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37.いつもと違うヴァンさん

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「とても気が重いです……」

今日は、イヴァン殿下とのデートというなの首攻防戦その01が行われる予定なので朝からとても気が重いです。この攻防戦をとりあえず制して首コロリ回避を推し進めたいところです。

「おはよう、ルドルフど……、ルドルフ」

何故かいつもの馴れ馴れしさ0のヴァンさんがとても適切な距離で僕に挨拶をしました。いつもヴァンさんには僕から挨拶していたのでびっくりしましたが、そこまでの違和感ではないので僕もいつものように挨拶を返しました。

「おはようございます、ヴァンさん、良い天気ですね。太陽神日和です」

「太陽神日和??」

何故かすごく不思議そうな顔をするヴァンさん。いつもは特に気にしない部分なのですが、もしかしたら今日僕が殿下と会うということで護衛をしてくださっているので緊張してちょっと情緒が不安定なのかもしれません。

その気持ちは僕も同じですごくよくわかります。むしろ同志とすら今日なら思えます。

「ヴァンさんも僕につきそうので緊張しているのですね。元気出してください。そのささやかですがこれを」

そう言って、僕は自身が刺繍したハンカチを1枚ヴァンさんへ手渡しました。それは太陽神のご尊顔が刺繍された作品の1枚で、いつもお世話になっているヴァンさんへのささやかなお礼でもありました。

「ありがとう……えっ??誰だこれ??」

ハンカチを受け取り、それを開いたヴァンさんが叫びました。そしてまじまじとハンカチを見つめながら何を言おうとしていました。

もしかしたら、マイキーみたいに「テニスプレイヤー」と太陽神に対して意味の分からないことを言うのかもしれません。なので少し身構えたのですが……。

「この……偉大な感じがする方は誰だ??」

ヴァンさんの瞳がいつもよりキラキラしている気がしました。間違えありません。いままでは気づきませんでしたがヴァンさんには太陽神信者の才能が有りそうです。ここは神の信徒としてしっかり布教活動をしなければいけません。太陽神も「お醤油ベースのお吸い物にあんこ。非常識の中に常識あり。お米食べろ!!」とおっしゃっておりますので。ああ、お米とあんことお吸い物が全て食べたいです。

「ヴァンさん!!すばらしい。ヴァンさんにも太陽神様の良さが分かるのですね、ぜひ太陽神について……」

トントン!!

僕が熱い情熱をヴァンさんにぶつけようとした時、玄関の扉が物凄く元気に叩かれました。

「……誰でしょうか??まさかイヴァン殿下ではないですよね……」

だとしたら早すぎます。まだ早朝なのですから。

「誰だ??」

ヴァンさんが今まで見たことのない隙のない勇ましい動作で、ドアの前に立ちました。しかし、反応がありません。

「……ルドルフど、ルドルフ、俺が確認するので部屋の奧の方にいてほしい」

「分かりました、あ、あのくれぐれもお気をつけください」

「ああ」

なんでしょうか、今日のヴァンさん物凄くイケメンです。いつもなんかこう変態感があるのですが今のヴァンさんはそういう感じがない、例えるならいつもは傲慢変態、王族くらい偉そうな人なのに、今日のヴァンさんは騎士のような、まさに小辺境伯様の名に恥じない雰囲気があります。

僕がトイレしている時に天井によじ登っていたり、トイレの個室の入り込もうとした変態と同一人物にはとても思えません。

そこまで考えてある可能性に行き当たりました。

(もしかして今日のヴァンさんは……)

バン!!

ヴァンさんが素早い動作で部屋のドアを開けましたが……。

「誰もいないようだな……。ん??これは……」

ヴァンさんは何かをかがんで拾いあげました。

「何かありましたか??」

「まだ、安全が確認されていないのでその場にいてくれ」

僕を制するように手を突き出したヴァンさん。その姿はまるでオオアリクイの威嚇のポーズなのですがその勇ましい空気感も相まってとても恰好良いです。

「わかりました」

それからヴァンさんは何かを探っているような仕草の後にコクリと一度頷いてから扉を閉めて施錠してからこちらに歩いてきました。

「何者かがいたのは間違いないようだ。これが置かれていた」

そう言ってヴァンさんが1枚の紙きれを僕に見せました。先ほどかがんだ時に拾った物のようです。それを受け取り中身を見た僕は思わず目を見開きました。

どこかで見覚えのある筆跡の血文字で一言。

『注意しろ、狙われている』
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