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44:皇帝陛下と白々しい嘘と
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王城にはすでに大勢の貴族が集まっていた。その中で、何かブツブツ言っている、ヤンデル殿下と、それを何とかしようとしている側近のクリスと、ずっと断罪廃嫡王子様系キラキラスマイルを浮かべながら小刻みに震えている、リアムの3人に囲まれているせいか、周りから奇異なものでも見るような目で見られている気がしたが、そうこうしているうちに皇帝陛下がお成りになった。
(そう、この人は……私への無実の罪を知りながら処刑を最終的に許可した人)
ヤンデル殿下によく似た、黄金の髪に青い瞳をしたその顔を私は忘れることはない。
『ベアトリーチェ、其方は皇太子妃殺害未遂の容疑で斬首刑とする』
そう宣言した時のあの残酷な眼差しを私は、はっきりと覚えていた。
だからその顔を見た時、今は違うと分かっていても足元が震えてしまう。
そんな私に気付いたのか側に居たリアムが小声で話しかけた。
「大丈夫??マイ・クイーン、少し震えているよ」
「……もっと震えている人に言われたくないわ」
本当は、その優しさが嬉しかったけど、何故か素直になれなかった。
「ツンデレは良いね。そして、マイ・クイーン。僕は君に大切なことを言わないといけない」
真剣な顔でそう言って、リアムが何かを言おうとした時、皇帝陛下が話し始めた。
「みなのもの、この度、呼び出したのは、大切な報告があるためである」
(……一体なにがはじまるの)
皇帝陛下の言葉ひとつで、その場の空気が変わった。
まるで水を打ったように静まり返った城内。皇帝陛下の次の言葉をまだかまだかと待っている。
「余には側妃との間の息子である、アレクサンドル以外にもうひとり正妃との間にも息子がいた。しかし、この息子は長年誘拐されて行方不明になっていた」
(白々しい嘘だわ)
平気であの時、私に無実の罪を着せたその人は変わらず嘘をつく。
皇帝である以上は民の混乱を招かないように真実が語れないということはあるが、前の時間軸で無実の罪で殺された時を思い起こさせた。
「しかし、この度、その皇子が離宮で不当に監禁されているのを偶然、騎士団の演習を行っていた我が国の英雄であるガルマショフ公爵視がこの度発見し保護した」
城内は静寂から打って変わりガヤガヤとところどころで声が上がった。私はこの時、周りの貴族を注意深く観察した。そして、あることに気付いた。
(あの人……確かフルーレティ侯爵……)
ひとり、一瞬だが明らかに苦々しい顔をした人物がいた。
その人物は、フルーレティ侯爵。側妃の父親だった。私はその次の皇帝陛下の言葉の間も不自然にならないようにフルーレティ侯爵を見ていた。
「みなに、この喜びを伝えよう。我が息子であるルキヤン・ドラコニアだ」
その名を呼ばれて、ゆっくりと謁見の間に現れたルキヤン。その姿に思わず私は目を見張った。
漆黒の髪に赤い瞳、皇族の正装に身を包んだその姿はあまりにも綺麗で言葉にできなかった。
元々離宮でお互いボロボロな状態しか知らないのもあるがルキヤンはこんなに美しい少年だったのだ。
周りの貴族達も同じことを考えていたのか、大半がルキヤンに見惚れていた。しかし、その中でひとり私が見ていた男が声を上げた。
「皇帝陛下、恐れ多くもルキヤン皇子は黒い髪をしております。その場合、忌子のはずでございます」
この祝福の舞台で、そう口にするフルーレティ侯爵の目は血走っていた。
しかし、それに答えたのは皇帝陛下ではなく、すぐ側に控えて騎士団長として正装で鎧を着用していたマクシム様がとても冷え切った目でフルーレティ侯爵を見ながら告げた。
「それに関しては、『予言の書』に誤りがあったようだ」
凛とした口調できっぱりと告げられる。しかし、そこでフルーレティ侯爵は食い下がる。
「このようなことを言いたくはありませんが、『予言の書』の意訳は多くの文官と神官の手を渡り決定しているものでございます。そこに誤りがあるなど……」
「解釈に誤りがあったというべきか、すくなくとも黒髪の皇族が悪とする記述はそこにはありません。ただ、ふたりの皇子たちが両方仲良く手をとらないと、後世で問題が起きるというものでした。それをその時の政権争いに負けた方の容姿を持つものを忌子にするというのは謁見行為にあたります」
「しかし……」
なおも、言い募ろうとしたフルーレティ侯爵を止めたのは意外な人物だった。
