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50.どうやら夢ではないらしい
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その後、発狂した国王陛下をレクリフが連れて行ってくれたので静かになった。
静まり返った部屋の中で僕は今目の前で起きたことを整理する。どうやら何故か国王陛下が僕のことを息子と呼んでいて、さらにレフの姿もイクリスの姿もなくレクリフというふたりを足して2で割ったような側近がいた。
そこまで考えて、僕はあるひとつの結論に行き着いた。
「これは夢だな」
こんな頭のおかしい夢は今までは見たことはなかったが、どんな理由があったにせよ国王陛下を殺して、ヴィンターに刺されたことで心が疲れてしまったのかもしれない。
「もう一度寝よう」
なのでそう結論付けて目を閉じた。次に目を覚ましたらまたあの冷たい森の中で胸がから血を流して僕は死んでしまうのだろう。
そう思ったのだが、しばらくしてまた目を覚ましたらやはりあの豪奢な部屋のベッドの中にいた。
「どうなっているんだ??」
「ルルティア殿下、具合が悪いのですか??」
目を覚まして早々に、小鹿のような瞳でレクリフがこちらを見つめてくる。いよいよこれがふざけた夢ではないと気付いた時、デジャヴのように扉が乱暴に開いた。
また、あの頭がおかしくなった国王陛下かと思ったが、今回、目の前にいた人に僕は思わず涙ぐんだ。
それは、写真でしかとうとう会うことができなかった母上だった。僕は涙を流しながら母上の元へ駆け出して、そのまま自分でもびっくりしているが抱きついていた。
「母上、母上、お会いしたかったです、ずっと、ずっと……」
感情を取り繕うことも忘れてその人の胸に顔を埋めて泣いた。あたたかなぬくもりが確かにその人が生きているということを示していて、これがもしふざけた夢でもこの部分は変えたくないと思った。
そんな僕の頭を優しく母上は撫でてくれた。そして、一言。
「いつもの可愛いルルじゃない。あなた、反抗期なんかじゃないわよ」
と後ろにいつの間にか、まるで幽鬼のような姿で立っていた国王陛下に告げた。
「えっ、ママには甘えん坊のルルのままなのになんでパパには塩対応なの??ルル、パパだよ。ルルの大好きなパパだよ??」
「……国王陛下」
母上にしがみつきながら夢だとしても、国王陛下を父上と呼ぶのすら簡単には難しかった。今までの蓄積で国王陛下を父と呼ぶことに対して恐怖心があったのだ。
小さな頃、一度だけかの人を父と呼んでしまった時、何か暴言を吐かれた訳ではないがとても冷たい目で一瞬一瞥された後そのまま無視をされた。
つい感極まって『父上』と口にしたことはあったけれど、それだってわざと嫌がらせのような感情もあってだった。だから『パパ』なんてこの人に対して言うことは僕には難しくって震えてしまった。
その姿に、母上がとても心配そうに、
「あなた、ルルに何かしたの??ルルがパパをこんなに怖がるなんて……」
と行った時、母上にも違和感を感じた。母上は、国王陛下と愛のない結婚をしていた。それなのに今目の前のふたりはとても幸せそうな夫婦に見える。
(これはどういうことだ??)
そう心の中で考えた時、とても聞きなれた声が脳内に響いた。
『ここは貴方の望んだ世界、カルマにより歪まなかった世界です』
静まり返った部屋の中で僕は今目の前で起きたことを整理する。どうやら何故か国王陛下が僕のことを息子と呼んでいて、さらにレフの姿もイクリスの姿もなくレクリフというふたりを足して2で割ったような側近がいた。
そこまで考えて、僕はあるひとつの結論に行き着いた。
「これは夢だな」
こんな頭のおかしい夢は今までは見たことはなかったが、どんな理由があったにせよ国王陛下を殺して、ヴィンターに刺されたことで心が疲れてしまったのかもしれない。
「もう一度寝よう」
なのでそう結論付けて目を閉じた。次に目を覚ましたらまたあの冷たい森の中で胸がから血を流して僕は死んでしまうのだろう。
そう思ったのだが、しばらくしてまた目を覚ましたらやはりあの豪奢な部屋のベッドの中にいた。
「どうなっているんだ??」
「ルルティア殿下、具合が悪いのですか??」
目を覚まして早々に、小鹿のような瞳でレクリフがこちらを見つめてくる。いよいよこれがふざけた夢ではないと気付いた時、デジャヴのように扉が乱暴に開いた。
また、あの頭がおかしくなった国王陛下かと思ったが、今回、目の前にいた人に僕は思わず涙ぐんだ。
それは、写真でしかとうとう会うことができなかった母上だった。僕は涙を流しながら母上の元へ駆け出して、そのまま自分でもびっくりしているが抱きついていた。
「母上、母上、お会いしたかったです、ずっと、ずっと……」
感情を取り繕うことも忘れてその人の胸に顔を埋めて泣いた。あたたかなぬくもりが確かにその人が生きているということを示していて、これがもしふざけた夢でもこの部分は変えたくないと思った。
そんな僕の頭を優しく母上は撫でてくれた。そして、一言。
「いつもの可愛いルルじゃない。あなた、反抗期なんかじゃないわよ」
と後ろにいつの間にか、まるで幽鬼のような姿で立っていた国王陛下に告げた。
「えっ、ママには甘えん坊のルルのままなのになんでパパには塩対応なの??ルル、パパだよ。ルルの大好きなパパだよ??」
「……国王陛下」
母上にしがみつきながら夢だとしても、国王陛下を父上と呼ぶのすら簡単には難しかった。今までの蓄積で国王陛下を父と呼ぶことに対して恐怖心があったのだ。
小さな頃、一度だけかの人を父と呼んでしまった時、何か暴言を吐かれた訳ではないがとても冷たい目で一瞬一瞥された後そのまま無視をされた。
つい感極まって『父上』と口にしたことはあったけれど、それだってわざと嫌がらせのような感情もあってだった。だから『パパ』なんてこの人に対して言うことは僕には難しくって震えてしまった。
その姿に、母上がとても心配そうに、
「あなた、ルルに何かしたの??ルルがパパをこんなに怖がるなんて……」
と行った時、母上にも違和感を感じた。母上は、国王陛下と愛のない結婚をしていた。それなのに今目の前のふたりはとても幸せそうな夫婦に見える。
(これはどういうことだ??)
そう心の中で考えた時、とても聞きなれた声が脳内に響いた。
『ここは貴方の望んだ世界、カルマにより歪まなかった世界です』
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