気で握りあって微笑みながらにらみ合っているのがわかった。
(全く、どうやら何故かこのふたりは仲が悪いのね)
本当なら面倒なので放っておきたいが仕方ない。
「お兄様、大人げないです。それにファハド殿下はあくまで私の姿に対して好意を抱いただけです。この性格を知って恋も冷めるかもしれませんよ」
「まさか!!それはない。俺をあのあたたかい力で癒してくれた聖女への想いが冷めることはない」
そう、どさくさに紛れて手を握られた。無骨だが綺麗な手だった。
「だから、殿下、婚約者の前でおさわりは禁止です」
はははといいながら、手を払うリアム。普通に不敬で罰せられないか不安になる。
「わかっておりますよ。けれど婚約者殿は何もおっしゃらないではありませんか、兄上様」
何気なくルキヤンも挑発する、ファハド殿下。好戦的な方なのかもしれない。まぁ豹の獣人らしいのである程度荒々しいのだろう。それに対してルキヤンはこう答えた。
「僕は心の広い人間でかつベアトリーチェ嬢とはお互い愛し合う仲です。だから触れ合う程度で貴方に奪われることなどないと分かっているのですよ」
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