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33.狂気への理解と……
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レオンが何か言おうとしたが、扉が開いた。
「3分終了です」
そして、笑顔のレフが室内に入ってくるなり僕とレオンの間に入る。
「レフ??」
「終わりです」
顔は笑顔だが全く目が笑っていないレフは、さっさと会話を切り上げさせたいらしい。
「嫉妬深すぎる男は嫌われるぜ。心配しなくてももうあんたらとも会えないだろう。最後にひとつだけ教えてやる。目に見えているものが全てじゃない。今は見えないものが救いになることもある」
レオンの黄金の瞳に吸い込まれそうになる。そこには死を間近にしたものの悲哀ではなく、まるで未来を知る預言者のような煌めきが見えた。
「……レオン??」
その言葉の意味を聞こうとしたが、レオンは手をひらひらと振りながら部屋を出てしまった。
僕はしばらくレオンが立ち去った後の扉を眺めていた。
何かとても大切なことを読み解きたい、そう本能的に感じていたからだ。
しかし、その視界はあっさりと大きな見慣れた体に遮られる。
「殿下……」
先ほどまでの笑みは完全に消え去ったレフが、いつもの熱の籠った瞳でこちらを見つめている。
そのグレー瞳に穏やかなのに、何故か狂気を感じずにはいられない。
それを恐ろしいと感じて、さらに嫌われたくなくて逃げてきた。
しかし、レオンの言葉を聞いてそれではいけないと思ってしまった。
(レフは最期まで付いてきてくれると誓ってくれた、なら……)
「レフ、どうして怒ってる??」
思ったことを聞いてみよう。そうすれば、何かが変わるかもしれない。
真っ直ぐにその瞳を見つめ返す。
「怒ってはおりません、ただ……」
何かをゆっくり思案しているようなレフに首を傾げる。
どう言葉にするか迷っているのだろう。僕の前でかなり話すようになっているがレフは元々は無口で口下手な騎士だ。
苦しげな表情で、レフは抱きしめた。その力の強さに骨が軋んだけれどその少し早く動く心音に耳を澄ます。
「俺は、彼に、レオンに嫉妬したのです」
想像とは違う言葉に首を傾げる。
「何故??レオンは……」
「その顔だ、貴方は彼の前では穏やかな幸せそうな顔をする、それに……貴方を楽しそうに笑わせたのも彼だ……」
レフが真正面から僕を見据えた。そこではじめて今まで怖いと思っていたレフの狂気の裏にあるものの中で理解できる感情に気付いた。
それは僕にも覚えがある感情。レフは嫉妬と言ったが……。
「レフはレオンが羨ましかったのか??」
その言葉にレフは気まずそうな顔で黙り込む。その姿にはじめてレフの何かを理解できた気がした。
「ははは、レフ……レオンとお前とは僕にとって全く違う」
そう言って若干緩んだレフの胸を押して腕の束縛から少し抜け出す。そして、レフの耳元に唇をあてるようにして囁く。
「お前は最期まで僕についてきてくれるんだろう??」
悪戯っぽく囁いた瞬間、突然レフに抱き上げられる。
あまりのことに驚いたが、すぐ真下にはっきりと獣のような物騒な光を宿した、情事の時によく目にしたレフの表情があった。
「もちろんです、殿下。貴方が行くなら地獄であろうがどこであろうがお供いたします。だから……俺に慈悲を下さい」
僕の胸元に口付けて言うレフには譲歩する気はないらしい。
「この部屋は嫌だ。せめてベッドの上にして欲しい」
「分かりました、すぐにご準備いたします」
最高の笑顔を浮かべたレフが、僕を抱き抱えたままですぐに寝室を整え他のは言うまでもない。
「3分終了です」
そして、笑顔のレフが室内に入ってくるなり僕とレオンの間に入る。
「レフ??」
「終わりです」
顔は笑顔だが全く目が笑っていないレフは、さっさと会話を切り上げさせたいらしい。
「嫉妬深すぎる男は嫌われるぜ。心配しなくてももうあんたらとも会えないだろう。最後にひとつだけ教えてやる。目に見えているものが全てじゃない。今は見えないものが救いになることもある」
レオンの黄金の瞳に吸い込まれそうになる。そこには死を間近にしたものの悲哀ではなく、まるで未来を知る預言者のような煌めきが見えた。
「……レオン??」
その言葉の意味を聞こうとしたが、レオンは手をひらひらと振りながら部屋を出てしまった。
僕はしばらくレオンが立ち去った後の扉を眺めていた。
何かとても大切なことを読み解きたい、そう本能的に感じていたからだ。
しかし、その視界はあっさりと大きな見慣れた体に遮られる。
「殿下……」
先ほどまでの笑みは完全に消え去ったレフが、いつもの熱の籠った瞳でこちらを見つめている。
そのグレー瞳に穏やかなのに、何故か狂気を感じずにはいられない。
それを恐ろしいと感じて、さらに嫌われたくなくて逃げてきた。
しかし、レオンの言葉を聞いてそれではいけないと思ってしまった。
(レフは最期まで付いてきてくれると誓ってくれた、なら……)
「レフ、どうして怒ってる??」
思ったことを聞いてみよう。そうすれば、何かが変わるかもしれない。
真っ直ぐにその瞳を見つめ返す。
「怒ってはおりません、ただ……」
何かをゆっくり思案しているようなレフに首を傾げる。
どう言葉にするか迷っているのだろう。僕の前でかなり話すようになっているがレフは元々は無口で口下手な騎士だ。
苦しげな表情で、レフは抱きしめた。その力の強さに骨が軋んだけれどその少し早く動く心音に耳を澄ます。
「俺は、彼に、レオンに嫉妬したのです」
想像とは違う言葉に首を傾げる。
「何故??レオンは……」
「その顔だ、貴方は彼の前では穏やかな幸せそうな顔をする、それに……貴方を楽しそうに笑わせたのも彼だ……」
レフが真正面から僕を見据えた。そこではじめて今まで怖いと思っていたレフの狂気の裏にあるものの中で理解できる感情に気付いた。
それは僕にも覚えがある感情。レフは嫉妬と言ったが……。
「レフはレオンが羨ましかったのか??」
その言葉にレフは気まずそうな顔で黙り込む。その姿にはじめてレフの何かを理解できた気がした。
「ははは、レフ……レオンとお前とは僕にとって全く違う」
そう言って若干緩んだレフの胸を押して腕の束縛から少し抜け出す。そして、レフの耳元に唇をあてるようにして囁く。
「お前は最期まで僕についてきてくれるんだろう??」
悪戯っぽく囁いた瞬間、突然レフに抱き上げられる。
あまりのことに驚いたが、すぐ真下にはっきりと獣のような物騒な光を宿した、情事の時によく目にしたレフの表情があった。
「もちろんです、殿下。貴方が行くなら地獄であろうがどこであろうがお供いたします。だから……俺に慈悲を下さい」
僕の胸元に口付けて言うレフには譲歩する気はないらしい。
「この部屋は嫌だ。せめてベッドの上にして欲しい」
「分かりました、すぐにご準備いたします」
最高の笑顔を浮かべたレフが、僕を抱き抱えたままですぐに寝室を整え他のは言うまでもない。
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