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閑話:崩れ落ちた日常02(ヴィンター視点)
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あまりに失礼な男に後でどこの誰か調べて不敬罪で罰してやると考えながら、僕は目の前に準備された朝食を見て唖然とした。
いつもなら、もっと品数のある朝食の品数が少なく、さらに野菜ばかりでお肉が全くなく、嫌いなトマトスープまであった。
「ねぇ、この朝食はなに??」
「こちらはいつものメニューと聞いておりますが??」
ジョンは相変わらずの無表情で答えた。その答えに、限界が来て僕は思い切り机を叩いた。
「そんなわけない。いつものメニューなら、お肉ももっとあるしそもそもトマトスープなんて絶対にでない!!」
そう叫ぶとジョンは静かに答える。
「おかしいですね。こちらはいつも王族の方が食されている朝食だと聞いておりますが……」
「そんなわけない!!」
「離宮ではいつもこの朝食だと、コックが言っておりました」
ジョンのその言葉に、僕は驚いていた。離宮の王族とは叔父上のことだ。つまり叔父上はいつもこのような食事を取っているということになる。
「離宮と王宮では料理が違かったってこと??」
その言葉に、ジョンは淡々と答える。
「そのようでございますね。側妃様がそのように命じられたと伺っております。料理の質には問題はないですがこの食事はまるで老人や病気の人のためのような若い方がされるものとは思えません」
ジョンの答えに、叔父上の華奢な体つきを思い出す。僕と年がそう変わらないはずなのに折れてしまうような細い体と父上に似た顔立ちを思い出す。周りの貴族は好き嫌いが多く気難しいと言っていたがそうではなかったのか。
もし、このような栄養バランスに問題のある食事だけを当たり前にとっていたのだとしたら。
しかし、そこまで考えて母上がそのような酷いことをするはずはないと思いなおす。少なくともこのジョンという使用人など信用するに足らない。
「嘘をつくな!!母上がそんな酷いことするわけない。お前の話なんて僕は信じないからな!!」
そう叫んで、僕はその食事は食べないことにした。よく考えたら毒などが入っている可能性があるかもしれないからだ。
そんな僕に対して、ジョンは顔色ひとつ変えずに答えた。
「承知いたしました」
すぐに食事は下げられたが、当然食べられるはずの食事が抜きになったので空腹に襲われる。ならば、お茶を飲んでお菓子を食べればいい。
「ねぇ、お茶を入れてよ」
ジョンが食事を下げている間にやってきた別の使用人にそう言ったが彼はそれに答えなかった。
「なに無視してるの??僕は……」
「侯爵様より、殿下の命令はジョン以外が聞かないようにと仰せつかっております」
そう答えると、小走りで僕の元から逃げてしまった。
「ちょ、待てよ!!」
急いで引き留めようとしたけれど、無理だった。そんなやりとりをしている間にジョンが戻ってきた。
「お茶を入れて欲しいと伺いましたので、対応します」
「……お前の入れたお茶は飲みたくない。いつもの、アレンがいれたお茶がいい」
専属の使用人の名前を出す。アレンは母上が実家から連れてきた使用人で僕にもいつも良くしてくれていた。しかし、ジョンは無表情に答えた。
「彼はもうおりません」
「いないってどういうこと!?」
「言葉の通りでございます」
淡々と答えるその姿に怒りよりも恐怖が生まれてきていた。このジョンは何を考えているのかわからないが少なくとも自分に対して好意的なところは全くない。
こんなこと今まで生きてきて一度だってなかった。どこにいても、僕は優しい人々に囲まれていたし食事だってほとんど好きなものばかりだった。
そんなことを考えていた時、大きな音を立てて扉が開いて、そこには母上がいた。いつも美しい母上の髪は乱れて服装は寝間着のままで今まで一度も見たことのない姿だった。
「母上??」
驚いて叫んだ僕を見るなり、母上はジョンに体当たりをして叫んだ。
