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閑話:崩れ落ちた日常03(ヴィンター視点)
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部屋から出た時、運が良かったのかそこには誰も居なかった。
そこで僕は母上のことが心配になってこっそり部屋の側の物置に隠れて様子を伺っていた。すると母上はジョンに乱暴に腕を締め上げられて出てきたのだ。
(くそ、母上に、この国の側妃である母上に召使がなにをしてるんだ!!)
激しい怒りでそのままジョンに向かっていきたくなるのを必死に我慢していると、そこへ先ほどの侯爵という男とその周りに騎士と分かる連中が現れた。そして、想像もしていなかった会話が始まった。
「ヴィンター様はどうした??」
「側妃様がやってきて逃がしました……申し訳ございません」
「そうか。問題ない。どうせかの方がひとりで何かすることなどできないだろう。それより側妃様、だめではありませんかこんなところに来ては。貴方は今日からかの方が囚われていた塔の中で暮らして頂くのですから」
糸のような目をして男は笑う。その笑顔には蛇のような冷たい硬質さがあり、思わずぞくりとしたがその次に続く言葉が僕を恐怖に突き落とした。
「貴方が、私から永遠に可愛い可愛い最愛の弟を奪ったように、永遠に貴方は後悔しながら生きるのです。愛する息子を自ら死地へ追いやったとね??」
「違う、あの子なら、ヴィンターならこの国の王にだってなれるわ」
「ええ、昨日までならそうでしたでしょう。でも、正妃様が決断されて状況は変わりました。番を亡くした竜族がどうなるか貴方は痛いほど知っているはずだ。それを盾に正妃様を脅し続けたくらいですからね」
「違う、私はただ……」
母上は青ざめて震えている。そんな姿を今まで見たことがなかった。いつも優しくて凛としている母上からとても想像できないようなその表情に僕も震えてしまう。けれど侯爵は容赦なく続けた。
「何が違うのですか??正妃様から立場を奪い、托卵して本来全ての権利を得るはずだった正妃様やルティア殿下からそれらを奪った貴方は知っていたはずですよ。この幸せが砂上の楼閣だってことくらい、そしてそれにより本来の全てを捻じ曲げたことで色々な人間から恨みをかっているということも知っていらっしゃいますよね。私もそのひとりですよ」
「……貴方からは恨まれる覚えはないわ。貴方の弟は幸せになっている……」
「ははは、そんなわけあるか。弟は、本来ならこんな血なまぐさい争いになど巻き込まれないで良い立場だったのに……本当ならばあの子はずっと私の側で私の片腕として生きて居ればよかったんだ。そもそも婚約なんて必要なかったのだ。それを、貴方とあの無能な両親のせいであの可愛い可愛い子は地獄の一番中央にいなければいけなくなった」
血を吐くように突然叫んだ侯爵の言葉に怨嗟の強さを感じた、そんな男に母上が連れて行かれたらどうなってしまうのか……。
本来なら、なんとしても救わないといけないけれど、いつもなら迷いなく向かっていっただろうけど今はそれが出来なかった。僕にはあの男が怖かった。何故かとても。人の皮を着てはいるがあの男の本質は冷たい蛇のようなもので自身が大切に想う存在以外は簡単に残酷なことができると本能的に悟ってしまった。
男の異常さに母上も怯えているのが分かった。そんな母上に男は狂った笑みを浮かべてさらに続けた。
「だからね、貴方にはこれから不幸になってもらうのです。……連れていけ」
連れていた騎士に命じて母上はどこかへ連れていかれた。
(このままでは母上が……父上に会わないと!!)
父上を探すために、僕は彼等が立ち去った後を見計らってこっそり父上の部屋へと向かった。
そこで僕は母上のことが心配になってこっそり部屋の側の物置に隠れて様子を伺っていた。すると母上はジョンに乱暴に腕を締め上げられて出てきたのだ。
(くそ、母上に、この国の側妃である母上に召使がなにをしてるんだ!!)
激しい怒りでそのままジョンに向かっていきたくなるのを必死に我慢していると、そこへ先ほどの侯爵という男とその周りに騎士と分かる連中が現れた。そして、想像もしていなかった会話が始まった。
「ヴィンター様はどうした??」
「側妃様がやってきて逃がしました……申し訳ございません」
「そうか。問題ない。どうせかの方がひとりで何かすることなどできないだろう。それより側妃様、だめではありませんかこんなところに来ては。貴方は今日からかの方が囚われていた塔の中で暮らして頂くのですから」
糸のような目をして男は笑う。その笑顔には蛇のような冷たい硬質さがあり、思わずぞくりとしたがその次に続く言葉が僕を恐怖に突き落とした。
「貴方が、私から永遠に可愛い可愛い最愛の弟を奪ったように、永遠に貴方は後悔しながら生きるのです。愛する息子を自ら死地へ追いやったとね??」
「違う、あの子なら、ヴィンターならこの国の王にだってなれるわ」
「ええ、昨日までならそうでしたでしょう。でも、正妃様が決断されて状況は変わりました。番を亡くした竜族がどうなるか貴方は痛いほど知っているはずだ。それを盾に正妃様を脅し続けたくらいですからね」
「違う、私はただ……」
母上は青ざめて震えている。そんな姿を今まで見たことがなかった。いつも優しくて凛としている母上からとても想像できないようなその表情に僕も震えてしまう。けれど侯爵は容赦なく続けた。
「何が違うのですか??正妃様から立場を奪い、托卵して本来全ての権利を得るはずだった正妃様やルティア殿下からそれらを奪った貴方は知っていたはずですよ。この幸せが砂上の楼閣だってことくらい、そしてそれにより本来の全てを捻じ曲げたことで色々な人間から恨みをかっているということも知っていらっしゃいますよね。私もそのひとりですよ」
「……貴方からは恨まれる覚えはないわ。貴方の弟は幸せになっている……」
「ははは、そんなわけあるか。弟は、本来ならこんな血なまぐさい争いになど巻き込まれないで良い立場だったのに……本当ならばあの子はずっと私の側で私の片腕として生きて居ればよかったんだ。そもそも婚約なんて必要なかったのだ。それを、貴方とあの無能な両親のせいであの可愛い可愛い子は地獄の一番中央にいなければいけなくなった」
血を吐くように突然叫んだ侯爵の言葉に怨嗟の強さを感じた、そんな男に母上が連れて行かれたらどうなってしまうのか……。
本来なら、なんとしても救わないといけないけれど、いつもなら迷いなく向かっていっただろうけど今はそれが出来なかった。僕にはあの男が怖かった。何故かとても。人の皮を着てはいるがあの男の本質は冷たい蛇のようなもので自身が大切に想う存在以外は簡単に残酷なことができると本能的に悟ってしまった。
男の異常さに母上も怯えているのが分かった。そんな母上に男は狂った笑みを浮かべてさらに続けた。
「だからね、貴方にはこれから不幸になってもらうのです。……連れていけ」
連れていた騎士に命じて母上はどこかへ連れていかれた。
(このままでは母上が……父上に会わないと!!)
父上を探すために、僕は彼等が立ち去った後を見計らってこっそり父上の部屋へと向かった。
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