34 / 73
34.鍵を閉めた浴室に……
しおりを挟む
レフが整えた寝室は、あの無駄に成金趣味の館の中とは思えないような落ち着いた部屋だったが、ベッドだけはキングサイズなところにレフの執念を感じる。
「殿下、湯あみの準備も出来ています」
穏やかな笑みを浮かべているが昨日はレフが浴室に入ってきていやらしいことをされたことを思い出して顔が赤くなる。その様子をレフは蕩けたような笑顔を浮かべて見つめている。
「安心してください、今日も俺が湯あみの手伝いを……」
「いや、今日こそひとりで入る」
そう言って、レフと無視して寝室に併設されている湯あみ用の部屋にひとりで入ると、どうやら鍵が掛けられるようだったのでしっかりと鍵を掛ける。それから服をなんとかひとりで脱いで浴室へ行こうとした時、胸ポケットからヒラヒラと1枚の紙が落ちた。
『話がある、もし聞いてくれるならば今夜館の庭園まで来てほしい』
それは、鍵のかかった部屋の扉の隙間から挿し込まれた例の手紙だった。色々あったせいですっかり忘れていたがそう言えばこの手紙は誰が書いて差し込んだのだろう。
浴室にそれを持ち込んで何度も見返す。その字は丁寧でとても綺麗な文字だが癖のようなものがとても少ないお手本のような文字だと感じた。
羊皮紙に書かれたそれを見ながら、昨日、レフから教わった石鹸を使って体をゆっくり擦った。昨日と違い清潔な泡と香りがして体を包んでいく。
特に移動で何かしたわけではないが、その感覚は昔から好きだった。
しばらくして、泡をバスタブに溜められていた湯で桶を使い洗い流せば、とてもすっきりとするのがわかる。その幸福感に包まれていた時、湯の流れる音にかき消されて聞こえていなかった奇怪な音がすることに気付いた。
カチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャ
その音が何か分からなかったが、執拗に何かを弄っているような音だった。
「レフ??」
思わず音の主と思われる人物の名を呼ぶ。しかし、反応はない。
(レフじゃない??)
その可能性に気付いた時、恐怖を覚えた。
だとしたら一体誰が何のためにこんな音を立てているのか分からない。しかも、例の音が再び響き出した。そこでどうやら鍵を閉めた扉のノブが先ほどから悲鳴を上げるように動いていることに気付いた。
つまり、無理やり開けようとしているらしい。手紙の件もそうだが、何かこの館には居ることを確信しさらに浴室という密室で逃げられない状態で起きている現象にどう対処すればよいか分からない。
(どうすればいい??もう一度レフを呼ぶべきか??)
鍵を閉めた扉が脱衣所にあるため、バスローブのみをいったん羽織ってもう一度叫ぶ。
「レフ!!!!助けて!!!」
そう叫んだその時、「ドン!!」という大きな音がして扉が壊れたのが分かった。
あまりの恐怖に僕は床にひれ伏して頭を押さえて目を瞑り、次に来るだろう衝撃に耐えようとしたが……。
「殿下、だめじゃないですか鍵を掛けては」
閉じた瞼の先、熱い吐息を感じるほどの至近距離で聞きなれた声がする。ゆっくりを瞳を開ければそこには火掻き棒をもってニッコリと微笑むレフが居た。
「……なんで」
「鍵を閉めたら万が一の時に対応が遅れてしまいます。それに……殿下の湯あみは俺が手伝います」
はぁはぁとレフから吐き出された荒い息が首筋に掛かるのが分かる。その目はあの熱の篭った狂気に満ちたものだった。
あまりのことにレフを睨むがレフは僕の体を抱きしめながら一言。
「ああ、お体が冷えてしまっていますね。大丈夫俺が温めながら綺麗にしてあげますからね」
「誰のせいで……っ」
文句を言おうとした唇をレフが塞いだ。そして、そのままバスローブの開いた胸元に無骨な手が滑りこんできた。
(だめだ、折角綺麗にいたのに……)
自分ではじめて体を洗い満足したのに、このままではレフによって確実に体が汚れてしまう。だから、必死に貪るように口づけるレフを剝がそうと足掻いた。
「んっ……なせぇ」
しかし、足掻けば足掻くほど、口づけは深くなり既にどちらとも知れない唾液が顎のラインをなぞるように滴り落ち、舌を吸い上げられる度に小さく嬌声が漏れてしまう。
しかも、レフの密着している下半身のそれが主張し始めていることにも気付いた。それはスラックスの中で怒張しているのだがそれをわざと下腹部にあてられる。
「やっ……めぇ」
「はぁ……はぁ……」
熱い吐息を吐きながら、完全に狂気に染まったグレーの瞳は普段の澄んだ色合いより少し濁っているように見える。その瞳孔が完全に開いている瞳が怖い。この男は確実に僕を喰らおうとしている。
(だめ、だめだ!!)
