推しを見守る壁になると誓ったやり直し悪役令息は、急にヤンデレ王太子に溺愛されて困ります!!

ひよこ麺

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11.波乱のお茶会で過去にはない展開になりました

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「あ、あの……」

そう言って話しかけてきた人物は、ジョバンニの取り巻きで先ほど失敗してやり玉に挙げらえていた子爵令息でした。

彼をマジマジと見ると明るい茶色の髪に、金色のつり瞳をしていてネコっぽい雰囲気の少年でした。

(彼の名前なんでしたっけ……)

先ほど、一応名前が分からなくても良いじゃない的なことを言いましたが、だからと言って名前を間違えて良い理由にはなりません。僕は他人には優しいですが自分には厳しい男です。

必死に彼の名前を思い出そうと思ったのですが、確か、サドかマゾ的な名前に最後「ル」がつくようなという記憶がぼんやり浮かびましたが、その先にひらめきがありません。

(こうなれば彼がどちらっぽいかで選ぶしかないありません。二択なので結構当たるかなと思いますし、まずサドですが、彼はSではないでしょう。先ほども僕に意地悪しようとしましたが、アレはいじめでありサドのような巧みさはありません。つまりSとしての才能は彼にはなかったです。だと考えればおのずとマゾに違いありません)

そこまで思考を巡らせて僕は彼を見つめ返して力強く答えました。

、いかがいたしましたか??」

渾身の微笑みを浮かべて見つめてみました。決まりました。ちょっとドヤ顔したい気持ちですが必死に我慢しています。

……しかし、

「あの……、俺の名前はサドルです。ミゲル・サドルと言います」

(ええ!!サドの方だった!!いや、むしろサドマゾで覚えるのはやめです。サドル、自転車とかそういう方で覚えましょう。自転車の部品の名前の子爵令息、自転車の部品の名前の子爵令息、よし覚えました)

脳内で必死に覚え方を復唱しました。

「これは、申し訳ございません。うっかり覚え間違えてしまって」

「いえいえ、いいですよ。それより先ほどは本当に申し訳ございませんでした。そして、お救い頂きありがとうございました」

張りつめた空気は解除されたようですが、名前間違えは恥ずかしいです。

(今度こそ間違えません。えっと自転車の部品の子爵令息さんです。……あ、自転車の部品ってハンドルでしたっけサドルでしたっけ??)

「お気になさらず。それより、私のことはミゲルと呼んで頂けませんか??その……先ほどの恩をお返ししたく……」

そう言って恭しく礼をされて、目玉が飛び出るくらいびっくりしました。

今までジョバンニの取り巻きには嫌がらせをされることはあっても、謝られたことなんて今まで1度もありませんでした。ましてや名前で呼んでほしいとか、色々あってお友達はマイキーと心の太陽神くらいしかいなかった僕なのでとても嬉しいことです。

ちなみにヨハネ様との関係は僕がねこ様の下僕だったので、友達のように対等なものではありません。

「良いのですか??えっと、ではミゲル様とお呼びいたしますね。僕のこともルドルフってお呼びください」

「ありがとうございます。やはり、俺は貴方に決めました」

何かを決意した眼差しを向けるミゲル。何かを決意することは並大抵ではありませんが良いことなのでここは優しく見守りたいところですが……、

「俺の忠誠を貴方に誓わせてください!!」

前言撤回。これはいけません。どうやらミゲルのご実家は騎士の血筋のようです。

騎士はその剣を持って生涯たったひとりに忠誠を誓うのです。つまり、たったひとりだけにしか忠誠は誓えませんし取り消しも不可です。

「だめです!!忠誠はやすやすと誓えるものではありません。それにミゲル様はジョバンニ様に忠誠を誓われていたのではないですか??」

ジョバンニの取り巻きをして、僕に嫌みを言ったくらいです。それに彼は割と目立つ取り巻きで今日こそ失敗しましたが今までの首コロリ10回のほぼすべてで、ジョバンニに付き従っていた方です。

モブという扱いかもしれないですが必ずいるモブみたいな割とぶれない僕から見るとジョバンニ側の人間です。

きっとジョバンニに心酔しているはずと思ってそう言ったのですが、ミゲルは一度何かを考えるように目を逸らしましたが、しばらくしてから決意したように僕をまっすぐに見つめました。

「確かに、俺はずっとジョバンニ様に従ってきました。けれど、それは忠誠からではありません。俺の忠誠は誠実な主君に捧げたいです。とはいっても信じてもらえないと思いますので貴方への忠誠の証を今晩必ずお持ちいたします」

「忠誠の証ですか??」

「はい。そちらを見てからの検討で構いません。俺は貴方の騎士になりたいのです」

なんだろう、ややこしいことになってきました。というか今回はイレギュラーが多すぎます。

ヴァンさんに始まり、イヴァン殿下の態度やジョバンニの失敗に、ジョバンニの取り巻きからの忠誠を誓われるイベント。

しかし、彼のようなに真剣に向き合ってくれる人間にはちゃんと真正面から向き合うのが太陽神の教えです。

「分かりました。ただ、ひとりでお会いする訳にはいかないので身内を同席させます」

「もちろん構いません」

そうして、会話が終わると、彼は何か重荷が下りたようなさわやかな足取りで立ち去っていきました。

「その身内はもちろん俺だろう??」

「うわぁ!!ヴァンさんいつのまに側にいたのですか??」

鼻先がつくほど側にいつの間にかいたヴァンさんに驚いて叫んでしまいました。

「ずっと側にいたぞ。それこそ息がかかるくらいすぐ側に……」

その言葉に、ヴァンさんも僕と同じヤンデレ気質な人かもと変な納得をしました。

僕とヴァンさんは従兄弟ですし、血筋的にそう言う家なのかもしれないと、首コロリ10回目にして初めて知りました。

「……お願いしても良いですか??」

家族はもちろん使用人にも頼れるか怪しい案件だったので、小辺境伯であるヴァンさんなら強いと思うので適任だなと思いましたが、流石に個人的すぎる内容だったので来ないかもと思ったのは取り越し苦労でした。

「当たり前だ。むしろ嫌だと言ってもついて行った」

凄く良い笑顔ですが、完全なるストーカー発言のヴァンさんに、なんとも言えない気持ちになりました。
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