「逃げて!!」
その言葉に促されるまま僕はそのまま部屋から走って逃げだした。何ひとつ理解できないままに……。
いつもなら、もっと品数のある朝食の品数が少なく、さらに野菜ばかりでお肉が全くなく、嫌いなトマトスープまであった。
「ねぇ、この朝食はなに??」
「こちらはいつものメニューと聞いておりますが??」
ジョンは相変わらずの無表情で答えた。その答えに、限界が来て僕は思い切り机を叩いた。
「そんなわけない。いつものメニューなら、お肉ももっとあるしそもそもトマトスープなんて絶対にでない!!」
そう叫ぶとジョンは静かに答える。
「おかしいですね。こちらはいつも王族の方が食されている朝食だと聞いておりますが……」
「そんなわけない!!」
「離宮ではいつもこの朝食だと、コックが言っておりました」
ジョンのその言葉に、僕は驚いていた。離宮の王族とは叔父上のことだ。つまり叔父上はいつもこのような食事を取っているということになる。
「離宮と王宮では料理が違かったってこと??」
その言葉に、ジョンは淡々と答える。
「そのようでございますね。側妃様がそのように命じられたと伺っております。料理の質には問題はないですがこの食事はまるで老人や病気の人のためのような若い方がされるものとは思えません」
ジョンの答えに、叔父上の華奢な体つきを思い出す。僕と年がそう変わらないはずなのに折れてしまうような細い体と父上に似た顔立ちを思い出す。周りの貴族は好き嫌いが多く気難しいと言っていたがそうではなかったのか。
もし、このような栄養バランスに問題のある食事だけを当たり前にとっていたのだとしたら。
しかし、そこまで考えて母上がそのような酷いことをするはずはないと思いなおす。少なくともこのジョンという使用人など信用するに足らない。
「嘘をつくな!!母上がそんな酷いことするわけない。お前の話なんて僕は信じないからな!!」
そう叫んで、僕はその食事は食べないことにした。よく考えたら毒などが入っている可能性があるかもしれないからだ。
そんな僕に対して、ジョンは顔色ひとつ変えずに答えた。
「承知いたしました」
すぐに食事は下げられたが、当然食べられるはずの食事が抜きになったので空腹に襲われる。ならば、お茶を飲んでお菓子を食べればいい。
「ねぇ、お茶を入れてよ」
ジョンが食事を下げている間にやってきた別の使用人にそう言ったが彼はそれに答えなかった。
「なに無視してるの??僕は……」
「侯爵様より、殿下の命令はジョン以外が聞かないようにと仰せつかっております」
そう答えると、小走りで僕の元から逃げてしまった。
「ちょ、待てよ!!」
急いで引き留めようとしたけれど、無理だった。そんなやりとりをしている間にジョンが戻ってきた。
「お茶を入れて欲しいと伺いましたので、対応します」
「……お前の入れたお茶は飲みたくない。いつもの、アレンがいれたお茶がいい」
専属の使用人の名前を出す。アレンは母上が実家から連れてきた使用人で僕にもいつも良くしてくれていた。しかし、ジョンは無表情に答えた。
「彼はもうおりません」
「いないってどういうこと!?」
「言葉の通りでございます」
淡々と答えるその姿に怒りよりも恐怖が生まれてきていた。このジョンは何を考えているのかわからないが少なくとも自分に対して好意的なところは全くない。
こんなこと今まで生きてきて一度だってなかった。どこにいても、僕は優しい人々に囲まれていたし食事だってほとんど好きなものばかりだった。
そんなことを考えていた時、大きな音を立てて扉が開いて、そこには母上がいた。いつも美しい母上の髪は乱れて服装は寝間着のままで今まで一度も見たことのない姿だった。
「母上??」
驚いて叫んだ僕を見るなり、母上はジョンに体当たりをして叫んだ。
「逃げて!!」
その言葉に促されるまま僕はそのまま部屋から走って逃げだした。何ひとつ理解できないままに……。
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