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35.謎の幻聴、そして、許さない……(レフ視点)
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「お前は最期まで僕についてきてくれるんだろう??」
そう俺の耳元で囁いて微笑んだ殿下の笑顔。それは確かに俺がずっと見たかったものだった。その瞬間今まで心の中でずっと澱んでいたものが晴れた気がした。
それなのに……、何故か急に頭の中で声がする。
『何を勘違いしているレフ??今のお前では、ルティアを手に入れることはできない』
その声はそれが確定事項であるように嘲笑うような声色で告げる。
「違う、そんなことない。殿下は最期、いや最期なんかにさせないがその瞬間まで俺と居ると言って下さった。俺はこの先どこへだって殿下の側に居続ける」
殿下も湯あみのために部屋に入って、誰も居ないのだから明らかに幻聴だろうその声に俺は思わず吠えるように叫んでいた。
『それすらも、もうすぐ終わる』
「終わらない、俺は永遠に殿下の側にいる、居続けてやる」
そう叫んだ瞬間、何故かどうしようもない不安に襲われた。このままでは殿下と永遠にはぐれてしまうのではないかという漠然としたその恐ろしい感情に思わず閉ざされている浴室への扉の前に立っていた。
しかし、そこまで来た頃には少し冷静さを取り戻していた。全ては不安からくる幻聴で現実のはずはない。
『今夜、お前とルティアは別たれるだろう』
「そんなことさせない!!」
頭の中の幻聴を振り払うように、俺は浴室の扉を叩いていた。
しかし、殿下の反応はない。
(まさか、いない??)
いくら扉を叩いても、殿下の反応はない。焦った俺は何か扉を壊せるものがないか探した。剣は確かにあるがあれでは扉を壊すには適切ではない。
部屋を見渡すと、暖炉の火を調整するための火掻き棒があったのでそれを手に持ち再び浴室の扉を叩く。すると中から殿下の声が響いた。
「レフ!!!!助けて!!!」
(まずい、殿下が、殿下が何者かに襲われている!!)
そう思った瞬間、俺は扉を火搔き棒で破壊していた。
中に入ると、浴室の床にバスローブを着てひれ伏している殿下の姿を見つける。その姿に安堵して今すぐにでも抱きしめたい、そう思った。
「殿下、だめじゃないですか鍵を掛けては」
「……なんで」
「鍵を閉めたら万が一の時に対応が遅れてしまいます。それに……殿下の湯あみは俺が手伝います」
その少年のような幼い体を抱きしめると、それだけで安心と同時にこの体を暴きたいという衝動に駆られる。それを察したのか上目遣いでうっすら涙を浮かべた殿下が俺を睨んでいる。
(それはいけない……)
「ああ、お体が冷えてしまっていますね。大丈夫俺が温めながら綺麗にしてあげますからね」
「誰のせいで……っ」
文句を言おうとしている唇を塞いで、その呼吸の全てを奪うように舌を吸い上げて歯列をなぞると体がビクリと跳ねるのが分かる。
(殿下……俺のルティ……)
口に出すことは許されない呼び名を浮かべながら、フッと浴室の床に落ちているものが目に入る。それが何かしばらく分からなかったが、しばらくして羊皮紙だと気付いた。
『話がある、もし聞いてくれるならば今夜館の庭園まで来てほしい』
そう、見覚えのある文字で書かれていることに気付いた時、頭の中を怒りが支配していくのが分かる。その文字をどこで見たのかは思い出せないが、間違いなく覚えのある文字、つまり殿下と俺に近しかった誰かが殿下に送ったと考えるのが妥当だろう。
(俺以外との逢瀬など潰してしまおう……)
心の中で仄暗い感情が芽吹いていた。だから……。
「はぁはぁ、殿下……」
(このまま、殿下を抱き潰そう。次に目が覚めるのが明日であるように必ず)
そう決意した時、それを見透かしたのか、思い切り殿下が俺を風呂桶で殴る。
「やめろ、落ち着け!!」
(俺に攻撃するくらい、その手紙の主に会いたいのですか??俺がいるのに、俺とずっと一緒なのに……)
その瞬間何かがプツンと切れる。
「殿下、悪い子にはお仕置きが必要ですね」
その言葉を皮切りに俺は殿下の華奢な体を持ち上げて、そのままベッドまで運んで行った。途中で殿下は何度も逃げようと抵抗していたがそんなものは意味はない。
「レフ、やめろ!!」
