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閑話:この世界の物語01(側妃視点)
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前世の私がそのゲームに出会ったのはある意味運命だったのだろう。
『竜王と番の乙女』とタイトルが書かれたそのゲームを手にした私はみるみるのめり込んだ。このゲームには3までシリーズがあったが、私はやはり初代が好きだった。
初代の『竜王と番の乙女』こと、『りゅうおと』は正統派の乙女ゲームだった。元々、何も持たない普通の平民の女の子が、色々な努力をして竜王様やその側近と恋に落ちるというよくあるストーリーだった。
主人公も可愛くって、特にライバルみたいな女の子いる話でもなくってとても良かった。だから2を買った。けれど2から作品の方向性がまるで変ってしまった。
私は、1の世界が好きだった私にとって2の世界観はあまり好きなものではなかった。
2は1の王道乙女ゲームとは違い『カルマ』というステータスが割り振られていた。
これは例えば、作品内で婚約者が居るような相手に対して恋愛的な行動を行った場合に溜まってしまうもので、特定の数値まで達した場合、強制的にバットエンドになってしまった。
だから、婚約者が居るキャラクターとは恋愛ができないという訳ではない。正攻法で行くならば婚約を解消させるなどしてから結ばれれば通常のハッピーエンドに行き着くこともできた。
ただ、2ではむしろそのバットエンドを楽しむというようなところがファンの間ではあった。
道ならぬ恋を楽しんで、それ相応の末路に進む。それが良いという人もいたけれど私は否定的な気持ちだった。
(人のものを奪って幸せになれないのは分かっているから、ゲームでまで味わいたくない)
そんな2の状況があったからか、1からのスタッフの人が3の開発の時にはかなり抜けてしまったという話が暴露されたりするトラブルがあったが、その中で発売された3では『カルマ』のシステムは表向きは削除されていたが、代わりに今までいなかったライバルとなる『悪役令嬢』が追加された。
しかし、表向き『カルマ』は無くなったが、それはあくまでも表向きで、裏側でしっかりと悪行を重ねると溜まる仕組みになっていた。あくまでプレイヤーから見えなくなっただけで存在し続けたのだ。
けれど最高傑作の1と、賛否両論だった2と違ってたのは、3はストーリーが今までライトでキラキラしたりゅうおととは思えない重い世界観になっておりヤンデレ系のキャラクターが割と多かった。
特に辺境伯家の一族は黒髪で男らしく美しいが執着が半端なく、うっかり攻略しようとするとかなり痛い目に遇うタイプだった。
そんな中で、りゅうおとで一番の私の推しとなったのが、未来の竜王である銀髪碧眼の美しい王太子で、私は彼に夢中になった。
しかし、彼はあくまで通常では攻略が不可能なバットエンドのみしか迎えられないキャラクターだった。何故なら、『悪役令嬢』であるアリアの婚約者だったのだ。
アリアはこの物語全編で主人公の邪魔をするキャラクターだったが、それはあくまでヒロインが他のヒーローを好きになった時に邪魔をしてくるという位置のライバルキャラで、基本的には婚約者が居ながら他のヒーローに浮気をする悪女であり、ヒロインとヒーローが結ばれる時に、その浮気をしようとしたことが婚約者の王太子にばらされて、ヤンデレ化した彼によって監禁されるバットエンドを迎えるだけの存在だった。
アリアを心から愛しているのに裏切られることしかない王太子が、不憫だけどその一途で歪んだ愛が私は大好きだった。だから、バットエンドでも構わないと私は彼を何回も攻略した。
そしてバットエンドを迎え続けたある時、悪役令嬢のアリアが王太子の真の番であることが分かるものを見ることになった。
アリアが自殺を図ってしまい番を失ったショックで彼の気が狂い世界を滅ぼしてしまうというものだった。
そして、そのエンディングが私には許せなかった。これは、他のユーザーも同じだったようで3でりゅうおとのシリーズは終わってしまった。
ただ、後年に該当のシリーズのシナリオライターが同人誌で3のアリアの息子とその従者のBL小説をなぜか出して一部界隈で話題になっていた。
私の兄は腐男子でもあったので、その同人誌を持っていたようだったけれどその本は数ページしか読んでいない。
なんでも、ゲームでは省かざる得なかったりゅうおとの世界観が細かく描写されていたらしく、それ自体は気になったけれど、どうしてもBLであるという部分が私には受け入れられなかった。
ダークファンタジー的な世界観で最推しそっくりの息子が屈強な護衛騎士に組み敷かれるところでページを閉じた。
そんな私がこの世界で産声を上げて、前世の記憶を取り戻した時に全ては始まったのだった。
