推しを見守る壁になると誓ったやり直し悪役令息は、急にヤンデレ王太子に溺愛されて困ります!!

ひよこ麺

文字の大きさ
上 下
12 / 41

11.波乱のお茶会で過去にはない展開になりました

しおりを挟む
「あ、あの……」

そう言って話しかけてきた人物は、ジョバンニの取り巻きで先ほど失敗してやり玉に挙げらえていた子爵令息でした。

彼をマジマジと見ると明るい茶色の髪に、金色のつり瞳をしていてネコっぽい雰囲気の少年でした。

(彼の名前なんでしたっけ……)

先ほど、一応名前が分からなくても良いじゃない的なことを言いましたが、だからと言って名前を間違えて良い理由にはなりません。僕は他人には優しいですが自分には厳しい男です。

必死に彼の名前を思い出そうと思ったのですが、確か、サドかマゾ的な名前に最後「ル」がつくようなという記憶がぼんやり浮かびましたが、その先にひらめきがありません。

(こうなれば彼がどちらっぽいかで選ぶしかないありません。二択なので結構当たるかなと思いますし、まずサドですが、彼はSではないでしょう。先ほども僕に意地悪しようとしましたが、アレはいじめでありサドのような巧みさはありません。つまりSとしての才能は彼にはなかったです。だと考えればおのずとマゾに違いありません)

そこまで思考を巡らせて僕は彼を見つめ返して力強く答えました。

、いかがいたしましたか??」

渾身の微笑みを浮かべて見つめてみました。決まりました。ちょっとドヤ顔したい気持ちですが必死に我慢しています。

……しかし、

「あの……、俺の名前はサドルです。ミゲル・サドルと言います」

(ええ!!サドの方だった!!いや、むしろサドマゾで覚えるのはやめです。サドル、自転車とかそういう方で覚えましょう。自転車の部品の名前の子爵令息、自転車の部品の名前の子爵令息、よし覚えました)

脳内で必死に覚え方を復唱しました。

「これは、申し訳ございません。うっかり覚え間違えてしまって」

「いえいえ、いいですよ。それより先ほどは本当に申し訳ございませんでした。そして、お救い頂きありがとうございました」

張りつめた空気は解除されたようですが、名前間違えは恥ずかしいです。

(今度こそ間違えません。えっと自転車の部品の子爵令息さんです。……あ、自転車の部品ってハンドルでしたっけサドルでしたっけ??)

「お気になさらず。それより、私のことはミゲルと呼んで頂けませんか??その……先ほどの恩をお返ししたく……」

そう言って恭しく礼をされて、目玉が飛び出るくらいびっくりしました。

今までジョバンニの取り巻きには嫌がらせをされることはあっても、謝られたことなんて今まで1度もありませんでした。ましてや名前で呼んでほしいとか、色々あってお友達はマイキーと心の太陽神くらいしかいなかった僕なのでとても嬉しいことです。

ちなみにヨハネ様との関係は僕がねこ様の下僕だったので、友達のように対等なものではありません。

「良いのですか??えっと、ではミゲル様とお呼びいたしますね。僕のこともルドルフってお呼びください」

「ありがとうございます。やはり、俺は貴方に決めました」

何かを決意した眼差しを向けるミゲル。何かを決意することは並大抵ではありませんが良いことなのでここは優しく見守りたいところですが……、

「俺の忠誠を貴方に誓わせてください!!」

前言撤回。これはいけません。どうやらミゲルのご実家は騎士の血筋のようです。

騎士はその剣を持って生涯たったひとりに忠誠を誓うのです。つまり、たったひとりだけにしか忠誠は誓えませんし取り消しも不可です。

「だめです!!忠誠はやすやすと誓えるものではありません。それにミゲル様はジョバンニ様に忠誠を誓われていたのではないですか??」

ジョバンニの取り巻きをして、僕に嫌みを言ったくらいです。それに彼は割と目立つ取り巻きで今日こそ失敗しましたが今までの首コロリ10回のほぼすべてで、ジョバンニに付き従っていた方です。

モブという扱いかもしれないですが必ずいるモブみたいな割とぶれない僕から見るとジョバンニ側の人間です。

きっとジョバンニに心酔しているはずと思ってそう言ったのですが、ミゲルは一度何かを考えるように目を逸らしましたが、しばらくしてから決意したように僕をまっすぐに見つめました。

「確かに、俺はずっとジョバンニ様に従ってきました。けれど、それは忠誠からではありません。俺の忠誠は誠実な主君に捧げたいです。とはいっても信じてもらえないと思いますので貴方への忠誠の証を今晩必ずお持ちいたします」