「大丈夫ですよ、いつもみたいに奥の奧まで突いて、全て忘れさせてあげる」
(俺を置いてでも会いたい男のことなど全て全て忘れさせる)
そう俺の耳元で囁いて微笑んだ殿下の笑顔。それは確かに俺がずっと見たかったものだった。その瞬間今まで心の中でずっと澱んでいたものが晴れた気がした。
それなのに……、何故か急に頭の中で声がする。
『何を勘違いしているレフ??今のお前では、ルティアを手に入れることはできない』
その声はそれが確定事項であるように嘲笑うような声色で告げる。
「違う、そんなことない。殿下は最期、いや最期なんかにさせないがその瞬間まで俺と居ると言って下さった。俺はこの先どこへだって殿下の側に居続ける」
殿下も湯あみのために部屋に入って、誰も居ないのだから明らかに幻聴だろうその声に俺は思わず吠えるように叫んでいた。
『それすらも、もうすぐ終わる』
「終わらない、俺は永遠に殿下の側にいる、居続けてやる」
そう叫んだ瞬間、何故かどうしようもない不安に襲われた。このままでは殿下と永遠にはぐれてしまうのではないかという漠然としたその恐ろしい感情に思わず閉ざされている浴室への扉の前に立っていた。
しかし、そこまで来た頃には少し冷静さを取り戻していた。全ては不安からくる幻聴で現実のはずはない。
『今夜、お前とルティアは別たれるだろう』
「そんなことさせない!!」
頭の中の幻聴を振り払うように、俺は浴室の扉を叩いていた。
しかし、殿下の反応はない。
(まさか、いない??)
いくら扉を叩いても、殿下の反応はない。焦った俺は何か扉を壊せるものがないか探した。剣は確かにあるがあれでは扉を壊すには適切ではない。
部屋を見渡すと、暖炉の火を調整するための火掻き棒があったのでそれを手に持ち再び浴室の扉を叩く。すると中から殿下の声が響いた。
「レフ!!!!助けて!!!」
(まずい、殿下が、殿下が何者かに襲われている!!)
そう思った瞬間、俺は扉を火搔き棒で破壊していた。
中に入ると、浴室の床にバスローブを着てひれ伏している殿下の姿を見つける。その姿に安堵して今すぐにでも抱きしめたい、そう思った。
「殿下、だめじゃないですか鍵を掛けては」
「……なんで」
「鍵を閉めたら万が一の時に対応が遅れてしまいます。それに……殿下の湯あみは俺が手伝います」
その少年のような幼い体を抱きしめると、それだけで安心と同時にこの体を暴きたいという衝動に駆られる。それを察したのか上目遣いでうっすら涙を浮かべた殿下が俺を睨んでいる。
(それはいけない……)
「ああ、お体が冷えてしまっていますね。大丈夫俺が温めながら綺麗にしてあげますからね」
「誰のせいで……っ」
文句を言おうとしている唇を塞いで、その呼吸の全てを奪うように舌を吸い上げて歯列をなぞると体がビクリと跳ねるのが分かる。
(殿下……俺のルティ……)
口に出すことは許されない呼び名を浮かべながら、フッと浴室の床に落ちているものが目に入る。それが何かしばらく分からなかったが、しばらくして羊皮紙だと気付いた。
『話がある、もし聞いてくれるならば今夜館の庭園まで来てほしい』
そう、見覚えのある文字で書かれていることに気付いた時、頭の中を怒りが支配していくのが分かる。その文字をどこで見たのかは思い出せないが、間違いなく覚えのある文字、つまり殿下と俺に近しかった誰かが殿下に送ったと考えるのが妥当だろう。
(俺以外との逢瀬など潰してしまおう……)
心の中で仄暗い感情が芽吹いていた。だから……。
「はぁはぁ、殿下……」
(このまま、殿下を抱き潰そう。次に目が覚めるのが明日であるように必ず)
そう決意した時、それを見透かしたのか、思い切り殿下が俺を風呂桶で殴る。
「やめろ、落ち着け!!」
(俺に攻撃するくらい、その手紙の主に会いたいのですか??俺がいるのに、俺とずっと一緒なのに……)
その瞬間何かがプツンと切れる。
「殿下、悪い子にはお仕置きが必要ですね」
その言葉を皮切りに俺は殿下の華奢な体を持ち上げて、そのままベッドまで運んで行った。途中で殿下は何度も逃げようと抵抗していたがそんなものは意味はない。
「レフ、やめろ!!」
「大丈夫ですよ、いつもみたいに奥の奧まで突いて、全て忘れさせてあげる」
(俺を置いてでも会いたい男のことなど全て全て忘れさせる)
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