嫌われ王子は壊れた愛を受けて花ひらく

ひよこ麺

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53.思いもよらぬ真実

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「ひぃっ!!」

驚いて悲鳴をあげたが、その顔を見たことない柔らかな笑みで国王陛下は見つめてきた。

「すまない、騙すような真似をして。ただ、ルル……」

「……国王陛下は、パラレルワールドを信じていますか??僕にはこの世界とよく似ているけれどここではない世界の記憶があるのです、いや、蘇ったのが正しいかもしれません。その世界で、僕はずっと貴方から虐げられ父と呼ぶことは許されず、死すら乞われた。そんな事実のないこの世界の貴方にこんなことを言うのは間違っていると分かりますが、僕は貴方が怖いのです」

僕は静かに真実を告げた。こんな支離滅裂な理由を話せば離れてくれると思ったからだ。

その言葉に、国王陛下は目を見開くきっと思いもよらない言葉に逡巡しているのだろうと思ったが……、

「……すまない」

突然の謝罪に驚く、そして、思いもよらない事実が語られる。

「ルル、いや、。私は謝っても許されないことをしてしまった」

「……国王陛下にも記憶があるのですか??」

深々とまるで謝罪をするように頭を下げた国王陛下は思いもよらない話を口にした。

「あの日、死んだ後に私はこの世界の神に会って問われた。『やり直したいか』と……」

そこから国王陛下が何度も世界をやり直して、何度も何度も失敗したこと。

そして、やっと世界の歪みの原因を知って、全てが上手くいっていたのがこの世界だと……。

「……ルティア、ルティアならどうか私に償いをさせてほしい。ルティアを不幸にして、大切な子を蔑ろにして、傷つけた最悪な父親を罰して欲しい……」

「……」

そう頭を下げ続ける国王陛下を温度の伴わない目で見つめる。

「貴方は、どんなつもりでこの世界の今までの僕を見ていたのですが??僕の顔をした僕とは別人の僕を……」 

ひどく冷たい物言いだった。けれど、目の前の人が国王陛下ならば僕は容赦しない。

その言葉に国王陛下は小さくなぜか笑う。

「ずっとただ贖罪を続けた。この世界にあの世界の事実がなくても私がした罪は私の中にあり続けたし、それをルティアに償うことは永遠にあの世界が無くなってしまったからできないと思っていた。けれど、今なら、ルティアにやっと私は……」

「……許しません」

切り捨てるように冷たく告げて、僕は再びベッドに潜り込んだ。

たとえ国王陛下があの世界を覚えていても結局、僕は救われない。

いや、この優しい幸せな世界に僕を救う人は居ない、存在すらしない。

(レフ……)

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