「おじい様、おやめください。何故そこまでルキヤンを、弟を排除されようとするのですか??」
「アレクサンドル殿下……」
側妃の息子であるということは、フルーレティ侯爵はヤンデル殿下の祖父であることは分かってはいたが思いもよらない言葉に呆然としていた。
「……私は……」
(そう、この人は……私への無実の罪を知りながら処刑を最終的に許可した人)
ヤンデル殿下によく似た、黄金の髪に青い瞳をしたその顔を私は忘れることはない。
『ベアトリーチェ、其方は皇太子妃殺害未遂の容疑で斬首刑とする』
そう宣言した時のあの残酷な眼差しを私は、はっきりと覚えていた。
だからその顔を見た時、今は違うと分かっていても足元が震えてしまう。
そんな私に気付いたのか側に居たリアムが小声で話しかけた。
「大丈夫??マイ・クイーン、少し震えているよ」
「……もっと震えている人に言われたくないわ」
本当は、その優しさが嬉しかったけど、何故か素直になれなかった。
「ツンデレは良いね。そして、マイ・クイーン。僕は君に大切なことを言わないといけない」
真剣な顔でそう言って、リアムが何かを言おうとした時、皇帝陛下が話し始めた。
「みなのもの、この度、呼び出したのは、大切な報告があるためである」
(……一体なにがはじまるの)
皇帝陛下の言葉ひとつで、その場の空気が変わった。
まるで水を打ったように静まり返った城内。皇帝陛下の次の言葉をまだかまだかと待っている。
「余には側妃との間の息子である、アレクサンドル以外にもうひとり正妃との間にも息子がいた。しかし、この息子は長年誘拐されて行方不明になっていた」
(白々しい嘘だわ)
平気であの時、私に無実の罪を着せたその人は変わらず嘘をつく。
皇帝である以上は民の混乱を招かないように真実が語れないということはあるが、前の時間軸で無実の罪で殺された時を思い起こさせた。
「しかし、この度、その皇子が離宮で不当に監禁されているのを偶然、騎士団の演習を行っていた我が国の英雄であるガルマショフ公爵視がこの度発見し保護した」
城内は静寂から打って変わりガヤガヤとところどころで声が上がった。私はこの時、周りの貴族を注意深く観察した。そして、あることに気付いた。
(あの人……確かフルーレティ侯爵……)
ひとり、一瞬だが明らかに苦々しい顔をした人物がいた。
その人物は、フルーレティ侯爵。側妃の父親だった。私はその次の皇帝陛下の言葉の間も不自然にならないようにフルーレティ侯爵を見ていた。
「みなに、この喜びを伝えよう。我が息子であるルキヤン・ドラコニアだ」
その名を呼ばれて、ゆっくりと謁見の間に現れたルキヤン。その姿に思わず私は目を見張った。
漆黒の髪に赤い瞳、皇族の正装に身を包んだその姿はあまりにも綺麗で言葉にできなかった。
元々離宮でお互いボロボロな状態しか知らないのもあるがルキヤンはこんなに美しい少年だったのだ。
周りの貴族達も同じことを考えていたのか、大半がルキヤンに見惚れていた。しかし、その中でひとり私が見ていた男が声を上げた。
「皇帝陛下、恐れ多くもルキヤン皇子は黒い髪をしております。その場合、忌子のはずでございます」
この祝福の舞台で、そう口にするフルーレティ侯爵の目は血走っていた。
しかし、それに答えたのは皇帝陛下ではなく、すぐ側に控えて騎士団長として正装で鎧を着用していたマクシム様がとても冷え切った目でフルーレティ侯爵を見ながら告げた。
「それに関しては、『予言の書』に誤りがあったようだ」
凛とした口調できっぱりと告げられる。しかし、そこでフルーレティ侯爵は食い下がる。
「このようなことを言いたくはありませんが、『予言の書』の意訳は多くの文官と神官の手を渡り決定しているものでございます。そこに誤りがあるなど……」
「解釈に誤りがあったというべきか、すくなくとも黒髪の皇族が悪とする記述はそこにはありません。ただ、ふたりの皇子たちが両方仲良く手をとらないと、後世で問題が起きるというものでした。それをその時の政権争いに負けた方の容姿を持つものを忌子にするというのは謁見行為にあたります」
「しかし……」
なおも、言い募ろうとしたフルーレティ侯爵を止めたのは意外な人物だった。
「おじい様、おやめください。何故そこまでルキヤンを、弟を排除されようとするのですか??」
「アレクサンドル殿下……」
側妃の息子であるということは、フルーレティ侯爵はヤンデル殿下の祖父であることは分かってはいたが思いもよらない言葉に呆然としていた。
「……私は……」
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