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36.主君のわくわくが止まらない件(ヴァン視点(影武者))
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「よし、作戦通りだな」
「そうですね」
皆が寝静まった夜、こっそりと寝ている別荘を抜けてきた主君がそれはもう満面の笑みを俺に向けてくるが、死んだ魚のような目になるのを抑えることができなかった。
結局あの通信の後、俺は王都の有名なブランド店で水着を購入する羽目になった。それも明らかに特殊性癖があると疑われるようなデザインの水着を買ったのだから完全に変態さんというレッテルを世の中から張られてもおかしくない。
しかも、流石に王太子である主君が変態であることが露出しないために、小辺境伯である本来の俺として購入せざる得なかったこともこの言葉に言い表わせられない絶望と相まっている。
「ところで、奴らの動きはどうだ??」
「……少し気になることがあります。実は数日前に手紙が届いたのですが、日はズレていましたがデネブ公爵令息もこちらを訪れるようでした」
「やはりな。先に手を打っておいてよかった」
ニヤリと笑うその顔は完全なる悪役にしか見えないが、どうやら俺には分からない部分もあるが主君の契約通りにことは進んでいるらしい。
「俺の方でも何か動く必要はありますか??」
「ああ、問題ない。それより大事なことがある」
とても真剣な顔で、主君は言い放つ。
「水着は持ってきたか??」
(そちらのがデネブ公爵令息の動向より大切とか、頭がおかしい。いや、主君が頭がおかしくなかったことなんて今までなかった気もしてきたが……)
「はい、ご指定の物をお持ちいたしました」
そう言って、綺麗にラッピングされているふたつの包みを差し出すと、それはもう良い笑顔でそれを受け取る主君。心の奥底でいつかこの仕事をやめてやろうと誓いつつも今はとりあえず我慢する。
「よくやった。後分かっていると思うが、明日は俺は可愛い可愛い愛おしいルドたんとデートをするから入れ替われ、というかこの後入れ替わる」
「……承知いたしました」
そう承諾したものの、そう言えば主君は俺に成り代わってどのような距離でベガ公爵令息と接しているのだろうか、その部分は確認しておかないといけない。
「主君、確認なのですが、ふだんベガ公爵令息とどのように接しているのですか??入れ替わりがバレないようにする必要があるので参考にしたく……」
「ああ、まずトイレの個室にふたりで入るくらい親み……」
「待ってください」
聞き捨てならないセリフが聞こえて思わず止めてしまった。待って欲しい。トイレの個室にふたりで入るとか恋人同士でも聞いたことがない。
主君はともかくベガ公爵令息はあのようなとても清楚なように見えて実はど変態だったのか??自分の中でベガ公爵令息への評価が急下降していく。
「その、主君。流石に俺の体で自由にしすぎです。その距離感は婚約者が居る者としては不適切過ぎて最悪、不貞が疑われるレベルです」
「俺が中身の時はいいだろう。あ、お前が中身の時はその距離感は絶対やめろ」
(……一応ヴァンとして接するのだから急に距離が離れたら違和感しかないと思うのだが……)
「主君が中身の時も周囲に人がいるときはやめた方が良いかと。特にデネブ公爵令息がその辺りを知ればそこからベガ公爵令息の良くない噂が流れるやもしれません。もちろん、俺はそのような距離では接しませんのでご安心ください」
「……まぁ気を付ける」
絶対に気を付けないだろうという表情で返事をした主君に内心で大きなため息をつきながら、明日の段取りをして、久々に俺は本来のヴァンに戻ったのだった。
「そうですね」
皆が寝静まった夜、こっそりと寝ている別荘を抜けてきた主君がそれはもう満面の笑みを俺に向けてくるが、死んだ魚のような目になるのを抑えることができなかった。
結局あの通信の後、俺は王都の有名なブランド店で水着を購入する羽目になった。それも明らかに特殊性癖があると疑われるようなデザインの水着を買ったのだから完全に変態さんというレッテルを世の中から張られてもおかしくない。
しかも、流石に王太子である主君が変態であることが露出しないために、小辺境伯である本来の俺として購入せざる得なかったこともこの言葉に言い表わせられない絶望と相まっている。
「ところで、奴らの動きはどうだ??」
「……少し気になることがあります。実は数日前に手紙が届いたのですが、日はズレていましたがデネブ公爵令息もこちらを訪れるようでした」
「やはりな。先に手を打っておいてよかった」
ニヤリと笑うその顔は完全なる悪役にしか見えないが、どうやら俺には分からない部分もあるが主君の契約通りにことは進んでいるらしい。
「俺の方でも何か動く必要はありますか??」
「ああ、問題ない。それより大事なことがある」
とても真剣な顔で、主君は言い放つ。
「水着は持ってきたか??」
(そちらのがデネブ公爵令息の動向より大切とか、頭がおかしい。いや、主君が頭がおかしくなかったことなんて今までなかった気もしてきたが……)
「はい、ご指定の物をお持ちいたしました」
そう言って、綺麗にラッピングされているふたつの包みを差し出すと、それはもう良い笑顔でそれを受け取る主君。心の奥底でいつかこの仕事をやめてやろうと誓いつつも今はとりあえず我慢する。
「よくやった。後分かっていると思うが、明日は俺は可愛い可愛い愛おしいルドたんとデートをするから入れ替われ、というかこの後入れ替わる」
「……承知いたしました」
そう承諾したものの、そう言えば主君は俺に成り代わってどのような距離でベガ公爵令息と接しているのだろうか、その部分は確認しておかないといけない。
「主君、確認なのですが、ふだんベガ公爵令息とどのように接しているのですか??入れ替わりがバレないようにする必要があるので参考にしたく……」
「ああ、まずトイレの個室にふたりで入るくらい親み……」
「待ってください」
聞き捨てならないセリフが聞こえて思わず止めてしまった。待って欲しい。トイレの個室にふたりで入るとか恋人同士でも聞いたことがない。
主君はともかくベガ公爵令息はあのようなとても清楚なように見えて実はど変態だったのか??自分の中でベガ公爵令息への評価が急下降していく。
「その、主君。流石に俺の体で自由にしすぎです。その距離感は婚約者が居る者としては不適切過ぎて最悪、不貞が疑われるレベルです」
「俺が中身の時はいいだろう。あ、お前が中身の時はその距離感は絶対やめろ」
(……一応ヴァンとして接するのだから急に距離が離れたら違和感しかないと思うのだが……)
「主君が中身の時も周囲に人がいるときはやめた方が良いかと。特にデネブ公爵令息がその辺りを知ればそこからベガ公爵令息の良くない噂が流れるやもしれません。もちろん、俺はそのような距離では接しませんのでご安心ください」
「……まぁ気を付ける」
絶対に気を付けないだろうという表情で返事をした主君に内心で大きなため息をつきながら、明日の段取りをして、久々に俺は本来のヴァンに戻ったのだった。
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