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54.贖罪
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もう二度とレフに会えないなら、全てがどうでも良いとすら思えた。
この世界は確かに僕がずっと欲しかった多くのモノに溢れていた。親からの愛も、自分のために本当に尽くしてくれる配下もいる。
けれど、父である国王がこの世界をあの世界を知っていて作ったと知った今は、更に全てが僕には気持ち悪く思えてしまった。
この世界の、国王陛下は僕に対してまさに理想的な父親として常に僕を気づかい心配し甘やかす。それはあの世界で最期の瞬間に国王が後悔したからだということは分かってはいる。
(けれど、あの世界で僕が国王にされたことは……)
死を望まれたことは、結果的にレフと離れないといけなかったことが、全てが混ざり合った心の中の色彩は真っ黒でただ苦しかった。
蹲った僕の体を、国王陛下は抱きしめた。
「ルティア……、あの世界に帰りたいか??」
はじめて聞いた、あの国王の優しい声だった。彼が作り出した幻影のルルティアへではなく、ルティアへ。
僕は目を閉じた。
目を閉じたのは、昔をあの苦しい過去が僕の中で暴れないようになんとか抑え込むためだ。しばらく荒れ狂うような感情を制御してから目を開く。
「帰れるなら帰りたいです」
出来るだけ無機質な声色を作って答える。例え多くの人から愛されなくても本当に自分を誰よりも大切にしてくれる人に愛される世界へ僕は戻りたい。
「たとえばこの世界なら、ルティアは誰からも大切にされるだろうし、いつか君を恋愛感情で愛してくれる人に出会えるかもしれない。そうして、ほとんど苦しまずに幸せになれるだろう。けれど、あの世界は私のせいでこの世界より悲しく辛い思いをするかもしれない、それでもルティアはあの世界へ戻りたいのか??」
「ええ、あの世界には僕が一番愛する人がいるので」
きっぱりと言いきったのはその感情に嘘も偽りもなかったからだ。
「そうか……ならば帰そう」
何かを決意したような国王の声に思わず眉間に皺が寄る。
「そんなこと、出来るはずが……」
「逆鱗があれば出来る」
そう答えた国王の首には確かに逆鱗があった。けれど、逆鱗は失えば死んでしまう。
(帰りたい、レフに会いたい。けれど……僕は……)
ずっと愛を乞うて愛を得ることができなかった人だ。散々苦しめた先で、独りよがりな世界を作り妄想の中の僕と暮らして罪滅ぼしをしたつもりになっていたようなそんな人なのに、いざその命を差し出すと言われた時、何故か心臓が冷えるような感情を感じる。
『愛されない子供は、愛されない親をそれでも愛しているのだ』
誰が言った言葉か分からないが蘇る。そんなはずはもうないと思っていたのに……。
「ルティア……私のために泣いてくれるのか、本当に優しい子だ、いや優しすぎる……」
いつの間にか僕は泣いていた。国王は、僕の涙を優しく拭った。まるで幼子にするような仕草に言葉が出ない。
そんな、僕へ静かな威厳のある声で父は言った。
「優しすぎる純粋な魂を傷つけた贖罪をどうかさせてほしい」
この世界は確かに僕がずっと欲しかった多くのモノに溢れていた。親からの愛も、自分のために本当に尽くしてくれる配下もいる。
けれど、父である国王がこの世界をあの世界を知っていて作ったと知った今は、更に全てが僕には気持ち悪く思えてしまった。
この世界の、国王陛下は僕に対してまさに理想的な父親として常に僕を気づかい心配し甘やかす。それはあの世界で最期の瞬間に国王が後悔したからだということは分かってはいる。
(けれど、あの世界で僕が国王にされたことは……)
死を望まれたことは、結果的にレフと離れないといけなかったことが、全てが混ざり合った心の中の色彩は真っ黒でただ苦しかった。
蹲った僕の体を、国王陛下は抱きしめた。
「ルティア……、あの世界に帰りたいか??」
はじめて聞いた、あの国王の優しい声だった。彼が作り出した幻影のルルティアへではなく、ルティアへ。
僕は目を閉じた。
目を閉じたのは、昔をあの苦しい過去が僕の中で暴れないようになんとか抑え込むためだ。しばらく荒れ狂うような感情を制御してから目を開く。
「帰れるなら帰りたいです」
出来るだけ無機質な声色を作って答える。例え多くの人から愛されなくても本当に自分を誰よりも大切にしてくれる人に愛される世界へ僕は戻りたい。
「たとえばこの世界なら、ルティアは誰からも大切にされるだろうし、いつか君を恋愛感情で愛してくれる人に出会えるかもしれない。そうして、ほとんど苦しまずに幸せになれるだろう。けれど、あの世界は私のせいでこの世界より悲しく辛い思いをするかもしれない、それでもルティアはあの世界へ戻りたいのか??」
「ええ、あの世界には僕が一番愛する人がいるので」
きっぱりと言いきったのはその感情に嘘も偽りもなかったからだ。
「そうか……ならば帰そう」
何かを決意したような国王の声に思わず眉間に皺が寄る。
「そんなこと、出来るはずが……」
「逆鱗があれば出来る」
そう答えた国王の首には確かに逆鱗があった。けれど、逆鱗は失えば死んでしまう。
(帰りたい、レフに会いたい。けれど……僕は……)
ずっと愛を乞うて愛を得ることができなかった人だ。散々苦しめた先で、独りよがりな世界を作り妄想の中の僕と暮らして罪滅ぼしをしたつもりになっていたようなそんな人なのに、いざその命を差し出すと言われた時、何故か心臓が冷えるような感情を感じる。
『愛されない子供は、愛されない親をそれでも愛しているのだ』
誰が言った言葉か分からないが蘇る。そんなはずはもうないと思っていたのに……。
「ルティア……私のために泣いてくれるのか、本当に優しい子だ、いや優しすぎる……」
いつの間にか僕は泣いていた。国王は、僕の涙を優しく拭った。まるで幼子にするような仕草に言葉が出ない。
そんな、僕へ静かな威厳のある声で父は言った。
「優しすぎる純粋な魂を傷つけた贖罪をどうかさせてほしい」
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