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07.波乱のお茶会と花の意味

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首がコロリとは落ちない程度の失敗は寛大に許したい精神です。

その言葉に当事者とジョバンニにの取り巻きが息を飲むのが分かりましたが、首コロリ10回以上、空気読めない系の僕は気にしたりはしません。

陰口どんとこい、悪口どんとこい、死ななければ安いし、生きてるだけで丸儲けの精神です。

「ふふふ、ルドルフ様はとてもお優しいですね。けれど、それでは貴族として示しがつきませんよ。上位貴族が甘い顔をするとそれが良いことになってしまうのですから」

とても良い笑顔だったけれど、僕は見落としてはいない。

その顔に一瞬歪んだなにか恐ろしい表情が見えたことを……。

明らかに僕が失敗したという事実に気づいた瞬間でした。

ジョバンニと関わらず適当にやり過ごすつもりがついあんまり親しくない子を庇ったためガッツリ関わる羽目になってしまったのですから。

しかし、失敗をあんなに責めるのはやはり好きになれないことなので後悔はないと悟りをひらいた顔、即ちチベットスナギツネになりました。

「なるほど、自身の派閥の下の者の無礼な行いを制することができなかったのに、この場をおさめようとしたルドルフを責めるのですか。中々デネブ公爵令息は面白い方ですね」

「ふふふ、彼が??まさかこんな失態を犯すような者と同じ派閥に属している覚えはありません」

お互い笑顔なのに、背後にものすごい吹雪が舞っています。とりあえず僕はこの恐ろしい応酬の原因となり未だに震えているサドル子爵令息に微笑みかけました。

「あのふたりが許すか許さないかは知りませんが、僕は君を許します。だからもう同じ失敗を繰り返してはいけませんよ」

「……ごめんなさい、ごめんなさい。俺は貴方に酷いことをしました、すいません」

涙と鼻水まみれの顔で謝る彼を罰したいと願うのは僕には無理なようです。とりあえず僕は持っていたハンカチでその顔を拭ってあげました。

「あ、汚して……」

「いいんですよ。ハンカチくらいあげます」

色々僕と彼の間では、まとまりかけたのですが、ジョバンニは僕を逃がしてはくれませんでした。

「ルドルフ様、話が逸れましたがイヴァン殿下にはお会いできましたか??僕は先ほどあたたかいお言葉をかけていただきましたよ」

でました、ジョバンニお得意のマウント攻撃です。

この手の、「僕はイヴァン殿下と仲良くしてます」系の言葉は今まで何回も聞いていますし、それが現実なので僕はチベットスナギツネの顔のまま静かに見つめ返しました。

前回までならこれのマウントが一番傷つきましたが、今回はイヴァン殿下とは関わらないつもりなので全くもって痛くはありません。

「いいえ。まだお会いしておりません。きっとイヴァン殿下は僕ではなくジョバンニ様にお会いしたかったのでしょうね」

「……ルドルフ様もイヴァン殿下にご挨拶したいのではないですか??だってルドルフ様がイヴァン殿下に懸想されているというのは有名なお話ですから」

ジョバンニが無邪気に笑うのを見て、心が萎えているのが分かりました。

彼はいつだってそうです。僕がイヴァン殿下を慕っていると知っていて、僕は愛されない殿下に愛されていると伝えてくるような、そういうことを好む人なのです。

何故、自身が幸せなのに人の不幸を楽しみたいのか理解に苦しみます。

しかし、今日はもうひとり質の悪い人が僕といるのです。知らなかったですが僕の従兄弟で辺境伯家の嫡男のヴァンさんが……。

「ジョバンニ様。先ほどからずっと気になっていたのですがその胸の花は何ですか」

その言葉に、ジョバンニの表情がより明るいものになる。

「これですか??これは先日イヴァン殿下よりお送り頂いた僕に似合う花です」

マウントジョバンニと化してますが、気にしません。今回は絶対イヴァン殿下と婚約したくありません。だから例えイヴァン殿下から僕には花が贈られなくても良いのです。

でも、やっとこのヴァンさんの指摘で思い出しました。ジョバンニさんの胸の花が、今までと違うのです。確か今まではジョバンニさんはご自身で選んだ赤い薔薇の花を挿していらっしゃいました。けれど、今胸にあるのは同じく赤い花ですがそれはカメリアでした。

僕はあまり気にしてませんでしたが、胸元に花を挿すというのがこの国では割と式典やこういうパーティーではポピュラーな習慣となっています。

そして、その花によって意味合いなどが変ってくるらしいのですがそのあたりのマナーはあまり知りません。

前にストロベリー君が従者の時は僕の胸元は大体タンポポが入ってました。僕はタンポポが好きですがそう言えば何故かクスクス笑われた記憶があります。

今回はヴァンさんにより見事な百合を挿していたのであまりクスクスはされていません。

花によってこうも態度が変わるのだとしたら驚きです。

「ほう、をつかれるのですね」

とても愉快そうにヴァンさんがジョバンニに言いました。

というか嘘と決めつけるの強いです。でも、もし嘘だとしてもどうしてそれがヴァンさんにわかったのか。もしかしたらヴァンさんは辺境伯家の嫡男兼探偵とかなのかもしれません。

「嘘??流石に無礼ではありませんか??イヴァン殿下の真心を否定するなんて……」

ムッとした顔で言い募ろうとしたジョバンニだったが、ヴァンさんはニヤリと笑って続けた。

「いえ、私の父は王弟でしてね。だからこそしきたりにとてもうるさいのです。そんな父が常々言うことがありまして、パーティーの場の挿す花はその意味まで重要だと。例えば、今、ルドルフが挿している白い百合には『純潔』の意味があります。まさに花嫁としての意思や儚げで美しい彼にぴったりですよね。けれど、ジョバンニ様貴方の挿しているカメリア、その花の意味を貴方はご存じありませんか??」
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