やっと唇は離れたが、とてもまずい状態だ。
そこで自由のきいた脚を使って、レフを蹴ろうとした。しかし、そのもくろみがバレたのかそのまま濡れた浴室の床に横たえられて脚を開かれてその間にレフの体が滑り込む。
「はぁはぁ、殿下……」
「やめろ、落ち着け!!」
手の側に会った風呂桶を持ち反撃する。しかし、騎士として鍛えているレフがその程度の打撃で怯むことはない。
「殿下、悪い子にはお仕置きが必要ですね」
「殿下、湯あみの準備も出来ています」
穏やかな笑みを浮かべているが昨日はレフが浴室に入ってきていやらしいことをされたことを思い出して顔が赤くなる。その様子をレフは蕩けたような笑顔を浮かべて見つめている。
「安心してください、今日も俺が湯あみの手伝いを……」
「いや、今日こそひとりで入る」
そう言って、レフと無視して寝室に併設されている湯あみ用の部屋にひとりで入ると、どうやら鍵が掛けられるようだったのでしっかりと鍵を掛ける。それから服をなんとかひとりで脱いで浴室へ行こうとした時、胸ポケットからヒラヒラと1枚の紙が落ちた。
『話がある、もし聞いてくれるならば今夜館の庭園まで来てほしい』
それは、鍵のかかった部屋の扉の隙間から挿し込まれた例の手紙だった。色々あったせいですっかり忘れていたがそう言えばこの手紙は誰が書いて差し込んだのだろう。
浴室にそれを持ち込んで何度も見返す。その字は丁寧でとても綺麗な文字だが癖のようなものがとても少ないお手本のような文字だと感じた。
羊皮紙に書かれたそれを見ながら、昨日、レフから教わった石鹸を使って体をゆっくり擦った。昨日と違い清潔な泡と香りがして体を包んでいく。
特に移動で何かしたわけではないが、その感覚は昔から好きだった。
しばらくして、泡をバスタブに溜められていた湯で桶を使い洗い流せば、とてもすっきりとするのがわかる。その幸福感に包まれていた時、湯の流れる音にかき消されて聞こえていなかった奇怪な音がすることに気付いた。
カチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャ
その音が何か分からなかったが、執拗に何かを弄っているような音だった。
「レフ??」
思わず音の主と思われる人物の名を呼ぶ。しかし、反応はない。
(レフじゃない??)
その可能性に気付いた時、恐怖を覚えた。
だとしたら一体誰が何のためにこんな音を立てているのか分からない。しかも、例の音が再び響き出した。そこでどうやら鍵を閉めた扉のノブが先ほどから悲鳴を上げるように動いていることに気付いた。
つまり、無理やり開けようとしているらしい。手紙の件もそうだが、何かこの館には居ることを確信しさらに浴室という密室で逃げられない状態で起きている現象にどう対処すればよいか分からない。
(どうすればいい??もう一度レフを呼ぶべきか??)
鍵を閉めた扉が脱衣所にあるため、バスローブのみをいったん羽織ってもう一度叫ぶ。
「レフ!!!!助けて!!!」
そう叫んだその時、「ドン!!」という大きな音がして扉が壊れたのが分かった。
あまりの恐怖に僕は床にひれ伏して頭を押さえて目を瞑り、次に来るだろう衝撃に耐えようとしたが……。
「殿下、だめじゃないですか鍵を掛けては」
閉じた瞼の先、熱い吐息を感じるほどの至近距離で聞きなれた声がする。ゆっくりを瞳を開ければそこには火掻き棒をもってニッコリと微笑むレフが居た。
「……なんで」
「鍵を閉めたら万が一の時に対応が遅れてしまいます。それに……殿下の湯あみは俺が手伝います」
はぁはぁとレフから吐き出された荒い息が首筋に掛かるのが分かる。その目はあの熱の篭った狂気に満ちたものだった。
あまりのことにレフを睨むがレフは僕の体を抱きしめながら一言。
「ああ、お体が冷えてしまっていますね。大丈夫俺が温めながら綺麗にしてあげますからね」
「誰のせいで……っ」
文句を言おうとした唇をレフが塞いだ。そして、そのままバスローブの開いた胸元に無骨な手が滑りこんできた。
(だめだ、折角綺麗にいたのに……)
自分ではじめて体を洗い満足したのに、このままではレフによって確実に体が汚れてしまう。だから、必死に貪るように口づけるレフを剝がそうと足掻いた。
「んっ……なせぇ」
しかし、足掻けば足掻くほど、口づけは深くなり既にどちらとも知れない唾液が顎のラインをなぞるように滴り落ち、舌を吸い上げられる度に小さく嬌声が漏れてしまう。
しかも、レフの密着している下半身のそれが主張し始めていることにも気付いた。それはスラックスの中で怒張しているのだがそれをわざと下腹部にあてられる。
「やっ……めぇ」
「はぁ……はぁ……」
熱い吐息を吐きながら、完全に狂気に染まったグレーの瞳は普段の澄んだ色合いより少し濁っているように見える。その瞳孔が完全に開いている瞳が怖い。この男は確実に僕を喰らおうとしている。
(だめ、だめだ!!)