****************************************************
新年あけましておめでとうございます、本年も更新頑張りますので、何卒宜しくお願いいたします。
『竜王と番の乙女』とタイトルが書かれたそのゲームを手にした私はみるみるのめり込んだ。このゲームには3までシリーズがあったが、私はやはり初代が好きだった。
初代の『竜王と番の乙女』こと、『りゅうおと』は正統派の乙女ゲームだった。元々、何も持たない普通の平民の女の子が、色々な努力をして竜王様やその側近と恋に落ちるというよくあるストーリーだった。
主人公も可愛くって、特にライバルみたいな女の子いる話でもなくってとても良かった。だから2を買った。けれど2から作品の方向性がまるで変ってしまった。
私は、1の世界が好きだった私にとって2の世界観はあまり好きなものではなかった。
2は1の王道乙女ゲームとは違い『カルマ』というステータスが割り振られていた。
これは例えば、作品内で婚約者が居るような相手に対して恋愛的な行動を行った場合に溜まってしまうもので、特定の数値まで達した場合、強制的にバットエンドになってしまった。
だから、婚約者が居るキャラクターとは恋愛ができないという訳ではない。正攻法で行くならば婚約を解消させるなどしてから結ばれれば通常のハッピーエンドに行き着くこともできた。
ただ、2ではむしろそのバットエンドを楽しむというようなところがファンの間ではあった。
道ならぬ恋を楽しんで、それ相応の末路に進む。それが良いという人もいたけれど私は否定的な気持ちだった。
(人のものを奪って幸せになれないのは分かっているから、ゲームでまで味わいたくない)
そんな2の状況があったからか、1からのスタッフの人が3の開発の時にはかなり抜けてしまったという話が暴露されたりするトラブルがあったが、その中で発売された3では『カルマ』のシステムは表向きは削除されていたが、代わりに今までいなかったライバルとなる『悪役令嬢』が追加された。
しかし、表向き『カルマ』は無くなったが、それはあくまでも表向きで、裏側でしっかりと悪行を重ねると溜まる仕組みになっていた。あくまでプレイヤーから見えなくなっただけで存在し続けたのだ。
けれど最高傑作の1と、賛否両論だった2と違ってたのは、3はストーリーが今までライトでキラキラしたりゅうおととは思えない重い世界観になっておりヤンデレ系のキャラクターが割と多かった。
特に辺境伯家の一族は黒髪で男らしく美しいが執着が半端なく、うっかり攻略しようとするとかなり痛い目に遇うタイプだった。
そんな中で、りゅうおとで一番の私の推しとなったのが、未来の竜王である銀髪碧眼の美しい王太子で、私は彼に夢中になった。
しかし、彼はあくまで通常では攻略が不可能なバットエンドのみしか迎えられないキャラクターだった。何故なら、『悪役令嬢』であるアリアの婚約者だったのだ。
アリアはこの物語全編で主人公の邪魔をするキャラクターだったが、それはあくまでヒロインが他のヒーローを好きになった時に邪魔をしてくるという位置のライバルキャラで、基本的には婚約者が居ながら他のヒーローに浮気をする悪女であり、ヒロインとヒーローが結ばれる時に、その浮気をしようとしたことが婚約者の王太子にばらされて、ヤンデレ化した彼によって監禁されるバットエンドを迎えるだけの存在だった。
アリアを心から愛しているのに裏切られることしかない王太子が、不憫だけどその一途で歪んだ愛が私は大好きだった。だから、バットエンドでも構わないと私は彼を何回も攻略した。
そしてバットエンドを迎え続けたある時、悪役令嬢のアリアが王太子の真の番であることが分かるものを見ることになった。
アリアが自殺を図ってしまい番を失ったショックで彼の気が狂い世界を滅ぼしてしまうというものだった。
そして、そのエンディングが私には許せなかった。これは、他のユーザーも同じだったようで3でりゅうおとのシリーズは終わってしまった。
ただ、後年に該当のシリーズのシナリオライターが同人誌で3のアリアの息子とその従者のBL小説をなぜか出して一部界隈で話題になっていた。
私の兄は腐男子でもあったので、その同人誌を持っていたようだったけれどその本は数ページしか読んでいない。
なんでも、ゲームでは省かざる得なかったりゅうおとの世界観が細かく描写されていたらしく、それ自体は気になったけれど、どうしてもBLであるという部分が私には受け入れられなかった。
ダークファンタジー的な世界観で最推しそっくりの息子が屈強な護衛騎士に組み敷かれるところでページを閉じた。
そんな私がこの世界で産声を上げて、前世の記憶を取り戻した時に全ては始まったのだった。
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新年あけましておめでとうございます、本年も更新頑張りますので、何卒宜しくお願いいたします。
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