「忠誠の証ですか??」

「はい。そちらを見てからの検討で構いません。俺は貴方の騎士になりたいのです」

なんだろう、ややこしいことになってきました。というか今回はイレギュラーが多すぎます。

ヴァンさんに始まり、イヴァン殿下の態度やジョバンニの失敗に、ジョバンニの取り巻きからの忠誠を誓われるイベント。

しかし、彼のようなに真剣に向き合ってくれる人間にはちゃんと真正面から向き合うのが太陽神の教えです。

「分かりました。ただ、ひとりでお会いする訳にはいかないので身内を同席させます」

「もちろん構いません」

そうして、会話が終わると、彼は何か重荷が下りたようなさわやかな足取りで立ち去っていきました。

「その身内はもちろん俺だろう??」

「うわぁ!!ヴァンさんいつのまに側にいたのですか??」

鼻先がつくほど側にいつの間にかいたヴァンさんに驚いて叫んでしまいました。

「ずっと側にいたぞ。それこそ息がかかるくらいすぐ側に……」

その言葉に、ヴァンさんも僕と同じヤンデレ気質な人かもと変な納得をしました。

僕とヴァンさんは従兄弟ですし、血筋的にそう言う家なのかもしれないと、首コロリ10回目にして初めて知りました。

「……お願いしても良いですか??」

家族はもちろん使用人にも頼れるか怪しい案件だったので、小辺境伯であるヴァンさんなら強いと思うので適任だなと思いましたが、流石に個人的すぎる内容だったので来ないかもと思ったのは取り越し苦労でした。

「当たり前だ。むしろ嫌だと言ってもついて行った」

凄く良い笑顔ですが、完全なるストーカー発言のヴァンさんに、なんとも言えない気持ちになりました。
しおりを挟む
感想 40

あなたにおすすめの小説

婚約者の側室に嫌がらせされたので逃げてみました。

アトラス
恋愛
公爵令嬢のリリア・カーテノイドは婚約者である王太子殿下が側室を持ったことを知らされる。側室となったガーネット子爵令嬢は殿下の寵愛を盾にリリアに度重なる嫌がらせをしていた。 いやになったリリアは王城からの逃亡を決意する。 だがその途端に、王太子殿下の態度が豹変して・・・ 「いつわたしが婚約破棄すると言った?」 私に飽きたんじゃなかったんですか!? …………………………… たくさんの方々に読んで頂き、大変嬉しく思っています。お気に入り、しおりありがとうございます。とても励みになっています。今後ともどうぞよろしくお願いします!

堕とされた悪役令息

SEKISUI
BL
 転生したら恋い焦がれたあの人がいるゲームの世界だった  王子ルートのシナリオを成立させてあの人を確実手に入れる  それまであの人との関係を楽しむ主人公  

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

やり直せるなら、貴方達とは関わらない。

いろまにもめと
BL
俺はレオベルト・エンフィア。 エンフィア侯爵家の長男であり、前世持ちだ。 俺は幼馴染のアラン・メロヴィングに惚れ込み、恋人でもないのにアランは俺の嫁だと言ってまわるというはずかしい事をし、最終的にアランと恋に落ちた王太子によって、アランに付きまとっていた俺は処刑された。 処刑の直前、俺は前世を思い出した。日本という国の一般サラリーマンだった頃を。そして、ここは前世有名だったBLゲームの世界と一致する事を。 こんな時に思い出しても遅せぇわ!と思い、どうかもう一度やり直せたら、貴族なんだから可愛い嫁さんと裕福にのんびり暮らしたい…! そう思った俺の願いは届いたのだ。 5歳の時の俺に戻ってきた…! 今度は絶対関わらない!

婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい

恋愛
婚約者には初恋の人がいる。 王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。 待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。 婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。 従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。 ※なろうさんにも公開しています。 ※短編→長編に変更しました(2023.7.19)

博愛主義の成れの果て

135
BL
子宮持ちで子供が産める侯爵家嫡男の俺の婚約者は、博愛主義者だ。 俺と同じように子宮持ちの令息にだって優しくしてしまう男。 そんな婚約を白紙にしたところ、元婚約者がおかしくなりはじめた……。

じゃない方の私が何故かヤンデレ騎士団長に囚われたのですが

カレイ
恋愛
 天使な妹。それに纏わりつく金魚のフンがこの私。  両親も妹にしか関心がなく兄からも無視される毎日だけれど、私は別に自分を慕ってくれる妹がいればそれで良かった。  でもある時、私に嫉妬する兄や婚約者に嵌められて、婚約破棄された上、実家を追い出されてしまう。しかしそのことを聞きつけた騎士団長が何故か私の前に現れた。 「ずっと好きでした、もう我慢しません!あぁ、貴方の匂いだけで私は……」  そうして、何故か最強騎士団長に囚われました。

いじめっこ令息に転生したけど、いじめなかったのに義弟が酷い。

えっしゃー(エミリオ猫)
BL
オレはデニス=アッカー伯爵令息(18才)。成績が悪くて跡継ぎから外された一人息子だ。跡継ぎに養子に来た義弟アルフ(15才)を、グレていじめる令息…の予定だったが、ここが物語の中で、義弟いじめの途中に事故で亡くなる事を思いだした。死にたくないので、優しい兄を目指してるのに、義弟はなかなか義兄上大好き!と言ってくれません。反抗期?思春期かな? そして今日も何故かオレの服が脱げそうです? そんなある日、義弟の親友と出会って…。

処理中です...