やっと唇は離れたが、とてもまずい状態だ。
そこで自由のきいた脚を使って、レフを蹴ろうとした。しかし、そのもくろみがバレたのかそのまま濡れた浴室の床に横たえられて脚を開かれてその間にレフの体が滑り込む。
「はぁはぁ、殿下……」
「やめろ、落ち着け!!」
手の側に会った風呂桶を持ち反撃する。しかし、騎士として鍛えているレフがその程度の打撃で怯むことはない。
「殿下、悪い子にはお仕置きが必要ですね」
3
お気に入りに追加
893
あなたにおすすめの小説
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

偽物の番は溺愛に怯える
にわとりこ
BL
『ごめんね、君は偽物だったんだ』
最悪な記憶を最後に自らの命を絶ったはずのシェリクスは、全く同じ姿かたち境遇で生まれ変わりを遂げる。
まだ自分を《本物》だと思っている愛する人を前にシェリクスは───?

もしかして俺の人生って詰んでるかもしれない
バナナ男さん
BL
唯一の仇名が《 根暗の根本君 》である地味男である< 根本 源 >には、まるで王子様の様なキラキラ幼馴染< 空野 翔 >がいる。
ある日、そんな幼馴染と仲良くなりたいカースト上位女子に呼び出され、金魚のフンと言われてしまい、改めて自分の立ち位置というモノを冷静に考えたが……あれ?なんか俺達っておかしくない??
イケメンヤンデレ男子✕地味な平凡男子のちょっとした日常の一コマ話です。
王道学園のコミュ障ニセチャラ男くん、憧れの会長と同室になったようで
伊月乃鏡
BL
俺の名は田中宗介!
どこに出しても恥ずかしい隠れコミュ障だ!
そんな俺だが、隠れコミュ障ゆえの初手ハイテンションでチャラ男認定されてまぁ大変! 今更コミュ障なのがバレるのもチンケなプライドが傷つくのでチャラ男のフリをしている!
友達が著しく少ない以外は平凡な日常を送っていたはずの俺だけど、何故かあの、憧れの生徒会長と同室になっちゃって……!?
しかも転校生が何故か俺に懐いてきて、同じ委員会にまで入ってきて!?
懐いてきてくれてるのかなコレ!? わかんないコミュ障だから!! 後輩に懐かれた経験、“無”だから!
薄い二年間を送ってきた俺の最後の一年。
憧れの会長と急接近、とまではいかないけど友達くらいになれちゃったりするかな!?
俺一体、どうなっちゃうの〜!?
※
副題 コミュ障と愉快な仲間たち
【追記】
現実の方が忙しくなったため、一日一話以上更新になります。

兄たちが弟を可愛がりすぎです
クロユキ
BL
俺が風邪で寝ていた目が覚めたら異世界!?
メイド、王子って、俺も王子!?
おっと、俺の自己紹介忘れてた!俺の、名前は坂田春人高校二年、別世界にウィル王子の身体に入っていたんだ!兄王子に振り回されて、俺大丈夫か?!
涙脆く可愛い系に弱い春人の兄王子達に振り回され護衛騎士に迫って慌てていっもハラハラドキドキたまにはバカな事を言ったりとしている主人公春人の話を楽しんでくれたら嬉しいです。
1日の話しが長い物語です。
誤字脱字には気をつけてはいますが、余り気にしないよ~と言う方がいましたら嬉しいです。
精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる
風見鶏ーKazamidoriー
BL
秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。
ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。
※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる