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39.小動物に何かあるのはムツゴコロが許さない

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「シューゾー!!えっ、血!!怪我をしている!!!!!」

「みぃーっ」

そこには小さなシューゾーがその三毛猫特有の愛らしい柄、具体的には足先が赤く染まっているのが分かった。間違いなく怪我をしている。

「あああ、駄目です、これはいけません!!」

僕は首コロリを10回経験しているので自分の血は割と平気です。しかし、大切な人や、小さな小動物が怪我をしているのは自分の感じる痛み以上に痛みを感じてしまうタイプです。

具体的には僕の中にいるムツゴ〇ウさんもとい百獣の長魂、ムツゴコロが触発されて見ていられません。

「……早く手当をしないと……」

そう焦る僕に、何故かとてもイヴァン殿下が複雑な顔をしています。そんな僕の横でヴァンさんもとても困った顔をしています。ちょっと状況が分かりませんが太陽神も『よく、時間が解決してくれると言うけれど、そうは思わない。お米食べろ!!』と真っ当なことをおっしゃっている。この状況は小さなシューゾーの命を危険にさらすものである。

(なんとか、止血して治療しないといけない、けれど……)

僕には、動物の怪我を治すことに対しての専門的な知識はありません。しかもこの世界には馬や牛などの家畜専門の獣医さんはいますが、ムツゴ〇ウさんもとい百獣の長のような存在はいません。

「みゅーっ……みぃ」

太陽神のように意思の強い瞳がこちらを見つめています。きっと救ってほしいと訴えているに違いありません。そう考えた時、フッとヴァンさんがこの間治癒魔法が使えると話していたのを思い出しました。

ちょっといかがわしい感じでしたが背に腹はかえられません。

「ヴァンさん、以前治癒魔法を使えるとおっしゃってましたよね!?どうか、シューゾーを助けてください!!」

「あ、その……」

とても困った表情をする、ヴァンさん。そして、何とも言えない表情でイヴァン殿下を見つめています。そのヴァンさんの視線にイヴァン殿下はバツが悪そうに目を逸らしました。

ちょっと今の状況に全くそぐわないふたりの様子に疑問を抱きながらも、ことは一刻を争うためもう一度ヴァンさんに言いました。

「お願いです、シューゾーが助かるならなんでもしますから……」

「それはいけない!!だめだ、その、えっと、ヴァンじゃなく、俺が治す」

何故かイヴァン殿下がオオアリクイの威嚇のポーズで僕とヴァンさんの間に入ってきました。というかイヴァン殿下も治癒魔法が使えるということでしょうか。

魔法はとても貴重ですが、確かに王族なら魔法が使えるのは自然です。ただ、いままでの首コロリの中でイヴァン殿下が僕の前で魔法を使用したことはないため、どのような魔法を使えるかは知りません。

しかし、治癒魔法が使えるならこの際、後が少し怖い気がしますが藁もといイヴァン殿下にも縋りたい気持ちです。これが首コロリを近づける結果になるのは死ぬほど嫌ですが愛するシューゾーのため、僕の熱いムツゴコロが叫びました。

「お願いします!!シューゾーを、どうかお救いください」

何故か僕の顔を凝視しているイヴァン殿下だったが、すぐに元の表情に戻った。そして……、

「任せろ。ルドルフたんと水着のためなら千回でも」
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